なぜ今「リアル店舗」が注目されるのか #お店の未来

今、リアル店舗が面白い。

アメリカを中心に生まれたネット発のD2Cブランドが、この1、2年で次々と常設店舗をオープンさせている。

ブランド立ち上げ当初から実店舗は持たないと公言してきたEverlaneすらも、CEO自身が『やはり実店舗が必要だと考え直した』と語り、現在ではNYとSFに直営店を構えている。

D2Cブームの先駆けとなったWarbry Parkerや元祖インフルエンサーブランドのGlossir、先日ユニコーンの仲間入りを果たしたファッションレンタルサービスのRent the Runwayなど、実店舗をマーケティングに組み込んでいるネット発ブランドは枚挙にいとまがない。

しかも彼らの店舗は単にモノを売る場ではなく、『体験の場』としてデザインされているのが特徴だ。

約20年前にJames GilmoreとJoseph Pineが予言した通り、これからの消費は『経験』を主軸に考えなければならない時代に突入している。

そして消費における『経験』の重要性が高まった今、この本にも書いてある通り店舗はメディアになり、メディアは店舗になっていく。

ちなみに、著者のダグ・スティーブンスがブログで書いていた『すべての企業はエクスペリエンス・カンパニーを目指さなければならない』という話も、経験経済の文脈と同じ流れだろう。

So no, every company is not a data company but rather an experience company that should aim to be proficient in gathering the data required to bring its unique and memorable customer experience to life.

では、これまでのお店と未来のお店は何が違うのだろうか。

実店舗の役割を整理すると、下記の3つに大別されると私は考えている。

①販売機能(コマース)
②発見機能(メディア)
③体験機能(エクスペリエンス)

これまで私たちは何か欲しいものがないかとお店にでかけて商品を見繕い(発見機能)、見比べたり試着したり販売員に相談し(体験機能)、その場でお金を払ってお店にある在庫を手に入れる(販売機能)、という流れで買い物をしてきた。

しかしオンラインの発達によって①も②もSNSや検索機能でまかなえるようになった結果、実店舗の役割が③の体験に収束したのではないかと私は思っている。

そして体験機能をさらに細分化すると、3つのカテゴリに分けられるように思う。

1. タッチ&トライ
2. フード&ステイ
3. コミュニケーション

先ほどの例で出した「見比べたり試着したり販売員に相談」はまさに1. タッチ&トライで、ネット発ブランドが実店舗を出す当初の目的は主にここにあった。

しかしこれは昔ながらの実店舗も兼ね備えている機能であり、同じ土俵で戦っても勝てない上に、その機能のためだけに投資するにはリスクもコストも大きい。

だからこそ、あくまで①の販売機能はオンラインに寄せて物流や在庫管理を一本化し、その場で買ってもらうために試してもらうのではなく、ブランド自体を好きになってもらうことでLTVを最大化させるために2. や3. に注力し始めたのがここ最近の変化だと思っている。

では、なぜフード&ステイとコミュニケーションが重視されはじめたのだろうか?

まずフード&ステイに関して言えば、下記のnoteに書いた『可処分時間』の問題がもっとも大きいのではないかと思う。

私たちは今や、分刻みどころか秒単位でコンテンツを消費している。

SNSもWeb記事も友人とのやりとりも、スマホで1分以上同じ画面を見続けることはあまりないのではないだろうか。

情報の種類が増えた分、エンタメの幅も広がった。

しかし一方で、取捨選択することの疲労も感じるようになった私たちは、『自分で考えなくても勝手にいい感じにしてくれるもの』を欲するようになってきた。

だからこそレストランやホテルという空間として完成された場所に滞在することで、選択のストレスを減らしながら自分では再現できない非日常を体験しようとしはじめているのではないだろうか。

そして完成された世界観を日常でも再現するためにものを買うようになる。

つまりレストランもホテルも、究極のショールームになっていく。

しかし、多くのブランドがそれに気づいて着手し始めたことで、単に綺麗な内装だけではもはや差別化が難しくなってしまった。

そこで未来を見据えたブランドはこぞって3.のコミュニケーションを重視し始めた。

一口にコミュニケーションといっても、以前下記のnoteで考察したように、単にブランドと顧客の一方通行のコミュニケーションを作るだけでは片手落ちで、いかに『その一歩先』を作るかが重要だと私は考えている。

おそらく今後店舗の役割における『コミュニケーションづくり』の比率は高まっていくだろう。

オンラインでは実現できない実店舗ならではのコミュニケーションの意義について、以前こんな風に整理したことがある。

リアル店舗というのは、場所の同時性が非解消(=場所に拘束される)で、時間の同時性が解消されている(=時間に拘束されない)という特徴をもっています。

何度か『お店は待ち合わせ場所』という話も書いたのだけど、コミュニケーションする上でそこに行けばいつでも会えるとわかっている安心感は大きい。

そして今後は単にいい空間を作るだけではなく、いかにコミュニケーションを生む設計ができるかが、実店舗の正否をわけるのではないだろうか。

一方で、こうした取り組みができるのも前述の①販売機能と②発見機能が効率化された結果であるともいえる。

どんなに魅力的なコミュニケーションの場を作っても、リアルの場には空間の制限があるからこそすぐに売上規模が頭打ちになってしまい、労働集約的に働かざるをえない仕組みになってしまう。

だからこそ店舗には効率的なオンラインの販売システムと発見性を高める発信と仕掛けが重要であり、それこそが今改めて実店舗の価値が上がっていることの理由だと私は考えている。

オンラインで徹底的に合理性・効率性を突き詰め、オフラインではその二つを超越し、感情に訴えかける。

このどちらも両立させることが、今後のお店の未来につながっていくはずだ。

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