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「読む」というコミュニケーション #読むでつながる

わかるということと苦労するということは同じことですよ。早く簡単にわかる、そんなのは本当にわかったとは言えない。ただ知識が増えただけです(「読書について」小林秀雄)

私たちは普段何気なく文章を読んでいるけれど、本当の意味で『読む』とは何なのだろう。

そして、単に知識で頭をいっぱいにするのではなく、血肉になる読み方は何が違うのだろう。

昨年末たまたま鳥井さんとそんな話をしていたことがきっかけで、先週末 #読むでつながる をテーマに、BOOK LAB TOKYでトークイベントを開催しました。

イベント開催が決まった時から『絶対脱線しまくるだろうし抽象的な話ばっかりしちゃうだろうし、時間内に絶対終わらないよね』と話していたものの、個人的には話したかったことの1/10も消化できなかった(!)ので、今回話し足りなかったことを覚書として書いておきたいと思います。

読む=情報収集ではない

今回は場所柄もあって本の話が中心だったのですが、私も鳥井さんも『読書はHow toを学ぶためだけのものではない』という意見が一致していたように思います。

鳥井さんがおっしゃっていた『わからない問いをわからないままにしておくこと』の話はまさに、小説を含む物語の存在意義とも言えるように思います。

当日は読書の話に熱が入りすぎてしまったのですが、WebコンテンツもまたHow toではない『読み方』があると私は思っています。

ツイートにも書いた通り特に、最近は有益性よりもコミュニケーションとしての『読む』に価値を感じる人が増えてきたような気がしています。

それが顕著なのがnote上で日記コンテンツが増えたことで、私も普段からnoteはいち読み手として楽しみに読んでいます。タイムラインに流れてくる日記やコラムは、直接的に仕事の役に立つものではありません。でも1日の終わりに食事をしながら『今日こんなことがあったよ』と家族や友人に話すように、他の人にとっては価値がなくても関係性があるからこそ価値がでるものもある。

そしてこれまでは直接合うことでしか共有できなかった『取るに足らない日常のこと』が、今では場所や時間を問わずいつでも共有できるようになりました。

役に立つことを発信しているから読むのではなくて、相手のことが好きだから文章を読んで近況を知る。

SNSの活用法というと効率的な情報収集や人脈の作り方にスポットライトがあたりがちですが、一見すると価値を感じられないようなくだらない話にこそ、本当の幸福が眠っているのではないかと思うのです。

また、『読む』というコミュニケーションのいいところは反応しなくても許されることです。会話だったら瞬間的に何かしら反応しなければと思ってしまうけれど、文章であればその内容をじっくり咀嚼して考える時間がある。『わかった』と思える瞬間まで、自分のペースで考えることができるのです。

会って話すのも楽しいけれど、相手がじっくり考えて言葉にしたものを自分なりに咀嚼して理解すること。そういう『読む』楽しみが、Webの世界には広がっているように思います。

だからこそ私はこれからも、それぞれのフォーマットで『読む』を楽しんでいきたいなと思っています。

人間から出て来て文章となったものを、再び元の人間に返す事、読書の技術というものも、其処以外にはない(「読書について」小林秀雄)

ということで質問に答えます!

当日私が想像の10倍しゃべりすぎた(!)結果、Twitterでいただいていた質問に答えられなかったのでいくつかピックアップしてこちらで回答します。

最近は完全に自分の興味だけで読んでます。知っておいた方がいいことって意識せずともTwitterのタイムラインや友人との会話に出てくるし、それよりも自分がパッと見て惹かれたニュースの見出しが何で、なぜそれに惹かれたのか、タイトルの付け方のポイントなどを考える方が自分の軸を作る上で大事かなと。

考えをまとめるのは私もめちゃくちゃ苦手で、しゃべると支離滅裂だといつも言われます…(イベント時のトークもだいぶあちこち飛んでいた気が笑)
だからこそ先にnoteで自分の考えをまとめておくと、あの話したいってなったときにnoteに書いた順序で話すと楽、というのがあります。

私がパッと話せるのは一度noteに書くかツイートしたことだけなので、できるだけ考えたことは言葉にしてしゃべりやすいようにストックする、みたいな使い方をしています!笑

ちなみに伝わりやすい文章に関しては『新しい文章力の教室』をいつもおすすめしています。ここに書いてあることを愚直にやればかなり文章力上がると思います。

『これについて考えをまとめたいから会おう』と思って会うことはないですが、普通に食事しながら友人と話していて、ふと『あ、自分そんなこと考えてたんや』と気づくことがけっこうあります。

気づきが生まれるときは大抵その場に『いい問い』があるときで、それってつまりお互いに共通する何らかの問題意識がある状態なのかなと。そしてどちらかが一方的に与えるような関係ではなく問いを育て合うために、自ら発信することでお互い引き寄せ合うように出会うのがいいんじゃないかなあ、と思っています。

・本の選び方
→最近は一周回って本屋に行くようになりました。人がおすすめしてる本も読むのですが、それだけだと自分の世界が広がらない気がして。むしろ私のおすすめ本を『読みたい』と思ってもらえる人になりたいなーと思っています。

・トピックのまとめ方
→本を読みながら線を引く&ドッグイヤーして、印象的だったフレーズをEvernoteにまとめています。あえて数ヶ月とかおいてその作業をやることで、もう一度まっさらな視点で読み直す効果も。

・本を読むようになったきっかけ
→これよく聞かれるんですが、1歳の頃には母に読み聞かせノルマを強いていたらしく、生まれつきとしかいいようがなく…笑
ちなみにまったく同じ環境で育ったのに私の兄弟はまったく本読まないので、生まれつきの気質ってあるのかもしれないなと思います。

・読みたくないとき
→活字読まない方がストレスなのでこれまでの人生で本を読まなかった日はありませんが、脳が疲れてる日は難しい本は読めないので、エッセイや短編集など軽く読める本もたくさんストックしています。

ログは前述のとおりですが、Evernoteに写していない本の方が圧倒的に多くて、意外とメモしてない本ほどnoteを書いたり人と話すときに思い出すことが多かったりもします。

あえて忘れてしまって、思考のフィルターからふるい落とされたエッセンスを取り出す、というのもありかもしれないなとは思います。

・読まれる意識
→顔を浮かべられる相手に向けて書いていることが多いです。周りの人だけではなくて憧れの人とか、過去の偉人とか、あとは昔の自分に向けて、ということもあります。

・『読む』を通して身についたこと
→世界を見るためのフィルターが一番大きいです。イベント時に小説の話をしましたが、いい小説は世界の見え方をぐるりと変える力があると思っています。

・何を通して読むか
→活字フリークなので、実は文字が書いてあればなんでも読みます…笑
メニューとかチラシも何を伝えたくてどんな意図でその言葉を選び、デザインしているのかを意識しながら読むと勉強になります。

・人生観に影響を及ぼしている本
→星新一のショート・ショートはかなり大きな影響を受けました。彼の影響ではじめてなりたいと思った職業は作家だったくらい。笑
高校生のときに読んだ三浦綾子の『塩狩峠』はいまだに年一回読み返すくらい好きな作品で、人として善く生きるとは何か、そして人は後天的に人間性を育成しうることを学びました。
あとは山崎豊子と松本清張からも大きな影響を受けました。2人とも勧善懲悪ではなく人間のままならなさをベースに正義や人間社会を描いているので、善悪の概念や捉え方に大きな影響を受けました。

・印象的なフレーズ
→たくさんありすぎるのですが、よくnoteでも引用している勝海舟の下記の言葉はことあるごとに思い返し、毎回胸にしみじみと迫ってくる言葉です。

男児世に処する。ただ誠意正心をもって現在に応ずるだけのことさ。あてにもならない後世の歴史が、狂といはうが、賊といはうが、そんな事は構ふものか。要するに、処世の秘訣は誠の一字だ。

・得たまなびをどうSNSとリアルでどう共有するか
→私は得たまなびを分解して何に心惹かれたのか、どう納得したのかを実体験とともに説明するようにしています。
その際、バズるとか褒められるとか一目置かれるとか、自己顕示欲をいかに脇において自分の等身大の言葉で説明できるかを意識しています。

・なぜ読むか、読むことの価値
→私にとって読むとは呼吸と同じなので意味や価値を感じることは逆にないのですが、同じインプット手法である『聞く』に比べると圧倒的に時間耐久性が高いのは大きいと思っています。過去の偉人と言われる人たちの肉声は残っていないけれど書物は残っているので、音声より過去に遡りやすいなと。
あと前述の通り、会話や講演はライブ性が高すぎて咀嚼する時間が足りないままに反応が求められることも多いので、知人とのコミュニケーションも音声よりテキストの方が好きだったりします。

・フォーマットごとに読む目的を変えているか
→パッケージングというよりは前述の時間耐久性はけっこう意識しています。本でも一冊を貫くテーマがふわっとしているものもありますし、Web記事でもとても思考が練りこまれているものもあるので、長さというよりいかに本質まで掘り下げられているかどうかかなと。
これは本で読みたいけどこれはWebで読みたい、とかを意識することは特になくて、練られたものは結果的に本であることが多い、というのはあります。

・書くと読むの関係
→よく言われることですがアウトプットの力はインプットによってしか磨かれないと思っています。逆にいうときちんと文章を読んできた人は必ず書ける。
ただ、その際に なんとなくうまくいきそうなフォーマットをインストールするのではなく、基本のフォーム(起承転結とか文法とか)を身につけた上で自分の中に貯めてきた言葉を使って、自分の思考のシナプスを接続させて書くことが大事だと思っています。

めちゃくちゃ線引くし折るしメモ書きますね!あと最近は特に印象的だったフレーズはツイートするようにしていて、noteを書きながら『あれそういえば前にこんな話前にツイートした気がする』って思ったときに高度な検索を使って探したりします笑

同時に連続ツイートで自分がそのフレーズについてどう思ったのか、どこがまなびポイントだったのかを併記するようにすると考える訓練にもなります。

本の選び方に関してはイベント中もご紹介した『戦略読書』の内容に完全同意していて、フェーズごとに最適な配分は異なると思っています。

とはいえ配分を意識しすぎるとそれはそれでセレンディピティがなくなったり自分らしさがなくなる気もするので、基本はそのとき読みたい本を読みつつたまに栄養バランス偏ってきたぞ、と振り返る指標のようなかたちで意識しています。

あと、テーマではなく筆者軸で深く読む体験も自分の軸を作る上で重要なことだと思っているので、これと思った著者の本を同時並行で3冊ずつとか読んだりもします。

・集中して読む方法
→私も最近は注意力散漫です!笑
私の読書タイムはだいたい寝る前なのでスマホをいじること少ないですが、いいフレーズに出会うとツイートしたくなっちゃうんですよね笑
ツイートしたらしたで反応が気になっちゃうし笑

ただ、読書に限らず集中できない状況ってだいたいバックグラウンドで別の思考が再生されていることが多いので、線を引いたりメモを書いたりして身体的にも余白を作らず本と向き合うことが大事なのかなと思ったりします。あとはそもそも本自体が自分にあっていなくてつまらない、という場合もあるのかなと。

なので最近は本との対話を強く意識していて、相槌を打ったり書いてある先の内容を想像したり、目の前に書き手がいると思って読むようにしています(はたから見ると怪しいので家でしかできないけど)。

・読む前に心がけていること
→あまり意識していることはないのですが、そのとき読みたいものを読むの大事だなと最近はよく思います。本を買ったときに一度問いが顕在化されているので、それをしばらく寝かせて自分なりに今その答えが必要だと思った瞬間に自然と本を開くものだと思うので。

集中力の話にもつながるのですが、『読まなきゃ』で読むのってやっぱり苦痛だし離脱しがちなので、自分の読みたい感覚に嘘をつかないこと、義務感だけで読もうとしない方が、結局一番身につくんじゃないかなと思っています。

***

『読む』はいろんなところで語られているし、人の数だけ正解があると思うので私の書いたことはひとつの事例ではあるのですが、いつか何かの役に立てば幸いです。

★noteの記事にする前のネタを、Twitterでつぶやいたりしています。

今日のおまけは、今回のイベントで選書した本の完全版を解説付きでリストアップします。

選書した本の大半は当日揃えていただいたのですが、一部取り扱いがなかったり、そもそもどういう基準で選んだのか説明をしきれなかったので、ひとつひとつ説明していきたいと思います。

まず、今回選書テーマにした『世界とつながる本』を、私は下記の3つの種類にわけて選書しました。

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