「知性ある消費」を増やすために

自己紹介の時に「小売が専門です」というと、いつも「やっぱり売るのが好きなんですか?」と聞かれるので、毎回答えに困っています。

というのも、私は「売る」ということ自体にはこだわりがないから。

より厳密にいうと、人に所有してもらうことへの限界を、もう5年以上も前から感じてきたので、その人のライフスタイルや感覚にあった商品との「接し方」がデザインできたらいいなと思っています。

昨日トークイベントでお話しいただいたストライプインターナショナルの石川さんも「新品がほしいひと、中古がほしい人、レンタルしたい人、それぞれに合うものを提供していきたい」とおっしゃっていましたが、まさに人とモノの接点が多様化しつつあるのが今の時代なのだと思います。

そう考えたとき、私がやりたいのはモノの「売り方」をデザインすることではなく、もっと大きな「消費」自体のリデザインなのかもしれない、と思うようになりました。

私自身、原体験として洋服が好きだったけれどなかなかたくさんは買えなくて、20代のうちにもっといろんな洋服を着てみたかった、という後悔があります。

30代には30代の、40代には40代の美しさがこれから先も待ち構えているけれど、やっぱり10代や20代にしかできないファッションもあります。

人生の美しい盛りに、一瞬でもいいから「本物」を身につける体験をしてほしいし、いろんな洋服をたくさん着てみてほしい。

ある意味、過去の自分を救ってあげたくて、そのためにはどうすればいいのかをこの5、6年ずっと考えてきました。

そしてここ最近で気づいたのは、私は「知性ある消費」を増やしていきたいのだ、ということです。

先日"「ラグジュアリー」の定義が変わる瞬間に、私たちは立ち会っている"という記事にも書いた通り、ラグジュアリーの定義が徐々に享楽的なゴージャス感から、より「深い思想と豊かな物語があること」に移行しつつあります。

同じルイ・ヴィトンのバッグを持つにしても、ただモノグラムのショルダーバッグを見せびらかすように持つのではなく、例えば親子三代大切に受け継いできたおばあちゃんの形見のバッグだとか、成人のお祝いにイニシャル入りのバッグを作ってもらったりだとか、ブランドのストーリーだけではなく使い手のストーリーが加味された、自分の思いを語れるブランドやアイテムの価値が大きくなる時代です。

そしてさらに、自分のストーリーとブランドのもつ哲学や歴史をリンクさせ、それを持つ・使う・プレゼントする理由を語れることが、「知性ある消費」なのではないかと私は思っています。

もちろん身の回りのものすべてに考えを巡らせることはできませんが、クローゼットの中で1着だけ、靴箱の中で1足だけ、コスメポーチの中で1個だけ、「自分の哲学を語れるアイテム」があるだけで、自分の人生のお守りが増え、自分を肯定しやすくなります。

何かを「選ぶ」ということは自分の判断軸を養うことと不可分で、適当に選べば選ぶほど、気づかないほど少しずつ、自己肯定感が削がれていきます。

だからこそ、時々でいいから「自分はこれを身に付けるに値する人間なのだ」と確認する時間を持ってほしい。

そのための手段として、これまでの「買う」だけではなく「ユーズド」や「レンタル」、「試着」など様々な選択肢が用意できる世界を作っていきたいと思っています。

そして、これからのメディアや店舗の役割は、こうした人の「知的消費」を手助けするための情報を丁寧に、時にユーモラスに、伝え続けていくことなのかもしれません。

昨日のnoteの有料部分で、シンガポール発のラグジュアリーマガジン「Revolution」「The RAKE」の創設者も「教育を受けていると感じさせることなく人々を教育することが、Revolution成功の鍵だった」と語っていたように。

本当に心から惹かれるものと出会い、その人にとってベストなモノとの接点を作る。

そのための第一歩として、店舗も含めた広義のメディアの伝え方や仕組みを考え、小さく実験して試行錯誤している日々です。

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