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第17回J ・ジョイスを産んだ、革命と妖精の国アイルランド(前編)

 アイルランド共和国

 ジェイムズ・ジョイス(1882年〜1941年)と、『ユリシーズ』を産んだ国アイルランド。
 そんなアイルランドという国について、色々調べてみました。


イギリスから海を隔てた隣に位置する島国。首都はダブリン。大きさは北海道と同じくらい、現在人口は510万人ほど、これも北海道と同じほど(この島の、北側の上付近は北アイルランドと言って実はイギリスの領土なんです。これについてはとても複雑なんで、後述します)。

森と緑に恵まれ、すぐに霧がかかったり、通り雨の後木立の間から指す陽光、そして虹。いかにも妖精か小人なんか潜んでいそうな気配がする。

アイルランド出身の、某シンガー曰く、

「アイルランド人にはロマンチストが多くてね…」

 アイルランドの伝統文化、ケルト文化はそんな土地柄で誕生した。独特の抒情性、神話性、スピリチュアルで知られる。動物や泉や樹木を崇拝するケルトの原始宗教の影響で、今でも島の各所で妖精神話が息づいている。

 5世紀ごろ、この島にカソリック司教の聖パトリックが到来。カソリックとケルト文化をうまく融合させた、キリスト教と妖精という相容れない信仰を持つ、「カソリック教徒アイルランド人」が誕生した。

【あそうそう、言い忘れていましたがカソリック派(神父さん。黒い衣装)もプロテスタント派(牧師さん。白い衣装)もどちらもキリスト教です。同じ神を信じていた信者たちの中で、解釈の違いから枝分かれしてできた二つの宗派なんですね。そんなキリストさんもそうですよ。彼はユダヤ人です。敬虔なユダヤ教徒でしたが、独自に神の教えを解釈して、すると彼の元にたくさんの共感者が現れ、弟子となり、キリストの肉体が滅んだ後は、彼ら弟子たちの布教により、やがてそれはキリスト教と呼ばれるようになりました(あ、一応念には念を。あのイエス・キリストさんはキリスト教の神様じゃないですよ。「神様の子供」です。上記したようにキリストはユダヤ教徒です。つまり彼が信じた神はユダヤの神でもあるのです。したがってユダヤ教徒の神も、キリスト教徒の神も同じ、様は唯一です。そしてイスラム教徒もです。皆神は唯一として信じています。これを一神教と言います。ですがそれを認めたくない人たちがいるのです。なのに神はいつまで経っても我々の前に姿を見せてくれません。だから答えが出ません。無意味な争いだけが続くのです】。




 …さて本題、

 

イギリスが侵略

を開始したのは1171年。以降800年に渡り、アイルランドは植民地になりました。そして支配国イギリスと支配される国になったアイルランドとの関係が始まります (一方で、当時アイルランドではノルマン騎士団なる連中が、好き勝手荒らしたりしていた。それもあって強力な王(イギリス)の支配というか保護は、実はアイルアンド人にとってかえって好都合だったという話もある)。

それはイギリス(プロテスタント)アイルランド(カソリック)の、軋轢の始まりでもありました。

 1500年代に、イギリスの王様でヘンリー8世という人がいました。最初彼は熱心なカトリックでした。ところがある時、イギリス国協会(イギリス流プロテスタント)を作ります。カトリックでは許されない離婚を、自分がしたいためだけに
 で、アイルランド。前述したようにアイルランドはカソリックです。多数派のアイルランド人と、少数派のはずの入植者イギリス人(プロテスタント)が支配者という構図が出来上がります。カトリックは、選挙権剥奪などの差別を受けます。議員や弁護士などの高等な職にもつけなくさせられます。ついでに彼らの使う言語ゲール語もやめさせ(こちらは『ユリシーズ』でも言及され、今では誰も使っていない)、英語にさせます。



 グゥーンと飛んで18世紀。
アイルランド人もイギリスへの反抗を始めます(たとえそれを「支配」と呼ぶか「保護」と呼ぶかは究極的にはあまり関係ないです。違う国ですから。

 (かつてアフガニスタンはアメリカと仲良しでした。共通の敵ソ連(ロシア)がいたからです(敵の敵は味方)。でも1991年、冷戦が終わり…、やがて米軍が目障りになってきて…9.11)。


閑話休題。
 
「どうやらアメリカとかフランスでも革命やって成功したらしいぜ。じゃ俺たちも!」




  1793年、フランス革命成功の一環から始まった英仏戦争、その混乱に乗じてアイルランドは、イギリスに反乱を起こします。

すぐ鎮圧されます。

強引な武力併合を経て、18001年「グレート・ブリテン&アイルランド連合」を誕生させられます。

  そんな中でも、ダニエル・オコンネル(『ユリシーズ』にも名前が出てくる)などの七転八倒の運動により、1829年ローマ・カトリック信徒救済法が設立。カトリックに政治参加が認められます。


 喜びも束の間。
1845年~1849年、アイルランド全土を

ジャガイモ飢饉

が襲います。アイルランド人の唯一の栄養源とされていたジャガイモが枯死したことにより、100万人の餓死者が出ました。これはアイルランドの地主はほとんどがイギリス人で、小作人だったアイルランド人をほっといた結果です。他の農作物も取れましたが、それは全部イギリスに納品させられます。


 この事件により、アイルランドの人口は820万人から、他の国に逃げ出した移民を含めると470万人に減りました。半分です。
 この時逃げ出した移民の中には、イギリス本土に移民したレノンさんとマッカートニーさんがいます。そう、彼らの孫がビートルズを結成します(あでも、イギリスは移民を受け入れたんだ)。


 




 飢餓がようやく収束した頃、1958年、フェニアン会率いる秘密結社アイルランド共和兄弟団(IRB)が設立されます。あの、IRAの母体になる組織です…。
 そして、アイルランドは大量の血と涙が流される時代に突入します。

 あそうだ、一応ジョイスのことも記しておかないと。え〜っと、ジョイスはその頃、あ、まだ生まれていません!

続く…。


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