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「記憶遺産」改革で慰安婦登録は阻止できるけど、登録もしにくくなる

本日の産経新聞のトップ記事は『記憶遺産「慰安婦」凍結へ』でした。何のことだろうと思いきや、ユネスコが認証している記憶遺産(世界の記憶=Memory of the World)の登録制度が変わるのだそうです。

ユネスコ記憶遺産の登録に際して従来は誰でも申請が可能で、専門家の審査を経て事務局長が決定するという直線的な手続きで登録が完了できてしまいました。性悪説で考えれば、審査を行う専門家を買収するなどをしてしまえば、何でも登録できてしまいました。結果として、解釈の分かれる史実が恣意的に登録できてしまう杜撰な制度となっています。

新しい制度はこの直線的な登録手続きが無くなります。他のユネスコ加盟国が異議を申し立てられるようになりました。1国でも異議が上がれば関係国による対話が求められます。対話を決着させる期限もありません。実質的には登録の申請を凍結させることができます。韓国が主張する所謂「従軍慰安婦」は日本が事実に基づいて解釈する歴史上には存在しません。他の加盟国が無関心に承認したとしても、日本が1国で異議を申し立てることで話を凍結させられます。韓国が所謂「従軍慰安婦」を登録するには、日本を納得させるだけの物的証拠を突きつけるか、日本の担当職員を買収するしかありません。ハードルがより一層と高くなります。

ハードルを上げることは従軍慰安婦や南京大虐殺のような捏造された歴史の登録を阻止できるので、その点は素晴らしい改革だと思います。一方で、登録されるべき情報が登録されにくくなる懸念もあります。ユネスコの記憶遺産の目的は人間の思い出を保管して資料として参照できるようにすることにあります。例えば先の大東亜戦争で言えば、日本とアメリカがどんな作戦で誰がどう動いて局面を動かしていったかは記録として残ります。ただし、その裏で庶民がどんな思いでどんな生活をしていたのか、軍人やその家族がどのような思いで戦ったのかは残りにくいです。

今で言えば中国武漢市を発端とした感染症で世界が混乱する事態が続いています。この1年間で私たちがどのような思いでどう変化に対応してきたかは残りにくいでしょう。何年か経った頃に象徴的な出来事を資料としてまとめて記憶遺産として登録する可能性はあります。資料の内容が紛れもない事実であったとしても、例えば1国でも「残したくない」「忘れてほしい」と思う国が出てきたら何かと理由を付けて阻止できてしまいます。それをしてきても不思議ではない国に、私は心当たりがあります。

恣意的な登録を阻止できるのは大変喜ばしい話です。一方で恣意的な登録阻止ができてしまう可能性も生じてしまいます。ユネスコ記憶遺産に登録される内容は、今後は良くも悪くも極めて無難なものだけになりそうです。

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