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#感想note  アドボカシーってなに? -施設訪問アドボカシーのはじめかた−(2021/4/12)栄留 里美さん他

今回もRACのメンバーで、いろんな里親や養子縁組、家族のカタチに関わる本の感想noteを書いていきたいと思います。


なぜ私たちは「感想note」を書くのか?

私達の想いとしては

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  1. 里親や社会的養護に関心を持った人が、誰でもサクッとアクセスできる状態にしたい

  2. 堅苦しい本も多いが、その中のワンポイント持ち帰り部分や感想をイラストで図解し、ぜひ関心を持ってくれる人を増やしたい

  3. 同じような題名でも、年度が変われば児童福祉法や社会の様子も変わり、政治や人の動きが変わってくるので年度の変化を紐解きたい

の3つがあります。(特に年度の変化を紐解きたいのは自分たちのためでもあります。)


今までTwitterでもシェアしてきましたがどうしても流れていってしまうと再度読めない人が多く。
その結果、今回よりnoteにしていくことにさせていただきました。(あくまでの本の内容紹介ではなく、感想になります。「面白そう!」と思った場合は是非本をご購入くださいませ^^。)

そして本日は第2回目、どうぞよろしくおねがいします。



今回紹介する本について


今回の本はこちら、

アドボカシーってなに? -施設訪問アドボカシーのはじめかたー
単行本(ソフトカバー) – 出版日 2021/4/12

栄留 里美さん, 鳥海 直美さん, 堀 正嗣さん, 吉池 毅志さん

です。

イラストからもわかるように「マイク」を持ってくれているウサギさんがいますね。入門書として初めての人にも読める解説から書かれてあります。

1.アドボカシーって何?


アドボカシーとは以下の新聞記事でも書かれていますが

「アドボカシー(advocacy)」を直訳すると、「弁護」「擁護」ですが、「子どもアドボカシー」は「子どもの声を聴く」という意味で使われます。

ちなみに医療・公衆衛生分野では政策提言などもアドボカシーに含まれており、広義と狭義でかなり差がある言葉だと感じています。もっと概要を知りたいからは以下のリンクも読んでもらうとわかりやすいかと。



2.日本ではどの程度受け入れられているの?


特に社会的養護の文脈では、最近養成講座が出ていて団体も全国に増えだしましたが、第三者機関としてあるのはまだ公式にはないようです。ちなみに私もこの言葉をしっかりと認識したのは数年前・・・正直イメージがしにくいと思いますのでお話させていただきますと、日本ではまだまだ浸透していない分野です。

その独立性や意義が理解されにくいところもありますが、その大前提として「子どもの権利が理解されているところが少ない」ので、「子どものアドボカシー?そんなの必要なの?意見なんかわからないじゃない?」と思われている気がしています。(これは個人的な意見です)

3.アドボカシーってどんな種類があるのか?


声を聞く、と表現されるアドボカシーですが、どんな種類があるのかというと5種類に分類されます。

様々なアドボカシーの担い手がパズルのようにスクラムを組み、支援していくことで当事者の権利が守られると考えられています。


p23、第1部アドボカシー一問一答より


具体的には上の図のように

・セルフアドボカシー・・・本人
・フォーマルアドボカシー
・・・専門職(相談支援専門員、施設職員、教員、看護師など)
・ピアアドボカシー・・・仲間(同じ属性、背景を持つ人。ここだと施設で育った人なども含まれます。)
・インフォーマルアドボカシー・・・市民(家族、親戚、近隣住人など)
・独立アドボカシー・・・独立アドボケイト(専門アドボケイト、オンブズマン、弁護士など)

p23、第1部アドボカシー一問一答より

と本人も含め、いろんな立場の人がアドボカシーを行っていますし、行えます。
本人もアドボカシーの中に含まれてるのは少し驚きではないでしょうか。


4.アドボカシーでは何を大切にするのか?

これは私も読みながら、何度も読み返した部分です。

他にも調べると順番は色々書かれているようでして、この本の順番で紹介すると6つは

①独立性②エンパワメント③当事者主導④守秘⑤平等⑥当事者参画

と書かれています。

①独立性・・・


独立性は、その単語のとおり当事者に関わる意思決定を行う機関とは切り離した人がやるという意味で、シンプルにわかりやすいなと思います。
例えばそこで働いている人はその意見を聞いて受け入れることでなにか利害関係が発生するかも知れません。するとアドボケイトとして話すことができなくなるので、基本的には利害関係のない第三者が良いと言う意味です。


②エンパワメント・・・

これはイラストにするのも難しかったのですが、ずっとアドボケイトに頼り続ける形を作るという意味ではなく、当事者が自分の言葉で意見表明ができるように支援することも含まれています。そしてその循環を作ることがエンパワメント。(うーーーん、実践するのめちゃくちゃ難しそうです^^:)

③当事者主導・・・

アドボケイトは当事者の指示と許可にのみしたがって行動をする、と表現されており、「当事者が運転席に座れるようにすること」も含まれています。
ナビゲーションする人がいても車は発進できず、あくまでも本人が行き先も、行く道も、乗る車も決めるイメージを想像しています。

④守秘・・・

当事者の許可なしに、当事者から聞いたことを他者に伝えてはならないということです。これはイメージが付きやすいですね。ただしこの分野では特に虐待や暴力など当事者の生命や身体に危害が及びそうな場合には、当事者主導や守秘を貫けないケースもあります。(この線引は難しそうです)

⑤平等・・・

これもイメージしやすいと思いますが、すべての当事者が平等にアドボカシーにアクセスできるようにするということを指します。例えば特定の障害を持っている人はそもそもその相談の場に行きにくい/文字を話せないので意思表示がしにくいなどの、アクセスに対して様々な障壁があることも考えられるのでそこを指しています。

⑥当事者参画・・・

アドボカシーとは常に、当事者の参画を得ながら行う、ということです。これも概念と理解が難しいなと思うのですが、例えばイギリスなどでは子どものスタッフを採用したり(すごい!)、子どもによるサービス評価なども行っているようでした。(まさに子どもの子ども主導、子ども参画事業ですね。)


5.社会的養護においてアドボカシーとは?なぜ施設訪問アドボカシーが必要なのか?


私は里親に関する発信をしている立場ですが、今回取り上げた理由の一番は、社会的養護下にいる子どもたちの声は適切に聞いてもらえていない、と感じる瞬間に何度も出会ったからです。

そしてまだ制度として養育里親の中でのアドボケイトの話は見つけられなかったのでこの本を手に取りました。

施設も里親もある意味では同じく、閉じられた場所にあります。

そのため、子どもと職員や、その周りの子どもたちとの力の優劣は十分にありえます。その中で自由な発言を制約せずに過ごすのは困難であり、その声にならない声を聞く必要性があるとされています。


なにか思ったり感じたりしても「言えない」と思う瞬間は何度もあるでしょう。言うことが告げ口になってしまうのではないか、告げ口まで言わなくてもなにか話したことが自分や周りに不利益になるのでは、と想像する場合もありえます。

実際には施設内で「意見箱」的に紙を入れられる箱の設置などもされていますが実際に入る声はごくわずかで、「言える人」「話しても大丈夫な内容」に限定されがちです。

里親家庭もそうなのですが、「別に里親さんの悪口をいいたいわけじゃないけど、背景を知っている人に話すとしたら児童相談所の人だった。」と他愛のない小さな出来事を話して、実際に児童相談所の耳に入り措置解除(里親家庭を出ることになってしまった)事例もあります。

こういった話を聞くたび、なにか独立アドボケイトが広まる方法はないのだろうかと思っていました。


また違う観点では、配慮すべきこともあります。アドボケイトの人が声が聞けるようになることで、施設や里親さん側での負担が増える可能性です。

一方で、監視の目が増えるという点ではなく、子どもの肯定的な声も聞けたり、子どもの声とは何なのか?と考えるきっかけになるという点ではとても良い制度だと思っています。今後も少しずつでも広がってほしいです。


6.時代の変化

ちなみにこの本では実際に施設で導入するためのスライド資料や、どのように説明しているのかなども細かく資料としてはいっています。

これらの調査研究も2017年あたりから障害者施設や児童養護施設で実際のアクションリサーチをされておられ、この5年間で制度化に向けてぐっと進まれています。栄留先生、鳥海先生、堀先生、吉池先生らは本当に素敵な研究者でありソーシャルアクションを起こされている方たちだなと思っています。

私は障害者分野でのアドボカシーは少し学びましたが、例えば高齢者分野ではなかなかそのような話は聞かず。
声なき声を、あるものとして、尊厳を持って聞くのは本当に大切であり難しいことだなと思っています。

時代の変化も相まって「元当事者」である本人たちの声がSNSや匿名化されて届きやすくなりました。その分「声にならない」子ども時代のときの声が聞けたらなと思っています。

7.次回の本の紹介

次回は少し里親や社会的養護というより、家族の話として紹介させていただきます。

シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた
「家族とは何なのか問題」のこと 著者
花田菜々子さん

単行本 – 2020/3/18

です。

あくまでも切り口としてこの本の感想から入りますが、「社会的養護」や「里親家庭」をここから読み解くのは困難です。しかしこの中でとある人が話す「シングル家庭」への偏見や、貧困へのイメージに対して書かれている部分があり、ここと里親家庭で重なって感じることがあり感想として書いていきたいと思います。


本屋で出会った新しい彼氏は小学生男子2人の子持ち。付き合うって何?血がつながってなくても家族になれる?
ベストセラー『出会い系サイトで70人と〜』に続く、感動の実録私小説。


◎「義理の親子」じゃ任侠映画みたいだと前から思ってた。
「ステップ・ファミリー」はもっと軽やかでちょっとせつなくて楽しい。この本のように。
ーーブレイディみかこ

◎「わかるわー」と「私と違うわー」が交互に押し寄せ、自分の輪郭がどんどん見えてくる。
「自分がめんどくさい問題」に取り組む人にも、オススメです!
ーーヨシタケシンスケ

◎「家族」は、疑い、見守り、手探りしながら、めいめいが創り上げていけばいいんだ。
そのことを教えてくれた、しなやかで逞しい冒険の記録。
ーー渡辺ペコ

ベストセラー
『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』
に続く実録私小説。今度はうって変わって、
家 族 問 題 ……?

【発売前から話題沸騰!】

・「勇気を人に与える一冊」
・「花田さんの軽やかな考え方や文章に触れ、結婚・出産・女性空気を入れてもらえたような気がしました」
・「共感があちらこちらではじけました!」
・「それぞれのありのままを認めたり、認めてもらえたりする、多様性への柔軟さがあり、そっと安らかに心温まる、素敵な本」
・「悩む親、子供、家族に奮闘している全ての人に手に取って貰いたい」

プロローグ お守りのような人
第1章 子どもを持つつもりじゃなかった
第2章 夢のような本屋ではたらく
第3章 仕事も家庭(?)もけものみち
第4章 迷いと不安と鬱の春
第5章 男1+女1+子供2=家族?
第6章 誰かといっしょに生きるということ
エピローグ 深夜高速バスは、北へ

菜々子、38歳。職業、書店員。
バツイチ後、出会い系サイトで実際に会った70人に、その人に合いそうな本をすすめまくって、いまは独身。
そんなある日、勤め先の本屋で出会った新しい年下の彼氏は、小学生男子2人の子持ち。
付き合うって何?結婚する意味ってあるの? 私は「お母さん」になるべきなの?
血がつながっていなくても、「家族」になれるのかーー悩み、ぶつかりながらも、
人と共に生きることの自分なりの答えを手探りで探し出す、心温まる実録私小説。

紹介ページより

読んで元気になる本ですので、もしGWにお時間ある方はぜひ手にとって見てくださいね。ではまた次回。
次回は5月16日ごろを予定しています。



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