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目には目をアカカンガルー歯には歯を

シリーズ・現代川柳と短文NEO/021

 まばたきすれば見逃してしまうほどの刹那だった。視界の右端から左端へと、大きなこども、あるいは小さなおとなていどの大きさのうす茶色のかたまりが走り抜けた。ほんのり獣のにおい。やはり生きものだった、と思う。まわりは誰も気づいていない。いつもこうだ。傷ついたり苦労したりするのは問題に気づいた自分だけ。ともかく仕事である。道彦はゴルフバッグの横っ腹に触れると、中身の麻酔銃のフォルムをエロティックな手つきでたしかめた。

【本日の現代川柳】
目には目をアカカンガルー歯には歯を
/今田健太郎

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