見出し画像

香水

昔、香水というのは人に匂いを憶えてもらう為につけるものと教わった     それと、香水を買うなら、人気の物やみんながつけている物にしなさいと。  
理由は、人気の物だと、街中や人混みでその匂いに出会う確率が高いから、その匂いを感じるたびに相手はあなたを思い出す。匂いはそういうもんなんだって。

だから私は作戦を組んだ。  
好きな彼に向けた作戦。           
普段は有名な香水を使っていて、ある季節になると、匂いを変えた、その季節になると咲く花の匂いに。もし会えなくなっても、一種の呪いのように、この季節になると思い出して貰えるようにと願いを込めて香水をシュッとして彼に会いにいく。

だけどね、現実は違う。 
思い通りにはいかないね。             
彼と会うことはなくなった、この先も多分ないだろう。

彼にかけたはずの呪いがいま、私に降りかかる。思い出してくれるよう願いを込めた香水の匂い、この時期に咲く花の匂いを感じる時、私はあなたを思い出す。

そして私は気づいた。 あなたと会うたびつけてた匂いは、あなたの匂いになっていて、私の記憶は出来ていたんだって。       
この季節、あなたは私を思い出してくれた? 私は思い出して切なくなって、なんだか懐かしくなる。                
そんな気持ちにさせてくれる金木犀の香りが愛おしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?