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「スパニッシュ・チェッカー」とは?

表題の日本語ゲーム「スパニッシュ・チェッカー」は日本では図のようなゲーム盤で発売されました。たぶん1985年前後あたりの話です。
しかし今、BGGで「Spanish Checker」を検索すると、普通のDraughts(スペイン・ローカルルール版チェッカー1440)しか出てきません。このボードデザインは出てこないです。

盤と、初期配置

どうやら、日本発売元の「シュウ・クリエイション」では、出典の根拠もなく・なんとなしに(無責任に)このゲームに「スパニッシュ」という名前を付けたのかも?という疑念が浮かびました。ルールは以下の通りです。

スパニッシュ・チェッカー(Spanish Checker?) 2 players
勝利条件:
相手のコマを全て取ること。
初期配置:
図の通り。
遊び方:
自分のターンでは、自分の色のコマのうち任意の1つを動かす。線に沿って1歩動くか、あるいは線に沿って相手のコマを飛び越す。
*飛び越した相手のコマは取り除く。
*連続ジャンプはOK。一手とカウントするので、自分のターン内で複数の相手のコマを取れる。
*パスはできない。

しかし、やっぱり変です。そもそも、このゲーム盤のデザインは「古典・伝統ゲーム」紹介本のなかで、見たことがあります。既知のゲーム盤デザインです・・・・・・。
はい、長文で引っ張ってすいません。知る人ぞ知るって話でした。
ゲーム関係の文献検索したら出てきましたよ。これは、Alquerque(アルケルケ)です。

Alquerqueはどこの「伝統」か、といえば、ムーア人たちの発明品です。
歴史書に記録された年号としては711年のこと。
*711年に発明されたという記録ではなく、711年には「すでに存在していた可能性がある」という記録です。

イスラムを出身とする人々が「武装して」次々とスペインに流入。スペインは「イスラムびと」たちによる長―い「被」支配の歴史を経験することになります。その「イスラムびと」をひっくるめてまとめ表現したのが「ムーア人」という名称だそうです。

ということは、確かにスペイン(イベリア半島)の人々が伝統的に長い年月にわたって遊び続けたのは間違いなしですけど、「スパニッシュ」を名前に冠するのは絶対にやめてほしかったですね。「シュウ・クリイション」さん!こういうのはダメですよ!

この基本ルールをそのまんまパクリして、どこかの誰かが12世紀に8x8の「Draughts(チェッカー)」を発明したのです。ですから「正統的Draughtsの母体ゲーム」なわけです。(Alquerqueをご存じの方!知ったかぶりして本当にすいません。この記事はゲーム史を知らない人に、古代史を楽しんでいただく目的で書いています。ご理解のほどお願いします。)

でも、そういうわけなんで、このAlquerqueは「まだチェッカーになっていない前身のモノ」なのですから、チェッカーという名前で呼んではいけません!
このように、名前をつけるうえで「2つも」重大な過ちをシュウ・クリエイションさんはやっているのです。本当にやめてほしいです。
*シュウ・クリエイションは既に倒産してしまった会社です。







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