女の朝パート66

女が、土曜日の朝にだけ行くその店は、

JR東日本山手線沿いにある田端駅の駅ビルアトレと言う建物の中にあった。

その店に行く為には田端駅の改札口をでて、

右側にある駅ビルアトレ二階へ上がらなければならない。

アトレは何故アトレなのか?

土曜日の朝にだけその店に来る女は、ヘンテコな名前だなと思いながらも何故誰にもその同意を求める事をしないのかと、いつも不思議に思うのだけれど、

そんな事を思うこと事態ワタシが不本意で無意味でヘンテコな事なのかもしれない。

しかしアトレと言う名前と、土曜日の朝にだけその店に来る女に対して、何故かリアリティーを感じ、自然に寄り添いたくなって仕舞うのはなぜだろうか?


不思議、

もしくわどうでも良い、

もしくわ魅力と言う言葉しか今は浮かばないけれど、

とうとうワタシの頭がヘンテコになって仕舞ったのかもしれないとも考えられる。

とりあえず、病院に行く程でもないから今は大人しくここ田端のスタバの椅子に座って置くとするけれど、

過去に誰かが一生懸命考えて決まった、アトレと言う名前の駅ビルである事に変わりはないし間違いでもないし、正真正銘の事実無根。


それが現在もアトレで、今後もそのアトレと言う名前として引き継がれてゆくのであれば、

過去から未来に連なる時間の中のたった一つの、

今のワタシにとってどうでも良い真実に触れる事は、

その対象がアトレであれ、ヘンテコ女の事であれ、他の何処かに向かって、自然な形で、無自覚に反応しリプライされてゆくようだ。

そう考えると、

どうでも良い事の裏には、当事者にしか知る事の出来ない事実が隠されていて、そこには人間一人の膨大なエネルギーと時間が費やされ想いが働いている気がしてならない。


ともあれ、

土曜日の朝にだけその店に来る女が、

アトレと言う建物の中に入る為には、

山手線を下車した後に改札口を突破しなければならない。

Suicaの残高がなければ、次の人の期待を裏切る事になり、悪態をつかれ兼ねないので充分に気を配った方がいい。

もし悪態をつかれたいのであれば、

そう言うのもありだと思うけれどワタシとしては余りオススメしたくはない。

何故ならば、ほんの些細な出来事が、思ってもない大きな事件に発展することも考えられるから。

しかしそれは善し悪し含めての事で、

もし、運命的な出逢いだったと言えることをしたければ充分な予知は可能だろう。


とりあえず、土曜日の朝にだけその店に来る女はそのへんは弁えてるらしく、未だに田端の駅では足止めを食らった事はなかった。

ピンポーン!出入り禁止!人間失格!と言われているような音がいきなり耳に届いた時の羞恥心と言ったら、経験した者同士でしかわかり会えないし慰めあうこともできないのだ。

もしそこに何でも聞いてくれるような心豊かな人がいたら話は別だけど、今田端のスタバにいるワタシにはいない。



とりあえず、田端駅の改札口を出ると右側にそのアトレがある。

先ず正面玄関口を入ると、左側にエレベーターがあるが、目の前のエスカレーターを使って二階へ輸送された方がスムーズだ。

好き好きがあるから、ワタシが偉そうに決める事ではないが、エスカレーターの方が2階へ上がる為には早いし気軽に乗れて便利だし、天国に向かってゆく感じにワクワクすらしてくるのだから。

だからなのか、どうなのかは解らないけれど、

土曜日の朝にだけその店に来る女はエレベーターと言う乗り物にはまるで感心を示さない。

それもいつもだ。

誰にも相乗りさせないような堅い絆が、

もしかしたら女とエスカレーターの間にはあるのかもしれない。

女は、瞳の奥をキラキラ輝かせ狂喜乱舞しながらエスカレーターに乗り込む。

いつも大きながらがらを手にしながら。



エスカレーターを上がりきると、次は、

右をUターンするのか、左をUターンするのか2つの選択を求められる。

何故かって?

そのお店がエスカレーターの真裏にあるからだ。

日本の裏側がブラジルって言う感じに近いけれど、

実は日本の裏側はブラジルでないのが本当の話らしいが、今はどうでも良い。

土曜日の朝にだけこの店に来る女は、決まってい右へUターンし、本屋さんを横目にしながらてこの店にやってくる。

よっぽど新書が欲しいのだろうか。

思う存分買ってあげたいけど今のワタシにはちょっと厳しい。



ともあれ、本屋さんの先にその店があり漸くたどり着く事ができる。


その店の特徴は大きな窓ガラスがあること、

店内を囲む壁が無いこと、

そしてレジカウンターはオープン式のタイプで、セルフサービス。

他にも珈琲やこの店の軽食も手軽に買える。

トイレだってついている。



そうこうしているうちに時刻はもう9時。

福音とも想える鐘と共にそろそろその女も現れるはず。


がらがらを転がす音が風に乗って運ばれてくる。

いよいよ女が姿を現す。

土曜日の朝だけに現れる女。


まじで恋する五秒前。


広末涼子の顔、広末涼子の大ヒットした曲。

何故大事な場面で?


ずっと前から好きだった。

誰よりも好きだった。

やっとワタシに来たその女。。、


そうだった。

土曜日の朝にだけ田端のスタバに来る女がワタシは好きだった。

ワタシはいつものように田端のスタバに来て、

その椅子に座ったら写メを撮りやることは全てやった。


後はその女の登場を待ち、悲しいけれどまた見送るだけ。

 

早く逢いたい、

土曜日の朝にだけ田端のスタバに現れる女を。。。






赤いくつを履いた女が1人呟いていた。














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