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「次元」が上昇する意味

「フラットランド」を読んだ。
フラットランドは、いわゆる「ゆるふわスピ」で言うところの「次元」ではなく、物理的、数学的な「次元」の話だ。

著者のエドウィン・アボット・アボットは、英国ロンドン生まれ、教育者であり、古典や神学についても学んだ人物。
なるほど、古典と神学について学んだ者からこそできた物語なんだなぁと、甚く納得した。

これは1884年に書かれた物語とは思えないほど、「時代を先どった」物語で、数学的な視点と神学的な視点とが絶妙に合わさり、たまにその時代の風刺も垣間見える作品だった。

のちのアインシュタインが相対性理論を唱えたことで、これが注目されたという経緯を持つ、当時としては特殊な本なのである。実に興味深い。




作品の論点は、「次元」であり、「視点」だ。
主人公は二次元世界の住人で、第一章は二次元での生活のお話、第二章は違う次元に行った時のお話が描かれている。

・零次元:点・ポイントランド
・一次元:線・ラインランド
・二次元:平面・フラットランド(主人公はここの住人)
・三次元:空間・スペースランド(わたし達はここの住人)
・四次元:思考・ソートランド
  ※ポイントランドには住人はおらず、王だけが存在する

この世界観を主人公は行き来する。主人公から見た各次元世界の説明が興味深いのはもちろん、高次元の世界について考えるたびに主人公の「気持ち」に変化が出てくるところが一番興味をそそった。
ネタバレになるので伏せるけれど、わたし達の中で「高次元」への理解がある人と無い人との「差」がココなのではないかと、ここら辺が著者が神学を学んでいるから出来た表現なのだなと、そう思った。

単純に数学の本としても面白いし、心理学や神学・哲学の本としてもなかなか深い本ではないかな。

これは、海外ではアニメーションにもなっているらしく、量子力学の絵本も最近出始めてるみたいだから(先日本屋で確認)、もっと日本もこういった分野への誘導をした方がいいのではと思った。
怪しいスピにハマるのは正しい知識が無いから、と誰だか書いてたけれど、むしろそういったモノに惹かれる人はこの手の本を読んだ方が良さそう。
スピは本来、一番ちゃんとした科学だと思うから。

そう考えると、何でも金儲けに繋げる人達というのは、神聖なものを、どれだけ穢してきたのだろう。罪深いなぁ。




さて、地球に生まれるのは、スタートは人間からで、その後、どんどん「堕ちていく」説がある。
あらゆる生き物が進化してきたなんてのは嘘っぱちで、実は、人類は必要に応じてどんどん退化する退化論というのがあり、わたしとしては、これがどうもしっくり来てしまっている。
つまり、罪を重ねた分だけ「次元落ち」すると言う訳。(あくまで説ね)

となると、次元落ちを繰り返すと、スペースランドの住人ではなく、気づかぬ内にポイントランドの王になってしまってるかもしれない。
自分以外の視点がないため、ポイントランドの王は「自分が理解できることだけを、自分の考えとして受け入れる」らしい。
(物理的な)次元が低いということは、それ以外の視点を受け付けないということと同義なんだなぁ。(実際には自称高次元のふわスピにもいるが)
ここだけ抜き出しても、なかなか考えさせられる。

他にも、「戦闘能力の高い兵士が、戦うための知性を磨くことで戦闘能力が低くなってしまう」だの、なかなかに面白い「世界の統治の仕方」が描かれてもいて、どんな切り口からも楽しめる本だった。

また、時間を置いて、読んでみようと思う。


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