日本人が描く侍の魅力

私は昔から年上の俳優さんが好きでした。

なかでも真田広之さんはめちゃくちゃカッコよくて、子供ながらに惚れ惚れしながら見ていたのを覚えています。

お茶の「綾鷹」が新商品として出始めた頃、真田さんがCMに起用されていたために同商品を買い始めたのも今となっては良い思い出です。

そんな真田さんが出演する最新映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』の情報が解禁され始めました。

真田さんが演じるシマヅは、ジョン・ウィック(演:キアヌ・リーヴス)の日本の旧友。スーツの上に羽織と、和洋折衷を斬新に取り入れた衣装が目をひきます。
62歳になった現在もご自身で殺陣をこなされてるという真田さん。そのアクティブさに加えて、長年かけて培った技術や芝居に対する熱意には尊敬の念しかありません。

調べてみたところ、真田さんがハリウッドで活躍し始めてからから約20年が経ったそう。世界に誇る日本のスーパースターですが、今だからこそ彼が出演した日本の歴史映画を改めてお勧めしたいのです。

特に見ていただきたいのが、山田洋二監督の『たそがれ清兵衛』です。

2002年に公開された本作には主演の真田広之さんをはじめ、宮沢りえさんや大杉漣さん、丹波哲郎さんや田中泯さんといった豪華役者陣が集結。

メイキングを見ていただければ分かりますが、なんてことのない風景のカット1つ取っても山田洋次監督のこだわりが凝縮されており、個人的には藤沢周平作品の美しさが見事に映像化された1本だと思っています。

他にも『蝉しぐれ』や『隠し剣鬼の爪』等、お気に入りの歴史映画はたくさんあるのですが、これらの作品を通して何を言いたいかというと「日本人が本気で描く侍は震えるほど格好いい」ということです。

もちろん、アメリカ人の思うデフォルメ化されたサムライもそれはそれで魅力的なのですが、やはりキャラクターとしてどう際立つかに重点を置いて描かれているため、どうしても違和感がぬぐい切れません。

日本人の目を通して見ると、同じ出身地のはずなのにどこか異邦人的な要素を感じてしまうのです。

私は、ハリウッド映画におけるサムライの描き方はそれで良いと思います。
そうして浮かび上がってくるエンターテインメント性には、日本人が生み出せない魅力もあると思うからです。

しかし、同時に日本映画にも注目してほしいというのも本音です。
なぜならそこには、全く異なる世界が広がっているからです。

侍は、ただただ刀を振るうだけの存在では無いということ。
どんな環境でどう生きてきて、何を想って何のために刀を振るうのか。
日本の映画ではそれらの要素が美しく静かに、そして時に力強くも切なく描かれているのです。

恐らく洋画ではなかなか描かれることのない”わびさび”の魅力が、邦画には深く根付いています。

『たそがれ清兵衛』では、丁寧に使い古された着物や最低限にまとめた髪型等、視覚的要素でも主人公の生活水準を見事に表現しました。その一方で真田さんの凛とした佇まいや無駄のない動きは、彼の奥底に眠る本能的な強さを物語っています。

そして見終えた後に広がる何とも言えない感情をぜひ噛み締めてほしいのです。
真田さんの名前と共に、世界中の人に見てもらいたい名作です。

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