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【ホラー】同じ話

 うちの高校の茶道部ってさ、昔はなんかどっかの普通の教室に部活動の時だけ畳持ってきて敷いて使ってたんだけどさ。何かのタイミングでこの和室を使っていいってことになったらしいんだよね。

 んである時、茶道部の先輩が「せっかく和室あるんだから百物語やろうぜ」って言い出したんだ。何がせっかくなのか分からないけど、まぁ面白そうだなと思って、茶道部のモノ好きを十人集めて百物語をやったんだ。
 十人だから一人十話用意して持ち寄ってさ。ちょうど今日と同じ人数だよな。あ、話は九十九個目で止めるから一人だけ九話か。

 一話目は言い出しっぺの先輩からだった。結構面白い話でさ、話が終わった後も「いやー結構怖かったですねー」とか言いながら、楽しくやってたのね。んで他の人が二話目、三話目と話をしていって。ぐるっと回ってまたその先輩の番になった。

 んで先輩が話し始めたんだけど、何か様子がおかしい。なんでおかしいかっていうと、話してるネタが一周目と同じなんだよね。途中から違う内容になるのかなと思って聞いてたけど、どうもそんな感じじゃない。そんで一周目と同じ内容のままで話が終わってしまった。

 さすがにさ、「いやいや先輩今の話さっきのと同じじゃないですか。ふざけてるんですか」って言っちゃったんだよ。そしたら先輩が「いや……ちゃんと違う話をしたけど」って言うんだよ。他の皆も、おいおいマジかよ、みたいな感じで俺を見ててさ。そんで俺も「ああ、そういうことか」ってなったんだよ。

 そこから先は地獄だった。いや地獄ってほどではないかもしれないけど、恐ろしくて堪らなかった。先輩の番が回ってくる度に、先輩は全く同じ話をするんだ。それも一言一句違わず。息継ぎのタイミングまで一緒なんだよ。もう勘弁してくれ、早く終わってくれ、ってそれしか考えられなかった。自分の番になっても、自分が何喋ってるか分かんない。まぁとりあえず何か喋ったんだと思う。

 そんな感じで百物語は終わってさ。百物語って百話語り終わったら何か恐ろしいことが起きるっていうけど、そん時は何も起きなかった。まぁ九十九話で止めたから百話までいってないんだけどさ。唯一その先輩の話が怖かったな。

 先輩がどんな話してたか知りたい? ちょうど俺が話してるこの話だよ。俺は今日ちゃんと十個の話を用意してきてるけど、全部同じに聞こえる奴が出てくるはずだ。そいつが次の百物語の幹事だよ。茶道部の百物語はずっとそうやって続いてきたんだ。


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