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コバエとキーボード


さっき、ノートパソコンのキーボードの中に
コバエみたいなのが入っていった気がするんだけど出てきたのを見ていない。


どこいったんだろう。


それでちょっと物語を妄想してしまった。

ここから先は、絵はないけど絵本みたいな話だと思って読んでください(笑)


【物語】コバエとパソコンのおうち


ピカピカしている大きな画面、それにつられてやってきたコバエ。

ノートパソコンのキーボードのところ。

デコボコしたところに文字がたくさん書いてある。


「すごいなぁ、山がたくさんだ。あ!デコボコの間に隙間があるぞ!」

コバエはキーボードの「P」の文字板の隙間から中に入っていった。


「わぁ、なんだか迷路みたい」

機械の中は見たことない配線とか光でごちゃごちゃ。

狭くて飛べやしないから、

羽はあるけど、飛ばずに歩こう。

コバエは探検することにした。


「あー楽しかった!そろそろ帰ろうかな」

そう思ったときにはもう遅くて、

どこにいるやら。


「あれれ?困った。ここはどこだろう」

出口を求めて歩き回るけれど

機械の中を歩いても歩いても、

行けば行くほど出口はない。


「あぁ、どうしよう。このまま一生出られないかもしれない」

涙が出そうになるのをこらえるコバエ。

まあいいか、今日は疲れたから休むことにしよう。


機械に囲まれて一晩過ごしてみたけれど、

中は暖かくて、快適だ。

敵もいないし最高かもしれない。

たまにピカピカ光って目が覚めちゃうけど、

それもまあ、オシャレでいい感じ。


最初は悲しかったけれど、

なんだか居心地が良い。

そしてまた一晩が過ぎ、

出口を探すのは明日でいいか。とまた眠る。

また明日。また明日…

ダラけてすっかり羽の動かし方を忘れてしまったコバエ。

でも、

「まあいいか、飛べなくても」

そう言って、しばらくそこで暮らした。


いつものようにどこかがピカピカ光って目が覚めた。

コバエは、思った。

ここでの暮らしは快適だけれど、

そういえばしばらく、おひさまの光を見ていない。

お腹も空いてきた。

もう一回外に出たいな。


そう思ったコバエは、しばらく暮らしたその場所から旅立つことにした。


出口はもちろんわからない。

来た時の道はもうすっかり忘れてしまった。

狭くて飛べないからとにかく歩いた。

途中で見たことない機械を見たりした。

歩いている途中に「外に出たときまた飛べるかな?」なんて心配になって、羽を動かしながら歩いたりした。

「外に出たらどんなものを食べようかな」

「どんなところに行こうかな」

「この場所のことをあの子に話そう!」

そんなことを考えていた。

どんな想像でも全部、空を飛んで向かっていた。


何日も何日も歩いて、やっと光を見つけた。

毎日見ていたピカピカする機械の光じゃない。

優しいおひさまの光。


いくつも出口があったけれど、

「ひさしぶりに外に出られる!おひさまの光を浴びて、羽を思いっきり動かして飛べるんだ!」

コバエはワクワクして、

嬉しくなって、

そのまま一番明るくて大きな出口に向かって一直線。

何も確認しないで走っていった。


その出口が、入ったときより広いことなんて気付きもしなかった。


カチャッ!

コバエが外に出ようとした瞬間、

「あれ…?急に天井が落ちてきた」

キーボードが押された。


もう少しで外に出られたのに。

こんなにたくさんあるキーボードの中で

エンターキーから出ようとしてしまったばっかりに。


遠くなっていく意識の中で、

ここに入るとき見たデコボコが見えた。

「なんだ…あっちの出口から出れば天井は落ちてこなかったのか」

カチャ!

エンターキーは何度も押される。


「こんなことなら、毎日ダラダラ過ごしていないで、もっとよく調べてから出口に向かえばよかった」


「こんなことなら、ちゃんと確認してから出れば良かった」


たくさんの後悔が一気に溢れてくる。

羽はボロボロ。

きっともう飛べない。


「あぁ、大好きなおひさまの下で、

 もう一度、飛びたかったなぁ…」


コバエは最期に、いつだか「飛べなくてもいいや」と思ったことを後悔した。


カチャン!!

エンターキーが勢いよく押された。


コバエが見たのは、

大好きなおひさまの光ではなく、

すぐ近くでピカピカ光る機械の光だった。


おしまい。


という、

コバエがパソコンのキーボードに入っていて、

しょうもないけど書きたくなってしまった話(笑)


実際のところ住まれても困るし
中で死なれても困る。


まだ出てきたところを見ていない。

出てきておくれよ、コバエ。


おわり



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