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Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/05/28 第398号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。

月末が迫ってきて、38歳の誕生日と原稿の締切が同時に近づいてくる恐怖を味わっておりますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。私はプレッシャーがハンパありません。

目下の原稿があり、その後の企画案があり、別の企画案があり、停滞しているもろもろの計画があり、と考え始めるとキリがなく、その全体像が「はたして大丈夫だろうか」という圧をかけてくるのですが、実際は目下の原稿のことしか考えていないので問題ありません。まあ、それだけでも充分に高プレッシャーなのですが。

木を見て、森を見ることは大切ですが、とりあえず月末までは脱稿という木を見続けることにします。いろいろ考えるのはその後で。

〜〜〜ストレッチ〜〜〜

長く体を動かしていないと、体が鈍りますね。

だとしたら、長く感情が動かされてないと、感情の動きも鈍るのかもしれません。

そう考えると、さまざまな物語は、感情のストレッチと言えるのかもしれません。ふと、そんなことを考えました。

〜〜〜アウトライン酔い〜〜〜

本編にも書きましたが、最近は執筆中の原稿のことばかり考えています。頭の中にその本の構造がばっちり住み着いている状態です。

なので、あまりここに書くこともないのですが、それはそれとして面白い発見がありました。

たまたま、他の方が作られている本の構成案(アウトライン)を拝見したときに、一瞬気分が悪くなったのです。その感覚の一番近しいものを上げるとすれば、おそらくは「車酔い」になるでしょう。平衡感覚が強く揺さぶられるような、そんなイメージです。

たぶん私の頭の中にあるアウトラインと、拝見したそのアウトラインの「何か」が大きく異なっていたため、私の中でズレの感覚が生じたのだと推測します。ただ、その「何か」が何なのかはさっぱりわかりません。見出しと概要が並んでいる点では、両者に差はないはずですが、でもやっぱり違う何かはあるのでしょう。

これはけっこう面白い発見です。アウトラインは単なる概要ではなく、何かを含んでいる。そのことについては、また改めて──つまりは脱稿後に──考えてみようと思います。

〜〜〜Q〜〜〜

というわけで、今週は短めですがQ(キュー)にまいりましょう。正解のない単なる問いかけなので、頭のウォーミングアップ代わりにでも考えてみてください。

Q. 文字情報に「酔う」ことはありますか?

では、メルマガ本編をスタートしましょう。

今週は、ショートショートをお休みして、エッセイを一つ増やしてみました。あと、「メモから始める仕事術」という企画を短期連載しようかと目論んでいます。今週はその第一回目です。

新しい試みなので、よかったらご感想をお願いします。反応をいただければ、同種のコンテンツが増えていく可能性大です。

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2018/05/28 第398号の目次
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○「一日をメモから始める」 #メモから始める仕事術
 タスク管理を掘り下げていく企画。連載のまとめに入っています。

○「名前の呼び方」 #エッセイ
 ちょっとしたエッセイです。

○「学ぶ場に必要なこと」 #エッセイ #やがて悲しきインターネット

○「断片的な情報摂取の問題点」 #情報摂取の作法

○「本ができていく感覚」 #物書きエッセイ
 物を書くことや考えることについてのエッセイです。

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

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○「一日をメモから始める」 #メモから始める仕事術

ちょっと思いついたことがあるので、BizArts3rdから少し方向はズレますが、思い切って書いてみます。次回も続くかどうかは未定です。

連載名は「メモから始める仕事術」。文体は、針が振り切れるくらい軽めにいってみましょう。

〜〜〜

メモなんです。仕事をうまく成し遂げるコツは、メモにあります。メモにしかないといっても過言ではありません。いや、もしかしたら過言かな……。でも、メモに相当な要因があることは間違いありません。

とは言えこれは、「上司の言うことはきちんとメモしておきましょう」といった話ではありません。もちろん、それは大切なメモの一つですが、上司が細かくメールで指示してくれる人間ならば不要なアドバイスです。

「メモから始める仕事術」は、もっと包括的にメモの役割を位置づけます。「書き留めること」を万事の出発点に想定するのです。

たとえば、あなたは一日をどんな風にスタートしますか。私はメモからスタートします。

〜〜〜

朝目覚めて、ぼんやりした頭でまずTwitterのタイムラインを(主にリプライなどを)確認し、次にGmailの受信箱を覗いて、そのままFeedlyに溜まっているRSSの見出しをざらっと眺めていきます。

もうその段階で、「その日」に関することがいくつか浮かんできます。GmailにはGoogleカレンダーからの通知が飛んでくるので、スケジュールに必要な行動が想起されるかもしれません(「今日はシゴタノ!の締切だ。何を書こうか」)。ツイートやブログを眺めているうちに、ブログに書きたいことが出てくるかもしれません。メールの内容によっては、早急に対応すべき作業を発覚することもあるでしょう。

そうして、思い浮かんだことを、さらさらとメモしていきます。

場所はどこでも構いませんが、私は「その日のノート」をよく使っています。一昔前はほぼ日手帳の当日のページで、少し前は、Evernoteのデイリータスクリスト用のノートで、今現在は7wrinerの1ラインを使っています。来月にはもしかしたらScrapboxになっているかもしれません。本当に、どこだって構わないのです。メモを書けさえすれば問題ありません。

書く内容はいろいろです。「今日はメルマガを仕上げたい。R-styleのデザインも気になっている。あとで郵便局にいかないと。午前中に原稿作業を仕上げておいて、午後からは図書館に行こう」。頭に思い浮かんだことを書きつけていきます。

ここでのポイントは、おそらく二つあります。

一つは、漠然とでも「その日のシミュレーション」を行うこと。時間や分単位で細かく考える必要はありません。午前中はこう動き、午後の早い段階はこう動き、夕方にはこう動いて、夜にはこう動く、といったことをイメージすることです。言い換えれば、なんとなく一日を始めないことです。往々にして、なんとなく一日を始めてしまうと、なんとなく一日が終わります。

もちろん、その日のシミュレーションをしたところで、その通りに進むとは限りません。まったく限りません。そもそも、その通りに進むなら、それはシミュレーションではなく、予知や予言などの奇跡に属する行為になってしまいます。さすがにそれを求めるのは、人の身には重すぎる願いでしょう。

シミュレーションするのは、あくまで「枠」を設定するためです。一日を「24時間の大きな箱」と考えるのではなく、起きてから寝るまでの16時間(あるいはもっと短い時間)だと捉え、さらにその箱に細かい仕切りを入れることで、時間の感覚を研ぎ澄ませます。といってもそれは、レイピアのような鋭利さではなく、削りたてのエンピツ程度の鋭利さにすぎません。ほどほどの鋭利さ。ゴルディロックス鋭利さ。

これがあるだけでも、以降の行動選択の基準が変わります。時間がたくさんあると捉えてしまうと、どうしてもゆるく引き延ばして使ってしまうのが人間の傾向なので(もちろん個人差はあります)、わずかでもシミュレーションしておくことで、その感覚を補正するわけです。

もう一つ、朝一にその日のことについて書き出すことの効能は、「いきなりタスクにしない」点にあります。これは極めて重要な点です。

たとえば、メールを読んでいて何か実行すべき案件が発見されたとしましょう。するとすぐさまそれを「タスク」にしたくなります。特に、「今日のタスク」にしたくなります。なんなら直後に取りかかりたくなります。でも、それって本当に今日やるべきタスクなのでしょうか。実は明日でもOKかもしれません。明後日でもOKかもしれません。よくよく考えれば、別に自分でやらなくてもよい場合すらあります。

同じことは、「後でスーパーに行きたいな」と思ったときにも言えます。別段今日スーパーに行く必要はないかもしれません。何か別の買い物と合わせて、その日に行けばいいかもしれません。だから、思いついた直後に、「タスク」にするのではなく、いったん「後でスーパーに行きたいな」とだけメモしておけばいいのです。

事実、自分の脳内で発生したのは、「後でスーパーに行きたいな」と思ったことだけであって、それがタスクであることはその時点では確定していません。しかし、ネットでよくある、

門番「貴様は誰だ?」
着想「タスクです」
門番「よし、通れ」

のような雰囲気で、即座にタスク化され、タスクリストに掲載されてしまうことがよくあります。このやり方をしていれば、あっという間にタスクリストはパンクしてしまうでしょう。

重要な点は、「〜〜しようと思った」ことと「〜〜すること」をタスクにすることは別である、ということです。だからこそ、いきなりタスクリストの作成に取りかかるのではなく、まず頭の中に思い浮かんだことをメモするところから、一日をスタートさせるわけです。これは、〈着想と処理を分ける〉という言い方ができるでしょう。

〜〜〜

とりあえずは、こうして書き出すところから一日をスタートさせるわけですが、もちろん日中だってメモの役割は山ほどあります。それについては、次回に。

(つづくかも)

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