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「グレイステクノロジー」の話。

注:この記事は2022年2月に別媒体で投稿したものの再録です。内容に情報の古さがあったり、現在との相違点があることをあらかじめご了承ください。

グレイステクノロジーという会社がある。
この会社が“やらかして”しまった。粉飾決算である。

事態はかなり深刻で、2月末に上場廃止となることを聞いている。
昨日チラッと株価を見たら、僅か14円になっていて驚いた。
粉飾決算が明らかになる以前の昨年来高値は3,490円もあったのだ。
※2022年4月現在すでに上場廃止。

ちゅーことはやなぁ。
この会社の株を1単元保有しているだけで約35万円の資産だったのが、たったの1,400円になってしまったということだ。
10単元なら350万円が1万4,000円なので、株主の憤りは察するに余りあるという感じだろう。

別に好奇の目でこのネタを取り上げたわけではない。
このグレイステクノロジーという会社は、いまでこそ「粉飾決算のけしからん会社」、「株主を欺いたとんでもない―」と批判の的なのだが、つい先日までは成長期待の超優良企業と称賛・評価されていたことを忘れてはならないと思うのだ。

一般生活者には少しわかりにくいが、マニュアル制作というものを業容としている会社なのだが、けれどもそのニッチ性や特定分野でのプロ集団ということで重宝されていた。
私自身も元々広告制作の現場にいたので、このマニュアル制作の難しさはある程度わかる。
発注企業が大きければ大きいほど、そのマニュアルを請け負うという事業は一大事で、言ってしまえばそこらの中小の制作会社ではまず無理だ。

この会社は数年前までIR活動に積極的で、各経済メディアでも取り上げられていた。
スキャンダルの発端となる前に急逝した元社長も、自らIRの一環でメディア露出もしていた。当然だが雄弁に自社の成長戦略や展望を語り、聞き手の経済ジャーナリストや証券アナリストなども賛同して盛り上げていた。

それを見聞きした投資家は「おっしゃ、俺もこの会社の株買って応援しちゃる!」てなもんだろう。

しかし、裏では腐敗しきっていたという。
本当にわからないものだ。

事の重大さから特別調査委員会が組織され、調査報告書がリリースされた。
それを昨夜、寝つきが悪かったものでベッドの中で読み込んでしまった。
結果、もっと寝つきが悪くなってしまった。

粉飾決算は悪質な不正で擁護する余地などないのだが、売上数字へのプレッシャーから社内でパワハラが常態化され、役員から一般社員まで、次々にどうにかしちゃってゆくさまが時系列で記録されており、さすがに気の毒な気持ちになった。

「企業とはなにか」「上場とはなにか」「会計とはなにか」ということを考えさせられてしまう。

また、私も広告屋なので(最近はあまり無いが)IRの案件なども請負うことがある。
まぁ、メディアにとってはどんなに腐敗した企業も広告出稿となればクライアント様なので、そりゃあ“都合の良いこと”しか言わない。というか、言えない。

メディアの責任というのはどこまであるのだろうか?
今回の上場廃止のトピックを扱うニュースで「本当にあってはならない、けしからん会社です」とコメントしていた証券アナリストは、ほんの一年前に推薦銘柄として雑誌でこの会社を絶賛していたではないか‥‥とか思ったり。

どうしたものか。わからない。
株を持っていた人は不運としか言いようがないだろう。
上場継続ならまだワンチャンあるが、廃止となれば証券は紙くず同然になったわけだ。

さて、調査報告書の原典のリンクを残しておく。
ペラだけど134頁もあるので読むのはそれなりに大変だけど、これはもうリアルなサスペンスだ。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6541/tdnet/2072811/00.pdf

もっと要約をザーッと読むなら、まとめサイト的なのもあったので付記しておく。
https://kabumatome.doorblog.jp/archives/65990919.html

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