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UE:オーバー・ルーズ-1-

「ランカー目指してるアンタの子供を負かして欲しい?」
「はい、一切の容赦なく、ギッタンギッタンのボッコンボッコンに」

 深夜のありきたりなファミレスの一角で如何にも不審な感じの客達がいた。一人は三白眼に黒髪、精悍だがガラは悪めで黒いジャケットを羽織った青年。相対する人物はグレーの背広に髪を禿げ散らかした如何にも中年男性という風体。

「出すもん出すならいいが、オッサン」
「なななな、なんでしょうか!?」

 ガラの悪い青年、ハガネはクライアントである中年男性に礼儀も投げ捨てて指先を突き付けるとはっきりと告げる。

「俺に一回負かされた程度でソウルアバターを降りたりしないと思うぞ、アンタの子供」
「……ッ!」

 ハガネの指摘にびくりと硬直した後うなだれ、テーブルに視線を落とす中年男性。ハガネの指摘はジャストミートだったらしい。しばしうなだれた後、ぽつぽつと事情を語り始める中年男性。

「そうは言っても、私が何度説き伏せようとしても糠に釘馬耳東風ノレンに腕押し、まるで効き目が無くて……一度手ひどく負ければトラウマになるかと……」
「聞く耳持たないって、そりゃそうだろ。子供はアンタの付属物じゃなくて独立した個人なんだから、もうどう生きるか定めてるヤツにそりゃ無粋ってもんだ」
「でも、でもですよ?親としてはこんな収入も不安定で事故死の危険もあるような物に人生費やすなんて……」
「人の話聞けよオッサン、気持ちはわからんでもねーがな」

 さめざめと泣く子持ち中年男性を前にしてはぁー……と特大のクソデカため息をこぼすハガネ。仕事の依頼と聞いてほいほい商談に来たらコレである。子離れできない親という物は本当に面倒だと痛感させられた。

「わかった、わかった。勝負はするが俺の出す条件は呑め」
「スン……スン……なんでございましょう?」
「俺はアンタの依頼を受けてアンタの子供と試合するだけだ。どっちが負けようと、試合の結果アンタの子供が何考えようと俺は責任持たない。いいか?」

 ハガネの通告にぱあぁっと顔をあげて明るくする中年男性。どうもこの様子だと他のランカーにはきつく突っぱねられたのだろう、無理もない、ぽっと出の新人の心折ってくださいなどという胡乱な依頼を受ける奇特な者がどれほどいるものか。しかも喜び勇んでそんな依頼を受けるヤツは相手に何をするか分かったものではないので依頼できない、つまりこの中年男性はしかるべくして多少マトモな方のランカーであるハガネに話を持ってきたのであった。

「それで、それでいいです!よろしくお願いします!」
「はい、じゃあこれにサインを」

 承諾する中年男性に仏頂面でタブレット端末を突き出すハガネ。端末の画面上には契約書とその内容が表示されている。

「後から手のひら返されても困るんでな、こんな依頼でも信用第一だ。所帯持ちの社会人なら言うまでもないよな」
「はい!」

 ちゃんと文面を読み込む中年男性から視線を外してドリンクバーから注いだ青汁をかっくらうハガネ。本音を言えば新人狩りなど全くもって好みではないのだが、居候を養わねばならぬ以上受けれる仕事は受けねばならぬ。それに加えてハガネには懸念、というよりも一つの期待があった。

「オッサン、アンタの子供、強いのか」
「……?さあ、私はそういうのは疎いもので。本人は負け無しと豪語しておりましたが……」
「不敗、とな」

 クライアントであるオッサンの答えに内心期待を深めるハガネ。これは存外、強敵が来るかもしれない。ニュービーだろうと強い者は強いのだ。ハガネはオッサンの秘蔵っ子へと思いを馳せるのであった。

【オーバー・ルーズ-1-:終わり:-2-へと続く

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