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【映画「バーフバリ」】 マヘンドラ、お前はお前の火を灯せ



   ずーっと観たかった「バーフバリ」をやっとこさ2作連続で観ました。

   おもしろかった〜〜!!とはなったんだけど、おもしろかった〜〜!!でスッキリとはおわれなくて、正直、かなり、フム…となってしまったのでこの フム… 感は言語化しときたいなとおもったので書きます。
   あかるい感想ではないです。


   めちゃくちゃネタバレしまくってるよ!

http://baahubali-movie.com/sp/


   あらすじとイカしたキャストたちは公式サイトを見てくれよな!



   いきなり全否定かよってとこから入るけど、バーフバリの子供ことマヘンドラのくだり、


   全カットでもよくない?????



   バーフバリの話だけでもよくなかった????
   殺されたはずのバーフバリは実は死んでなくて生きてました! 妻デーヴァセーナを救いだし、腹違いの兄であり暴君として君臨するバラーラデーヴァを倒し、晴れて王になりました!めでたし! でもぜんぜん通用するくない??????


   バーフバリはまじでめちゃくちゃかっこいい、だれしも惚れこむし忠誠に跪きたくなる、戦闘シーンかっこよすぎて笑っちゃったもん。なんだあの布。矢。ずるいだろ。絶対好きになるわあんなん。
   指ではなく首を斬り落とすべきだ!ってまじで首斬ったの最高すぎて声あげて笑ったわ。

   ただ、わたしはどうしても、バーフバリの子マヘンドラをおもうとしんどい。


   当たり前に、あの子はバーフバリじゃない。


   好奇心のために滝をのぼって、惚れた女に凝ったいたずらをして、育ての母さんのために岩を担いだのはマヘンドラであって民衆の中の王であったバーフバリでは絶対にない。

   なのに、バーフバリを知る戦士や民がみんなバーフバリに瓜二つのマヘンドラにかつてのバーフバリを見る。
そこがアツいとこでもあるんだけど、わたしはそれが苦しかった。


   バーフバリは死んだ!!!!もういない!!!!


   って「王の凱旋」の終盤ずっとおもってた。
   なんなら「王の凱旋」って副題にも だからその王ってバーフバリのことでしょ!?!!! この子の名前はマヘンドラ!!!! なんならシヴドゥだよ!!!!!! っておもってた。

   「バーフバリ」の名を生きる者たちの物語でもあるんだろうけど、でもだって全編であんなにガッツリかっこよく描かれてしまうとどうしても バーフバリ=マヘンドラのお父さんのほうの先代バーフバリ になるじゃん……
そもそもポスターも公式サイトもDVDのパッケージだってお父さんのほうじゃん…… マヘンドラだってがんばってたでしょうが……

   とくに、「王の凱旋」の最後の、あの、戴冠式のシーン。

   時を経てようやく「バーフバリ」の名が王になるんだけど、その冠の下のマヘンドラの眼が、すごいギラギラしてんの。

   それを見て、ああ「バーフバリ」がただの王になってしまったんだ…… ってどうしてもおもっちゃったんだよな。


   バーフバリ自身は最高司令官になったときも母から追放を宣言されたときも常に眼差しがしずかでやさしいけどあまくはない鋭さがあって、そういう眼を人々にむけていたから玉座につかない民衆の中の王であって、なのに、あの「バーフバリ」が、こんな燃え盛るような眼で王位に就くかな、って。

   カッタッパの言った「お父上のように考えろ」がもうすべてを現してるような気がして、そうなんだよな、当たり前に、みんなが愛し王と慕ったのはこの子の父親なんだよな。


   みんなが待っていたのは「バーフバリ」の血を継ぐ息子。
   それはマヘンドラに違いないんだけど、でも、じゃあ、マヘンドラ自身の意思はどこにあるの。


   バーフバリは死に様までほんとうにかっこよくて、岩に背を預けて、王の剣に手を置いて、胸を張ったまま死ぬんだよ。死ぬ瞬間まで王。
   それは産まれながらの王子として帝王学の下に育ったゆえの品位なんだよ。

   でもマヘンドラにはそれがない。
   ただバーフバリの血筋で、あまりにバーフバリに瓜二つな、男として産まれてしまっただけ。

   眼には涙ではなく炎を燃やせ、って言葉はマヘンドラにむけられた言葉ではないけど、父の死を知ってから以降のマヘンドラの炎はなんの炎なんだ。
   あれは自分から燃やした炎じゃなくて、焚きつけられた炎じゃないのか。


   好奇心のために滝をのぼって、惚れた女に凝ったいたずらをして、育ての母さんのために岩を担いだあの子は、戦いの炎のなかで燃え盛って死んでしまったんじゃないかとおもうとやるせない気持ちになる。


   バーフバリにも炎はあったけど、民衆や母や妻のそばでは松明とか煮炊きのための火みたいな、やさしくあたたかいものがあったのに。

   死ぬ瞬間ですら、怒りの炎はなかったように見えたのに。

   バラーラデーヴァとマヘンドラが戦うところでも、バラーラデーヴァは「まさかお前が蘇るとは」「この手でようやく殺せる」とかいろいろ喋るんだけど、これに対してマヘンドラはなんにも返さない。黙々と戦ってる。


   だってバーフバリは死んでる。
   この子はマヘンドラ。バーフバリの血を引いていようが、シヴドゥとして育った、バーフバリとはまったくの別人。
   だれと戦ってんだよバラーラデーヴァてめえ、マヘンドラと戦えよ。バーフバリは死んだろうが。
せめてバーフバリの息子として見れよ。


   そんな具合で終盤に近づくほどマヘンドラとしての個が消えていくようで、それがわたしはすごくつらかった。


   だからこれはわたしにとっての救いなんですけど、マヘンドラが王位継承を宣言するラスト、宣言をした瞬間におわるんですよ。


   民衆や兵からの歓声がないの。

   バーフバリのときは文字通り大地を揺るがすほどの喝采があったのに。
   だからあのおわり方にはすこし救われた。わたしはマヘンドラへの喝采を聞きたくなかったから。


   大筋をほぼ否定するようなことばっかり書いたけど、わたしが手放しで好き!って言い切れないだけで「バーフバリ」はまじでめちゃくちゃおもしろいです。
   戦闘シーン気持ちいいくらいかっこいいし、歌うし踊るしインド映画はこれだから最高だな!ってなります。


   ただもし、3作目がでるとしたらだいぶ胃が痛い…… いやでるのか知らんけど…… 喝采を(すくなくとも鑑賞者は)聞かずに王となったマヘンドラがどうなっていくのか……

   マヘンドラ、どうか、どうか、あなたはあなたの王道を生きてくれ。


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