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【即興実験小説】算数のたかし・あきら(15分・496字)

お題:楽しい解散  必須要素:算数のたかし  制限時間:15分  文字数:496字

算数のたかしとあきらは、もう辟易していた。
いつも、欲しくもないりんごとみかんを買ったり、行きたくもない公園や図書館に一定の速度で行くのはこりごりだった。
「6年続いたが、もう俺たちの活動に意味はない。解散しよう」
「賛成。でもファンが悲しまないよう、楽しい解散をしたい」
「いいね」
ファン、というのは全国の何万人もの小学生である。
たかし、あきらは気付いていないが、彼らの自我の芽生えと、彼らが「ファン」と呼ぶ者たちのそれは、同調していた。
つまり、多くの小学六年生はこう思い始めていた。
「算数の教科書に出てくるたかし、あきらっていつも変なことばっかしてない?」。

たかし、あきらによって、最後の活動が組まれた。池の周りを、それぞれ時速8キロメートル、10キロメートルでで追いかけっこするのだ。
ハードだがやりがいのある活動だった。最後にふさわしかった。そして、解散が少しだけ惜しく思われた。

「最後にいい勝負ができてよかったよ」
「次に追いかけっこする時は、俺たちはもう、点Pと点Tだ」
そして、池も無く、味気ない図形の周りをまわるのみとなる。

しかしそれは、彼ら(と彼らの読者である小学六年生)の中二病の芽生えと同調し、歓迎されるべきことに思われた。

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