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「私がたくさん客呼べたのは、私が『若い女の子だから』じゃなくて『私が面白いから』だよ!」 ~20161018 Jet Poetレポ~


言いたいことはたくさんあるのに身体が追いつかない。多分、私がやるべきことは身体の速度を頭に追いつかせること。もちろんもっと頭も良くしたい(考察も深めていきたい)けど、不思議なことに朗読をする(身体の使い方の練習をする)と、紙で文章を書くスピードもあがる。頭と身体の接続が良くなる感じだ。


■客を呼ぶまでが遠足です

10/18は私がゲスト枠で出演する、詩の朗読ライヴだった。

この会は「30分のゲスト枠1名」+「5分のオープンマイク(当日エントリで誰でも参加可能)」で構成されており、5分枠に2回ほど出たことがあったがまさかこんなに早く30分枠をもらえるとは。

それまで朗読の場において、5分のオープンマイクしかやったことの無かった私はとにかく本番をたくさん入れて修行をし(出演が決まった一か月前からこの日まで、6回も人前で詩を読んでいる!!)、それから頑張って集客活動をした。

朗読歴4ヶ月のこんな素人をゲストに抜擢してくれるのはとても嬉しかったが自分のせいで客入りが悪くなったら申し訳ないし、それから、ステージ乗る歴は浅いが観る歴が長い私は、客入りでアクトの良し悪しがかなり変わることを知っていたから「とにかく自分が良いテンションで本番をやりたい」がために集客をした。


■「私がたくさん客呼べたのは、私が『若い女の子だから』じゃなくて『私が面白いから』だよ!」

ふたを開けてみたら20人以上のお客さんが来てくれていた。そのうち、「詩の朗読なんて聞いたことも無い」という詩以外の知人が半分強、「まあオープンマイクもやりたいし渋澤がゲストなら行ってみるか」みたいな感じで来た詩界隈の知り合いが半分弱、という感じだった。私が見たことない顔の人は2,3人しかいなかった。

司会である主催者のおじさんが

「今日はすごいたくさんのお客さんが来てくれてうれしいなあ~たまには若い女の子をゲストにしてみるものですね~」

と言ったので、思わず客席から

「違うよ!! 若い女の子だからじゃなくて、私が面白いから来てくれたんだよ!!」

と嚙みついてしまった。そこらへんのつまんない若い女の子と一緒にするな、である。そして私の客を、若い女の子という理由だけでのこのこ来る顔ファンと一緒にするな、という話である。

まあ、おじさんは軽い冗談のつもりで言ったんだろうし、むしろヒール役やってくれてありがとうという感じである。

が、このいつものおじさんギャグが通用しなかったというこの些細な出来事は、既に今日のこの場の「主催<ゲスト」という下剋上を予感させるに十分な出来事であった。


■「バンドとセックスと詩の朗読はうまい下手じゃねえな」

「今日はやりづらいなあ~いつもはこんなにお客さんいないし、今日は初めての人も多いからな~」と言いまくりつつ、主催のおじさんのオープニングアクトが終わり、私の番。あんまし本番のことは覚えてない。

「え?! 私こんな声出るん?! こんなに抑揚つけちゃうん?!」みたいな感じで、練習との違いに驚きながら自動操縦の私をもう一人の私が幽体離脱して見ていた。詩の世界から抜け出したくないがオープンマイク用に作った詩は5分かそこらで終わってしまうように出来ている。トランスがはじけた後にどう振る舞っていいかわからず、照れ隠しもありいつもの会話のテンションで早口で適当なMCをしてしまった、というのがこちら側の反省だが「平常心でMCしてるのが大物っぽくて良かった」「ギャップが良い」という意見もあり謎だ。もちろん「神秘的な雰囲気が壊れて嫌だった」という意見もあった。

インターネットヤミ市」仕様の、QRコードの服を着たわたし。

「ハンガーにかかってる状態だと読み取れるのに、なぜか着ると読み取れない。でもまあ、人の気持ちなんて読み取れないもんだし、示唆的な意味が出てきて気に入ってるこの服」みたいなことを早口でMCした記憶。

神様の出てくる曲を2曲やり気持ち悪くなってしまったので、最後は神様の出てこない「辞書とバーターの詩集は要らない」をやった。

アンコール的な感じで閉幕前に再度呼ばれたので、その時は「女から借りた金は返さなくていい」を熱唱した。

ライヴ終了後の興奮さめやらぬわたし。

本番後、ボイトレの徳久ウィリアム先生がめちゃめちゃ褒めてくれた。(来てくれるってだけでうれしいのに褒め倒してくれるとは!)

https://www.instagram.com/p/BL0ORnsALwo/

でも私の友人は私よりむしろオープンマイクの様々な出演者を楽しんだ印象もあり、「あーほんと人の好みは千差万別、ステージアクトは技術の上手い下手じゃないなあ」と思った。

と、文系ヴァーチャルビッチ御大もおっしゃっている。


■ハプニングは最強の即興

「こっち側が主催を食った話」として、もうひとつ。

言い忘れたがこの会は「即興の音楽と詩の朗読の宴」という副題がついており、詩を読むとミュージシャンが即興で演奏をつけてくれる。音楽界隈にルーツをもつ主催者ゆかりのミュージシャンがステージ後ろに控えており、

だから、私の知人のひょろっとした青年が登壇し

「あ、僕、音、要らないっす」

といった瞬間は場がヒヤッとした。

場 の 趣 旨 。

しかしおじさんは「普段だったら絶対許さないけど、いいよ、やってみな」と言って彼のリクエストを呑み、音なしでやらせてくれた。

残念ながら彼のアクトは、「音、要りません」といった瞬間の

「こいつ、空気の読めないこじらせ青年だな……」

という印象を塗り替えるものではなかった。おそらく、人前で詩を読むこと自体がほぼ初めてだったであろう彼は、客を見ない、早口、縮こまってうつむいた姿勢など、まるで「僕の詩を聞いてほしくない」というメタメッセージを発しているような態度であり、それで「君に会いたい」的な詩を読むのはまことに矛盾しておりある意味でまあロックだった。

彼が5分のステージを終えて客席に戻りかけた時、おじさんが

「一本だけ、音楽をつけてやってみない?」

と提案した。安堵の溜息と拍手が客席からこぼれる。彼はその提案を受け入れた。

結局、少しだけ他者を受け入れた音つきのパフォーマンスの方が良かった気がするし(いや分からない、下手な朗読は音楽がついた方がサマになる、というだけかもしれない)、私はおじさんの教育的な配慮とステージでオチをつける采配のうまさにも感動した。

しかし、後でほかの人の意見を聞くと

「『音、要りません』が今日イチのパンチラインだった」

「予定調和が崩れる、最高な『演劇的瞬間』だった」

「結局、音楽アリでやっちゃってがっかりした」

等の意見もあった。

ちなみに詩の内容は「中二病ポエムでクソ」なり「悪くはない」なり「良いと思った」なり様々な意見があった。私はそもそも「聞いてほしくない」というメタメッセージを思い切り受信してしまい、聞く気を喪失していた。

後日、彼のツイッターを見たら「詩に詩以外の要素(それこそバックミュージックとか)をつけると詩の強度が下がる」「詩において詩以外の要素に頼るのは甘え」みたいなことを言っていたので、それなら堂々とそれをステージで宣言してほしかったなー。

しかし初回でそれを望むのは無理ゲーだろう、とにかく、ステージに上ることは上らないことより五億倍多くのことを手に入れられるので、彼がステージに上ってくれたこと自体を私は嬉しく思っている。

今日イチのパンチラインかっさらわれて悔しかったわ!!


■私は二番目のパンチラインだった

終演後、主催のおじさんと話した。

「今日もさ、『たまには若い女の子をゲストにしてみるものですね』とか言われた時もさ、『うふふありがとうね~』とか言っていたほうが、お客さんは安心すると思うよ」

と言われた。これはおじさんが傲慢なのではなくて、どちらかというと私の身のふりを心配してアドバイスしてくれたのだが、私は

「その辺に関しては、自分はうまく立ち回れずに随分損してると思ってるが、しかし私は絶対にそんなことは言えない」

と答えた。

この「私が面白いからだよ!」発言に関しては、「ちょっと暴れすぎたかな」と反省もしていたのだが、後日、お客さんから

「格好良かった」

「ロックだった」

「普通はあんなことすぐに言えない」

「『お、今日の渋澤は調子良いんだな』とワクワクした」

などの感想をもらった。

今までの人生で、こういう「若い女の子は得」的なことを言われてもうまく言い返せず、あとから大いにむかつく……というパターンが多かったのだが、今回は反射神経で返せてよかった。やはり朗読をやることで身体が頭に追いつきつつあるのだろう。


■まとめとおさそい

つまり、「ステージは何が起こるか分からず、予想外の事こそ面白い」のだ。

結局、「私がたくさん客呼べたのは、私が『若い女の子だから』じゃなくて『私が面白いから』だよ!」も「音、要らないっす」も、スクリプトに書いてある言葉ではなく、場が生んだ即興だったのだ。


そしてまた、面白いことが起こりそうな本番があります。

2016.11.01(火) 「BARペガサスvol.174 古郡翔馬×安田ボンバーpre.」@高円寺club LINER OPEN16:45 START17:00(渋澤の出番は20時以降です) チャージ¥1,000(drink別) 2D ¥1,000 飲み放題 ¥2,000

ついにライヴハウスに乗ります。弾き語りや音楽メインのイベントで朗読をしてきます。

ずーっとずーっと、音楽に、ライヴハウスに、バンドマンに憧れていた私は、自分がステージに乗るようになってから無駄な憧れが消え去り純粋に音楽だけを聴けるようになり今ライヴハウスで踊るのが超楽しいです。男の影が邪魔なので目を閉じて音を聴く程にバンドマンがどうでもよくなりました。(これはバンドマンが年下になってきたことと、一度バンドマンと付き合ってみたことが関係あるかもしれない。)

というわけでバンドマンとライヴハウスの悪口をバンバン言ったろーと思いますヒューイエア!!

今回はじめて「バック」という制度があり、つまり「渋澤を観に来た」というお客さんがくると私の収入になりますやったー なので来てくれる人はリプライかDMかメール info@rayshibusawa.her.jpで事前に名前を教えてくださいね!

オフライン限定販売の「インターネットであそぼ」も勿論現場で売るよ。200円! 来られない人はリプライかDMかメール info@rayshibusawa.her.jpに住所とお名前を教えてね。通販価格は300円です。

では! これからもインターネットと現場であそぼう!

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