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一言まとめ 太宰治きりぎりすより

太宰治短編集 きりぎりすの各エピソードを一言でまとめてみる。

燈籠

惚れっぽい若い女が医者の息子に恋をし、彼のために海パンを盗むお話

姥捨

心中を図る夫婦がダラダラと旅をするが結局死にきれず、妻が大いびきをかいていたというお話

黄金風景

女中を虐めていたプライドの高いボンボンが、その後落ちぶれて立派になった女中に見下されるお話

畜犬談

極度の犬嫌いの男性が、犬を嫌いすぎるあまり一周回って愛情を持ってしまう感動のどうぶつコメディ

おしゃれ童子

服装に並々ならぬ情熱を注ぐ男児が落ちぶれていくお話
落人の借衣すずしく似合いけり。この柄は、このごろ流行りと借衣言い。
その袖を話せと借衣あわてけり。借衣すれば、人みな借衣に見ゆる哉。

皮膚と心

自己評価の低いとある女性が皮膚病にかかってしまい、世の中のすべてに絶望するが単なる食中毒だった日常小話

鷗(かもめ)

物語を書くとは何か、小説を書くとは何なのか、太宰治がただひたすらに迷い続けるお話
戦争を知らぬ者は戦争を書くな。

善蔵を思う

太宰が地元の同窓会に参加して盛大にやらかすお話

きりぎりす

売れて懐が豊かになった画家。その奥さんからの絶縁状が書かれている。

佐渡

太宰自身?の佐渡への旅を佐渡ヶ島ディスと共に送る旅行話。

千代女

小説の才能があると言われてるけどやる気のない女性が、結局その気になって創作するが、やっぱり才能がないらしいというカオス話

風の便り

ひねくれ作家の38歳とベテラン作家の50歳同士の長い手紙のやり取り。
登場人物自体は架空らしい。ただ、太宰治が入水自殺をしたのが38歳というのも何らかの関係があるのかなあと思う。

水仙

家を飛び出したエリート一家の奥さんが、太宰?に見捨てられて堕落していくお話。

日の出前

どうしようもない不良息子を画家である父親が殺してしまう悲劇。実際にあった事件を元にしたらしい。

終わりに

太宰治の文章は、読んでる側を引き込むような不思議な魅力がある。心情をそのまま殴り書きしたような、心の叫びが飛び交うような情緒表現に読んでいる側は引き込まれる。”きりぎりす”では、太宰本人が登場する話もあれば架空の人物で描かれる話もある。ただ、架空の人物であっても「これ太宰本人じゃね?」と思えるような叫びにも思えてくる。それほどまでに、内面にうずまく感情の叩きつけ方がすさまじい。
作中に「私小説」は自分の周囲の事を書いているとあったが、”きりぎりす”のエピソードそれぞれが太宰自身の経験してきた日常に基づいているんじゃないだろうか。
本記事のように各エピソードは、私のような凡人が一言でまとめようと思えばまとめられる。それぞれ特段変わった設定やファンタジーがあるわけでもない。でもそんな出来事ひとつひとつを情緒やユーモアを交えながら読む側を引きつける文章とする。そこが太宰治の、”きりぎりす”の不思議な魅力なのかもしれない。

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