『ヒラク、この日いないってよ』イベントレポート その3(ラスト)

・任せるところ、自分でやるところ、その明快さ。
・ヒラクはどうしていい写真が撮れるのか?
・発酵をブームではなくムーブメントに。

 そんな話題でさらに盛り上がりをみせたトークレポート「その2」。いよいよ今回がラストになります。最後の最後には、堀口さんが『日本発酵紀行』の装釘に仕掛けたある秘密も。どうぞ最後までお楽しみくださいー。

竹内 こうやって大変ななかで本を作ってますけど、「本を作る」っていつまでありますかね?
堀口 今回の本作ってるときに竹内くんが「夢見たんです」って言ったの覚えてる?
竹内 なんの話ですか?
堀口 共通の知り合いの編集者が竹内くんの夢に出てきて「いつまで本作ってるんですか? 時代遅れです」みたいなことを言われたって。それ聞いてなんかめっちゃ考えた。俺はもう歳やから、このまま本作ろうって思えるけど、20代の子って本作ろうって思うのかなって。
藤本 若い編集者とかは逆に本作りたがってるじゃないですか。基本がウェブメディアだから。
竹内 本じゃないと届かないところがあるのは今の時点で間違いないんだけど、少し手間が長くないかなと思って。海外のフェスの中継とか見てたときに、生中継やなのにめちゃめちゃすごいクオリティで。映像とかがね。その即時性でやってるもののレベルの高さに対して、本もレベルは負けてないんだけど、遅い。時間かかるかなってちょっと思ってしまったんですよね。
藤本 電子書籍が出てきたときに、夢持ったじゃないですか。一瞬。
竹内 僕らはね。
藤本 持ったけど、結局あれも既存の出版社が流通を牛耳ってしまってるじゃないですか。だから変わってないんです。まず印刷物できた後に電子書籍版が出るみたいなことばっかりだし。ほんとはそのまま電子書籍で出せたら、堀口さんに最初に渡した初稿の4万字がそのまま本になって、その瞬間買うやつがおったりとか、そういこともできるわけでしょ、究極。本としてはだんだん整理されちゃうんやけど、その過程で買う人とかもいたりするとか。そういうデジタルの進歩から生まれる新しい隙間みたいなところを出版業界はいまだに開国させない感じ、鎖国してる感じがある。
竹内 冒頭に戻るけど、2月の時点で原稿ゼロで、3月でやっと原稿きだして4月に入稿したんですけど、ギリギリやんって言ってたけど、実はほんまはそれくらいのほうがいいんとちゃうかなって思って。
藤本 やろ?
竹内 同時進行してた本って一年前からやってて。
藤本 やろ? それテンション下がるやん。
竹内 いやまあ、仕事やから下がらんけど。
藤本 うそー、すごいな。
竹内 まあ、そういうのがある一方で、発酵の良さってなったときに発酵ってすごい時間のかかるものじゃないですか。クイックにやることじゃなくて時間かけて、なんなら1年に1回しかそのチャンスはこなくてっていうことを、人生をかけてやるからこそ、尊いものになるっていうのが実際あって。なんでもクイックにすればいいと思ってるわけじゃないけど、ものによってはもっとスムーズにされてもいい。その選択肢があんまりないかなと。本っていう形でいいけど、1週間2週間で作る本があってもいいし、1年かけて作る本があってもいいけど、そこの幅があんまりないのかなって思った。
藤本 紙とデジタルメディアみたいなものの距離が遠すぎるかもね。もうちょっと近づいてもいいかもしれない。いま近づいてるのって入稿作業くらいじゃないですか。
竹内 そうやね。以前、藤本さんと堀口さんのイベントで、その場で作るみたいなことをやったことあるんでしょ?
藤本 ライブエディティングやりましたね。
竹内 10年くらい前でしたよね。どういうものでしたっけ?
堀口 一番最初はフェリシモのイベントで大失敗したやつ。
藤本 機械トラブルでね。おもろかったですけどね。
堀口 車にマック乗せて行ったら、ガタガタ揺れて会場着いたらマック潰れてた。
竹内 入り口のミスやん。
堀口 プロジェクタでリアルタイムにデザイン作業が映し出されてるんやけど、だんだん保存できなくなって。
竹内 何をライブエディティングしてたの?
藤本 お客さんがいて、その場でインタビューしたり、書いたり。イラストレーターもカメラマンもいて。
堀口 その場で話聞いてイラスト書いて、写真とって、デザインして。
竹内 かっこええやないか。
藤本 そしたら堀口さんがだんだん汗かいてきたんですよ。
堀口 保存できないから、つくりっぱで、そのまま印刷までしないとダメとになって、仕方ないかと思ったら今度は保存どころか動かなくなった。
竹内 いっとき、壁新聞ワークショップっていって、その日中に取材して、その日中に出力するっていうのを藤本さんやってたじゃないですか。ああいうのってもう少し掘ったほうがいいっていうか。その場で形にするっていうことを試していくっていう必要があるんじゃないかなと。
藤本 僕らってもう45じゃないですか。堀口さんは49でしょ。竹内くんは43? 財部くんはいくつ?
財部 40です。
藤本 財部くんも40?! とにかくもうこの歳になってくると「一回やった」って思いがち。
竹内 「あ〜、それ俺やったわ!」みたいなね。
藤本 そんなおっさん一番腹たつじゃないですか。僕らも言われてきたやん。だから下手するとそういうのになりかねない。だから一回やったことでも、もう一回やったほうがいいこといっぱいあるよね。
竹内 藤本くんがずっとフリーペーパー作ってたこともそうだし、次のステージに行くっていうのももちろんだけど、一回やってきたこと、一回戻っていまだからできることってもっとあって、それがフリーペーパーだったりライブエディティングだったりするのかもしれないですね。壁新聞っていうのはまた粋だと思うし。
藤本 そうやね。意外といいよね。壁新聞まだやりきれてないもんね。
竹内 壁新聞はまだチャンスあると思う。この会場に壁新聞がもっとあってもいいわけだし。
藤本 ちょうど吉本興業が100周年になるっていうときで、社長とランチご一緒してたら「大阪に恩返ししたい」って言いはって。協力してあげたいなと思って渡した企画書が壁新聞やったんですね。気づけば世知辛い世の中になってて、でも本来大阪の街ってもっとゆるかったじゃないですか。おおらかさみたいなものが消えてるなと思ったので、おおからかな記事しか載ってない壁新聞をつくりましょうよって作ったのが「おおらかべ新聞」っていうやつで。
竹内 それを大阪市内300箇所くらい、銭湯とかに貼ってもらって。
藤本 ああいうのもそもそもは病院の待合室とかに、真っ黒な肺みたいな強めのポスターいっぱい貼ってあるやん。病院くるだけで不安やなのに、なに追い込んでくんねんみたいな。
竹内 暗ーい写真な。
藤本 そういうところこそ、おもろいやつ貼っといてくれって思って、そんな風に使われたらいいなっていうのも、確かにやりきれてないもんなー。
竹内 そうやねん。実際まだ壁って空いてるんですよね。商店街にしても病院にしても。壁に貼ってあるのって割とぞんざいなポスターなことがまだまだ多くて。そこにちゃんとしてメディアが入るっていうのは粋ですよね。
藤本 ああいうときに、あかんかったかなと思うのが、やっぱり吉本さんやからすぐ電通さんとか入ってきはるやん。それでファミマ全店に貼りましょうとか言われたやん。そういうの俺ら引くやん。それがやっぱあかんかった。
竹内 せやねん。あれ受けとくべきやった。
藤本 そういうの嫌ですって空気出してまうねん。
竹内 それで余計に流通が大変になって、俺ら手作業になって。毎週配りに行くっていう、どっちに頑張ればいいのかわからんくなってきて。そこが任せるっていうことやね。
藤本 ヒラクやったらもっとうまいことやってるやろなあ。
竹内 そうやねん!

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藤本智士(Re:S)

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Re:S note(りすノート)

2006年に創刊した雑誌「Re:S(りす)」編集長の藤本智士が、いまあらためてお届けする、あたらしい“ふつう”のnote「Re:S」。 日々のこと。旅のこと。地方のこと。編集のこと。 記事アップは月4回以上かなぁ。
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