観ることから始まる
観えているようで実はちゃんと観えていない。
世の中のことも、人の振舞いも、そして自分自身も。
ではそうした観察する力はどのように身に付けることができるのか。そしてそもそも観察するという行為とはどのようなものなのか。
「観察力の鍛え方」(佐渡嶋康平 著)にはそのヒントがたくさん詰まっている。
佐渡嶋氏は、「宇宙兄弟」や「マチネの終わり」などのヒット作を続々と生み出してきたトップクリエイターの一人。
帯に魅かれて衝動買いしてしまったところもあるが、単なるノウハウ本とは一線を画した内容の濃さだった。
観察(インプット)の質と量を高めていくことで、我々がアウトプットするものの質も圧倒的に高めていくことができる。
著者が紹介する観察力のフローは、
①まず仮説を持つこと
②その上で観察すること
③自分の立てた仮説と観察結果の間のズレに気づき、問いを立てること
といったものだ。
ただ、良い観察を行うためには、それを阻害する3つの要素に意識しなくてはならないという。
①は、本来はそこにあるはずのものなのに、自分の中にある固定観念や思い込みから、観えなくなってしまっている状態のこと。(例:これまでもあの人は失敗していた。だから今回もきっと失敗するに違いない。本当は彼は優秀で成功する確率があるにも関わらず、そのような評価をしてしまう等)
②は、疲れていたり、怒りや喜びの感情をもっていたりする場合、観察の状態に大きな影響を与えてしまう可能性がある。この可能性に気づくことで、観察の仕方を良い方向に変えることもできる。
③は①に似ているところもあるが、観察対象をある特定の文脈に置いた時に、見え方が違ってくるということ。場所と時間が違えば、同じ対象物だったとしても全く違う意味を持ってしまう、ということはよくある話。
なので、我々の余計なフィルター(バイアス)を外すことから始めなくてはならない、と著者はいう。
物事をあるがままに見る力。
これはアリストテレスがいう観照(テオーリア)という考え方にも近いかもしれない。
本書の後半では、「何かをすること(Do)」よりも、「あるがままにあること(Be)」に意識を向けた方が良い、といった話が展開される。
これはつまるところ、「どのように生きるのか」という人生観にも繋がってくる話だ。
まさに、観る力を鍛えることは、良い人生を生きていく上でかけがえのない力なのだろううと思う。
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