放課後編集室 酒と読書

読むことをもっと楽しく!本とお酒が大好きな編集者が集まりました。本に関すること、お酒に…

放課後編集室 酒と読書

読むことをもっと楽しく!本とお酒が大好きな編集者が集まりました。本に関すること、お酒に関すること、仕事に関することを発信してまいります。

最近の記事

「謝ったら死ぬ病」って民主主義の敵?ー東浩紀さん『訂正する力』を読んで

仕事でもプライベートでも、「あ、この人謝れない人なんだ」って思わせる人、たまにいませんか? 最近、気持ちのいい言葉ではないですけど、「謝ったら死ぬ病」ってよくききます。ちょっと謝罪して軌道修正すればいいのに、それができない。あくまでも「自分は間違ってない」「わかっていたけど、たまたまできなかった」…などなど。いろいろ理由をつけて謝らない。そういう人、みなさんの周りにもいないでしょうか。 少し世間を見渡せば、身のまわりに限ったことでもなさそうです。たとえば政治の世界や言論の世

    • ゆる言語学ラジオとKERと、ちょっとだけ編集業の話

      ここ1週間ほど、ゆる言語学ラジオにハマっています。 そもそもは、私、Kevin's English Room(以下KER)が大好きでして…。 ご存知でしょうか、チャンネル登録者数200万人超えの英語系YouTuber。 英語や、アメリカ文化と日本文化の比較などをネタに、アメリカ育ち帰国子女のケビンと、英語話せるフランス留学経験者やまちゃん、自称普通の日本人かけちゃんがくりひろげる悲喜こもごも。 ちょうど1年ほど前に、たまたまこちらの動画がおすすめに出てきたのをきっかけにどハ

      • 終末の世界で劇的なことが起こらない――ネヴィル・シュート『渚にて:人類最後の日』

        ネヴィル・シュートの『渚にて』をもってして、「劇的なことが起こらない」と表現するのは間違っている気もしますが、でも想定していたよりは本当に何も起こらなかった……。 でも何かが起こること、劇的なストーリーが展開されることを、全ての小説に期待する必要なんて、そもそも別になくないか? という話をつらつらとします。 『渚にて:人類最後の日』は、核戦争後の世界を描いた、終末SFの傑作です。 ――です。というか、その評は知っていたので、SF読みとしてはいつか読まねばと思っていた作品。

        • 『項羽と劉邦』を読んだら、『キングダム』すごくない?ってなっちゃった話―たまには気合を入れて超・長編を読破してみよう②

          前回は「たまには超・長編を読んでみよう」ということで、こんな記事を書きました。 今回は、読破しましたので、いよいよ感想篇をお送りしていきたいと思います! さて、めっちゃいきなりなんですが、みなさんは「秦の始皇帝」と聞くと、どんなイメージを持ちますか? よく知らない →わかります、しかたないですよね なんかすごいけど怖い人 →わかります、僕がこれでした 中国大陸史上初の統一王朝を築き、戦国の世を終わりへと導いた人物 →わかります、もしかして「アレ」読んでますよね?

        「謝ったら死ぬ病」って民主主義の敵?ー東浩紀さん『訂正する力』を読んで

          たまには気合を入れて超・長編を読破してみようー今回は『項羽と劉邦』

          ちょっとこのnoteさぼり気味になってしまいました。 先週は、こちらの記事↓↓をあげていますが、僕は3週間くらいお休みしてしまっていました。 しかし!ちゃんと理由(=いいわけ)があるのです。 実は、時折無性に超・長編(定義:文庫版で3巻以上)の小説を読みたくなってしまう時がありまして……。そうなると「書く」というアウトプットをする余裕がなくなってしまうんですよね。というわけで、こちらのnoteが滞ってしまったのです。 はい、完全ないいわけでした。笑 ところで、最近「これ

          たまには気合を入れて超・長編を読破してみようー今回は『項羽と劉邦』

          レイ・ブラッドベリと萩尾望都の『ウは宇宙船のウ』の話

          唐突ですが、SFってタイトルがいいですよね。 『たったひとつの冴えたやりかた』 『幼年期の終り』 『アルジャーノンに花束を』 もちろん『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 ――いろいろある中で、『ウは宇宙船のウ』もかなり好きなんです。 最近界隈で話題の『ウは宇宙ヤバいのウ!』もこのオマージュですからね!! (ちなみに原題は"R is for Rocket"。「ロはロケットのロ」じゃなくて「ウは宇宙船のウ」という翻訳の妙もね…ありますよね…) でも、あれ、私よく考えるとレイ

          レイ・ブラッドベリと萩尾望都の『ウは宇宙船のウ』の話

          「演じること」の匿名性についてー宮部みゆきさん『R.P.G』を読んで

          今日、紹介したいのは、宮部みゆきさんの『R.P.G』です(夏の文庫フェア限定のカバーがかわいい)。宮部さんは言わずもがな、日本ミステリー界のトップランナーなわけですが、その作品の魅力のひとつに随所に散りばめられた時代への鋭い洞察があると思います。 『R.P.G』は、ある2つの殺人事件の解決をめぐり、事件の背後にあったインターネット上のコミュニティの歪な人間関係を紐解いていく物語です。 舞台は90年代。インターネット黎明期と言われた時代です。登場人物のほとんどが携帯電話すら

          「演じること」の匿名性についてー宮部みゆきさん『R.P.G』を読んで

          出版社は「マスメディア」なのか問題ー島田潤一郎さん『あしたから出版社』を読んで

          島田潤一郎さんの『あしたから出版社』を読みました。ほとんど出版社勤務の経験もなければ、編集の経験もなかった島田さんが、ある詩を出版するためにひとりで「夏葉社」という出版社を立ち上げ、現在に至るまでのことが書かれたエッセイです。 島田さんはたくさん示唆に富んだことをおっしゃっているのですけれど、今回はその中のある一節から、出版社のお仕事について考えてみたいと思います。 堅苦しく紐解くと(僕は堅苦しく紐解くのが好きなのです)、マスメディアとは、マス(=一般大衆)のためのメディ

          出版社は「マスメディア」なのか問題ー島田潤一郎さん『あしたから出版社』を読んで

          児玉雨子『##NAME##』とハロプロとアイドルの名前の話

          突然ですが、私は俗に言うハロヲタ(※)です。(※モーニング娘。'23などが所属するハロー!プロジェクトをこよなく愛する紳士淑女の総称) 私の観測しうる範囲のハロヲタが、近年圧倒的な信頼を寄せている作詞家が、児玉雨子さん。 惜しくも受賞は逃しましたが、第169回芥川賞にノミネートされた、小説家としても大注目の書き手です。 こういう場ですからさん付けをしてますけれども……ヲタク仲間では「雨子は神」「新曲、作詞雨子じゃん。勝った」とか、大体呼び捨てです、親しみの表現として。すみま

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          『リボルバー・リリー』を地理オタクが読んだら、ほぼ「ブラタモリ」になっていた

          なんだかんだ映像化されると、その作品の原作は読んでみたくなってしまうものです。というわけで今、めっちゃCMで放映されている『リボルバー・リリー』の原作小説を読みました。 舞台は戦間期の日本。世間的にもきな臭くなってきた時代。主人公は、ある事件をきっかけに陸軍から狙われる身となった少年と、その少年を守ることになったかつて殺し屋だった美女…。 これだけ書くと、もしかすると東洋・西洋問わず使いふるされた設定と思われるかもしれませんが、全編にわたって描かれるスリル溢れる攻防が読者

          『リボルバー・リリー』を地理オタクが読んだら、ほぼ「ブラタモリ」になっていた

          出版社が「売れる本」と言うときに感じる、僕の違和感について―編集者のひとりごと(仮)

          「売れる本」は誰が売るのか?先日の記事で、「売れる本」という言葉に違和感を覚えるという話を書きました。前回は中途半端なところで終えてしまったので、今回はもう一歩踏み込んで、この違和感について考えたいと思います。 「売れる本」という言葉について、僕はそこに主語が存在していないということを書きました。本が自然に売れているような印象を受けると。 実際、日本の出版流通の仕組みにおいて、本は自然に売れるものでした。「でした」と書いたのは、それが今ではほぼ通用しないからです。かつては

          出版社が「売れる本」と言うときに感じる、僕の違和感について―編集者のひとりごと(仮)

          貴志祐介『新世界より』と攻撃抑制とホーガンの優しい巨人の話

          私はSF読みなのですが、先日Twitter(とはもう呼ばないということを未だに受け入れられていません)でバズっていたこちらのランキングで、トップ10の中に読んでいないものが3作…。 読まなきゃなあということで、ひとまず貴志祐介さんの『新世界より』から手を伸ばしました。 いやあ、駆け抜けましたよ。あっという間に読みました。 上巻は1日で読んだし、上中下巻合わせても5日くらいで読み終わったというのは、大して読むのが速くない私としては、かなりの爆速。 こんなにかじりついて駆け抜

          貴志祐介『新世界より』と攻撃抑制とホーガンの優しい巨人の話

          「本」がなぜ、商材としておもしろくてたまらないのかを熱弁してみる―編集者のひとりごと(仮)

          出版社にとって「ヒット」は生命線「本」という商材は、つくづく水物だなと思います。 その時々の流行や話題性に売れ行きは左右されるし、一時的なヒットなのかロングヒットになるのかも、売ってみないとわからない。しかも、毎日ありとあらゆる出版社が新刊を書店に配本しているので、売り場の回転も早い。売れ行きの鈍い本はあっという間に次の新刊に取って替わられます。 本の利益構造について、今回は詳細に説明するのは避けますが、一度人気に火のついた本は、出版社にとっては莫大と言える利益をもたらしま

          「本」がなぜ、商材としておもしろくてたまらないのかを熱弁してみる―編集者のひとりごと(仮)

          出版社は「本を作る会社」なのか問題―編集者のひとりごと(仮)

          「本を作る」ってなんだ?僕は出版社に入社してもうすぐ丸10年になりますが、就職活動をしていた当時、出版社のお仕事について、正直よくわかっていませんでした。なんとなく、編集者という「本を作る」人がいて、書店で売られる本を作っている会社―その程度の理解でした。 ところが実際に出版社に入ってみると、出版社には様々な部署の方がいます。「編集」はもちろん、「営業」「宣伝」といった他の業種にも存在しそうな部門、会社には不可欠な「人事」「経理」、ちょっと特殊な部門は「製作」―これは他のメ

          出版社は「本を作る会社」なのか問題―編集者のひとりごと(仮)

          「あまちゃん」と僕と資本主義―大澤真幸さん『資本主義の<その先>へ』を読んで

          今、NHKのBS放送で「あまちゃん」やってますよね。リアルタイムで放送していたときは、まだ僕は大学生で、朝ドラ見放題な身分だったので、当然リアルタイムで見てました。でも、今改めて見ると、当時3周(盛ってない)は見たはずなのに、やっぱり超おもしろいんですよね。何がおもしろいかを書き始めると、それだけでマガジンになっちゃいそうなので、割愛しますけど。笑 どうして、いきなり「あまちゃん」の話を書き始めたかというと、大澤真幸さんの『資本主義の<その先>へ』を読んでいて、「あまちゃん

          「あまちゃん」と僕と資本主義―大澤真幸さん『資本主義の<その先>へ』を読んで

          映画『ドライブ・マイ・カー』と村上春樹の文体の話

          すごく今さらなのだが、映画『ドライブ・マイ・カー』を観た。 この映画ではチェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』が象徴的に使われていることは、公開当時から話題になっていたと思うが、実際に観てみると本当に想像以上にずっと『ワーニャ伯父さん』だった。 (『ワーニャ伯父さん』は未読、未鑑賞なので読まなければと思っている) 舞台演出家であり俳優でもある家福(かふく、と読む。これが西島秀俊)が、演劇祭で『ワーニャ伯父さん』を上演する。そのオーディションから稽古を経て本番へ、というのが、

          映画『ドライブ・マイ・カー』と村上春樹の文体の話