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アラフォー独女が人生見つめ直す話〜3話

ーー楓ちゃんに圧倒的に足りないのは「青春」だよねーー

大学に入った私はたくさんの「新しいモノ」に触れることになる。
ちょっとしたものから人生変わるものまで。

大学の4年間はひたすら勉強とクラブ活動の日々だった。
一般的な大学とは違って、最終目標は国家試験合格。
合格率を上げることが大学のステータス。
出欠確認は非常に厳しく、代返がきく授業は1年次のごく一部のみ。
定期的な試験の過去問は何かしらクラブに所属していないと入手しづらい、という情報もあり友達作りも兼ねて私は吹奏楽部に入った。
今までの人生でピアノくらいしかやったこと無かったけど、他に出来そうな部活もなかったから。
でもそこで出会った仲間は、これまでの窮屈な人間関係を一蹴して笑い飛ばしてくれるくらい楽しくて頼もしいメンバーだった。

入部数日後、トロンボーン吹きの子にさらっと言われた一言。
「なんで顔隠してんの?」
ハッとした。
キモいから笑うなと言われてから、もう無自覚で口元を手で覆っていた。
もう完全に無意識だったから、言われて気付いてびっくりした(笑)
高校の時は誰も気に留めてなかったこと。指摘されたこともなかったこと。
一瞬、何でだっけ?と自分でも分からなくなっていたくらい自然にやっていたこと。
1つの呪縛から解放された瞬間だった。
もう笑って良いのか〜って。

そこからの4年間は必死だった。
クラブの備品で余っていたのがサックスで、他の楽器はみんな満遍なくいるし、試し吹きで音も出るし良いよねってなってサックス吹きになったけど。
周りは皆経験者だし、1人だけ初心者で上手くなるにはひたすら練習するしかなくて。
授業出て、自習もして、空き時間に練習して、放課後の合奏参加して。
大変だったけど、辛いことも沢山あったけど、人生で一番充実していたのかもしれない。
多分この時が一番青春していたと思う。色恋沙汰を抜きにして。

学業の方も一筋縄ではいかなかった。
生活費の仕送りに加えて、入学金と1年目の学費まではなんとか出してくれていたが、その頃に父の勤めていた会社が実質倒産した。
正確に言うと、父を含めた従業員がもうやってられんってなって離散した感じ。
なので収入が一気に減ってしまった。
そもそも凄く裕福という訳ではなかったし、大学は私立だし、学費分は最初から奨学金でも良いと伝えていたものの、親としては全部出してあげたいという思いが強く、1年目は私が折れて甘える形になっていた。
それでも父の収入が減ったということで、流石の母も今無理をするべきではないと思ったのか、2年目からは奨学金を借りることを許してくれた。

奨学金は2種類借りた。そのうち1つは大学の制度の無利子のやつ。
条件は親の年収下限と本人の成績維持。
1学年230名中120番以内をキープすること。
ここが確実にストレートで進級・卒業できて国試も合格が見込めるレベル。
だから残りの3年間は、とにかく順位を落とさないことに必死だった。
多分後にも先にもこんなに必死で勉強することはないだろうと思うくらい。
でもこれが無かったら、私はひょっとしたら途中で挫折していたかもしれない。
それくらい勉強へのコミットは限界を超えていた。

学力そのものよりも、体調不良の方が辛くて出席日数で単位を落としそうになったくらい大学4年間は一番体が弱っていたかもしれない。
季節の変わり目は必ず発熱。
生理痛も酷く鎮痛剤常用。
お腹も腹痛・下痢や便秘を繰り返す日々。
今振り返るとよく生きてたなぁと思う。
なんとか這って行って、出席とったらそのまま机に突っ伏して寝て過ごす日も何日もあったし。
本当に先生ごめんと何度も思ってた。
そして周りのフォローしてくれた友達には感謝しかないよね。


ーー女子に生まれたなら、女子として生きることも楽しんだ方が良いよーー

後々振り返ってみると、生理痛・月経困難って単に身体の問題だけじゃないというのが分かる。
体そのものの器質的な問題よりも、食事・睡眠などの生活習慣よりも、ストレスや精神的な問題の方が圧倒的に影響されている。
体つきはしっかり女性らしくなっていくのに、心の奥底で燻っていた「男の子だったらもっと愛されていたのだろうか?」という子供の頃の思い込みとの葛藤が、月経困難という身体的苦痛になってSOSを発していたんだと思う。
当時は全然分からなかったけど、体は悲鳴をあげていた。
さらに言うなら、心の底から薬剤師になりたかったか?と問われると疑問が残る。
そんな状態だったから心が崩壊する前に、それを食い止めようとSOSを出してくれていたんだと思う。

性に関しては葛藤を抱えてはいたけど、私自身はそこまでジェンダーギャップのようなものは無かった。
無かったんだけど、色々な事が重なって子供の頃から「男性不信」だった。
襲われたり殺されそうになる夢は何度もみていたし、そもそも人間不信みたいなところもあったんだと思う。
大学4年の後半で、初めて男性とお付き合いすることになった。
お互い卒業後の進路も決めてしまっていたので、遠距離恋愛になるのもわかっていた。
それでもお付き合いを始めて、結果としては1年半程付き合ってお別れした。
理由は色々あるけれど、結局根本は私が男女の肉体関係を受け入れきれていなかった事が一番大きいと思う。そしてそれを彼に本音で話せなかった。
若気のいたり…だと思うことにしてる笑
(肉体関係嫌すぎて仕事に逃げた結果、俺と仕事どっちが大事なの!と言わせてしまった…)

これも結局、私は女性である、女性として生きる・幸せになる、ということを自分自身に許可できていなかったから。
これも当然ながら、その当時は全く考えもしていなかった。
恋愛もストレス。
仕事も壮絶なストレスで仕事うつ真っ只中。
20代はずっとそんな感じで、子供の頃に作られた「神話」という名の思い込みと、大人になれなかった社会不適合な性格でストレスMAXなどん底人生を歩んでいた。

そして最大の思い込みは、
「あんたは一人っ子だから。いつかは独りになるんだから。独りで生きていけるようにならなきゃ。手に職つけて、食べていけるようにならなきゃ」
母に言われ続けた言葉だ。
私は誰にも頼らずに独りで生きていかなきゃいけないんだ、と歪んだ呪いになってしまった。


ーー私なんかが女の子の世界に憧れても良いんでしょうかね?ーー

全然良いでしょ。まずは見た目から、女子を磨いて。
変わると決めた女は強いで!

そんな風にLさんから言われたのは、つい最近のこと。
20代の時よりは遥かにストレスは減って、精神的にも大人になったし、子供の頃の思い込みは勘違いだって頭ではわかってきたはずだったのに。
まだ、こんな一言で涙が出た。
あぁ、女の子で良いんだぁ。
着飾って、可愛くなって、そんな風に努力をしても良いんだ、と。
自分にOKを出せたみたいで嬉しかった。


ーー続くーー

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