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僕らは26キロの道のりに、人生を見た。

 今年の1月2日(日)に実施した、相模湖〜ほったらかし温泉(山梨)までの約63キロのチャレンジでは、30キロ地点の大月のセブンイレブンでリタイア。極寒という環境下と、アホみたいな下肢への負荷によって足がなくなってしまった事が原因だった。

 そして、同年の8/12(金)。性懲りも無く、今年は「街並みを見ながらの60キロより、全く景色の変わらない60キロを歩き続けられる奴の方が強いに決まってる」という、アホみたいなアイデアで、地元の横山公園の200mのコースを300周するチャレンジを実行。

 結果は、皆様の期待通り26キロ地点でのリタイアという結果で終わった。表向きには「雷がなってきて危ないので」と言っていたが、今回は僕の右のふくらはぎの絶叫が止まなかった事と、一緒に歩いたパートナーの玉袋が、歩行の摩擦によって絶叫していた事が原因だった。今回のチャレンジには「ウォーキングデッド」という名前を付けていたが、文字通り僕たちは「ウォーカー」となったのだった。

 結果の良し悪しにコミットするよりも、このチャレンジから何を学ぶかに重きを置いたものであった為、ふくらはぎの痛みが止む前に、今回のチャレンジを振り返る事にする。

足跡に残る優越感と期待感の香り

 開始から10キロ地点までの足取りは、とても軽い。これは前回の温泉サバイバルウォークでも経験済みだったが、今回もそれを裏切らなかった。パートナーから、見ていなかった全スターウォーズシリーズのあらすじを教えてもらったり、足取りも会話も弾みに弾んでいた。僕らの歩いた足跡には、公園にいる2歳児よりも楽しんでいるという優越感と、徒破した後の達成感への期待感の香りが残っていただろう。

変わらない景色と青い芝生

 10キロを超えた辺りから、身に覚えのある痛みが股関節とふくらはぎを中心に順番待ちしている。これも既に経験済みであって、必ずやってくる「アイツ(痛み)」の再訪に身構えた。
 昼を過ぎた頃、公園も最も活気に満ち溢れ、親子で遊ぶ姿や、テニスを楽しむシニア世代の方々の笑顔。初めはそんな姿にも、優しい眼差しを送っていた僕たちであったが、段々と足跡には優越感と期待感の香りはなくなり、いつしかそんな人たちが羨ましく思えてきていた。(お前らが勝手に企画したんだろ)

痛みと自分との拮抗戦。

 20キロを過ぎると、周囲の活気には目をくれず、僕らは必死に痛みと対峙していた。一歩踏み出すごとに漏れなく訪れる激痛に、なんとか歩みを続けられる爪先の角度や、体勢を模索し続ける。そしてそんな時にあるもう一つの敵の気配を感じていた。それは、僕らがこの企画の最大の敵として選んだ「変わらぬ景色」であった。それは100周を終えた頃であり、100回見ていた景色のダメージは、驚くほど小さいが、それでも確実に僕らの精神を試した。激痛をも忘れさせてくれるような、外的な変化はそこには存在せず、そこには数時間前と変わらぬ200mコースしか存在しない。いつ辞めてもいい、そんな条件も相まって、僕らは激痛と変わらぬ景色との闘いを続けた。

変わらぬ景色に起きた、少しの変化。

 25キロを超えた頃、もう痛くなかった頃の僕らの下肢を思い出せない程であったが、200mコースに起きていた小さな変化に気付く。それは、「人が居なくなっている」事だった。日も沈みかけ、雨も少し降り出したからなのか、僕らの視界から、テニスコートで試合を続ける若者を除き、人の姿が消えていた。痛みと、変わらぬ景色と必死に対峙していた数時間であった為、活気付いていた公園が、静まりかえっていることにすら気づいていなかったのだ。

僕らは26キロの道のりに、人生を見た。

 約9時間30分の闘いを終えた僕たちは、帰路につき、温かいご飯を食べ、ソファに深く腰掛けた。痛みと一緒に残っていたのは、何とも表現しきれない幸福感であった。その理由を紐解いて行った先に、僕は「人生」を見た。

 新しい事を始める時というのは、思いつきと、少しの勇気であり、そんな動機で始めた物事は、何やっても初めは楽しい事ばかり。しかし、やるにつれ上手くできない事に出会い、時には痛みも伴う。近くにいる存在と比較して、時には憂鬱になる事もある。そこで、目の前の問題と面と向かって向き合った時、僕らは他人との比較を手放す事ができ、いつの間にか僕らの前には誰も走っていない。

 僕らは、26キロの道のりから、人生で大切な事を学んだ。結局、「辞めない奴が、1番手強い」という事だ。誰もやったことの無い事に挑戦する事よりも、どんな形であれ、例えそれが不器用で、不細工であっても、「辞めない事」が大切なんだ。一歩一歩は、今日の僕らのように小さくても、歩みを止めない先には、何とも言えない幸福感が待っている。そんな大切な事に気付かされた26キロでした。

追伸

26キロでリタイアした直後に、大雨と雷がすごかったよ。時には「無理せず辞める」事も、大切かもね。

 

「最後まで読んでくれた」その事実だけで十分です。 また、是非覗きに来てくださいね。 ありがとうございます。