見出し画像

脳卒中リハビリで患者の改善が乏しい理由:低栄養が原因では?

こんにちは。
公衆衛生学の知識を使って、健康的な社会を作りたい理学療法士のジローです。普段は、脳卒中のリハビリ現場に居ます。

本日は、私の過去の研究テーマでもあった、脳卒中と低栄養について記事にしました。

低栄養を有す患者では、思うようにトレーニングができない、加えてトレーニングの効果も出にくいということで、以前から着目していました。
私自身も院内データから、リハビリテーションのアウトカムが不良であることを確認しています。

過去には、先日紹介したナイチンゲール先生も、病院内での不適切な栄養管理が、患者を主な病気・怪我とは他の理由で死に至らしめるとしています。

近年では、特に高齢者医療において、入院前からの痩せ(フレイルの状態)、入院後の環境変化に伴う食思不信、不適切な栄養管理などで注目されています。


さて、低栄養とはどのような状態なのでしょうか?
低体重、低BMIとどのような違いがあるのでしょうか?
*いつも、この話になると、痩せ痩せのおばあさんでも、外をスタスタ歩いている!と言われてしまいます。

患者さんの観察では、主に食べ物をどれだけ食べているかに着目しがちです。
いくら量を摂取していても、下痢で食べても吸収されず出てしまう問題や、消化器の切除術などで特定の栄養素が吸収しにくい(できない)問題も含みます。

また、急性炎症を認める状態では、身体のエネルギー消費が亢進するために通常より計算上多くのカロリーが必要になります。これが、上図の「需要増大」となります。

注)急性炎症の時期にはインスリン抵抗性が亢進したり、脂肪代謝の異常から過剰に栄養投与しすぎると高血糖などの危険があることや、自律神経の異常から消化器もしっかり働かないことがあるため、多くのカロリーが必要だからと、気にせず大量の摂取を促してはいけない。

悪液質と言われる、基礎疾患を背景にした筋肉量低下を伴う代謝障害でも、
慢性的に身体の炎症状態が起こり、安静時のエネルギー代謝が亢進するために「エネルギーの需要増大」が起こります。


低栄養は、ただ身体が痩せている事を指すのでしょうか?
栄養不足では身体の免疫を司るリンパ球の数が減少したり(一度その視点で血液データを見てみてください!)、傷ができても治りにくい、歩行練習するだけの体力がないなど、患者の回復に悪影響を及ぼすとされています。


低栄養研究でのエポックメイキングな論文は、↑のカガンスキーさんの論文で、栄養状態の悪さは、退院後の生存率に関わるといったもので、3つの生存曲線が綺麗に分かれるといったこの結果は、大きな反響になったようです。

脳卒中分野でも同様の報告がなされており、

生存割合だけでなく、自立度や在宅復帰にも影響を与えるようでした。

このような類似の研究をまとめた「メタ解析」という研究手法においても、脳卒中患者に低栄養があれば、上記のような悪影響を生じる可能性があると述べられています。

なぜ、私が低栄養に対して、これほど熱が入ったかと言うと、何より以下の論文に影響を受けたからです。

この論文を書かれた、Finestoneさん、1995年にはこのような事を述べられています。95年なんか、私まだ小学生ですよ。私、もう40前ですよ。
先に紹介した論文も、2000年代はじめ頃の報告なんですよね。

まだ、今でも現場には改善の余地があると思います。
医療に携わるスタッフ一人一人が、気をつけて低栄養の予防が行き届けば、より良いリハビリアウトカムにたどり着けるのではないかと考えています。

低栄養の見つけ方、評価の仕方などは、また記事にできればと思います。
新年度、栄養関係に興味をもつ理学療法士が少しでも増えればと思います。頑張っていきましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?