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人が人を支えることの根源へ〜東畑開人『ふつうの相談』レビュー

お疲れ様ですキャリアコンサルタントのタケシマです

カウンセリングの勉強をしていて素晴らしい本に出会いましたのでレビューします。本書は1ヶ月前に一度読んでいたのですが、とても深い内容なので時間をおいてじっくりと再読してみました。

心理士の東畑さんの本書執筆動機は、専門の心理療法論の範疇を超えて非専門家が”ふつう”に行なっている、”ふつう”の相談を含めて対人支援とは何かを考えたかったというものです。
確かに心理療法の知識の無い”ふつう”に暮らしている人も、友達や家族が悩んでいたら”ふつう”にケアしますね、早く寝た方がいいんじゃない?、、運動でもしてスッキリしたら?、、あなたの考えは間違ってないよ、、、などなど世界中で無数の”ふつう”の相談がなされています。

東畑さんの提案するモデルは、精神医学も非専門によるふつうの相談も別個に存在しているのではなく対人支援として地続きであり重なり合いもあるというものです。これはかなり大胆なモデルであると思います。

3つの対人支援のフレーム

学派知:心理療法、精神医学
現場知:法制度、福祉、学校
世間知:ふつうの人によるふつうの相談

それぞれいい面もあるし、限界もある。学派知は普遍性、再現性はあるが、暴走しやすい、現場知は現実の解決に必要な知だが視野が狭くなる、世間知は暖かいが、普遍性がない

東畑さんはそれらをメタ的に統合したモデルを提示します。

球体の臨床学

それぞれいいとこどりをすれば、、それを球体の臨床学と呼びます。、、、そんな射程の広い提案が本書の主張です

面白かったのは、東畑さんのカウンセリング事例です。もちろんまずは専門の心理学的アプローチで相談者を理解するのですが、結局アドバイスしたのは「高い買い物でもしたらスッキリしますよ」というものでした。ここには専門知と世間知=ふつうの相談の統合されたモデルがわかりやすく表れています。

人は太古の昔から家族や友人をケアしてきました、世話好きの人もいれば冷淡な人もいるので程度問題ではありますが人には他人をケアする本能のようなものがあるのでしょう。人の歴史にはシャーマニズムや占いなど民俗的な知が誕生し、現代では精神医学の理論があります。世話好きおばさんも占いも、精神医学も同一の地平で考えること、それが人が人を支える行為=対人支援の根源を見つめることになります。

本書は心理カウンセラーだけでなく、ケアマネージャー、キャリアコンサルタントなど対人支援職。さらには学校の先生、会社員、親の立場の人、、つまり多くの”ふつう”の人にオススメしたい名著だと思います

ではでは








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