鳥飼

愛知の片田舎から東京の片田舎

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最近の記事

茶摘みの記憶は美容院から

240324(日) 『52ヘルツのクジラたち』を観た。 批判します。 描かれている不幸からの抜け出しに、描かれなかった不幸がある。全員が少しづつ不平等になるのが社会だと思うけれど、そこに「こういう人間だったら不幸になってもいい」という線を引いている。 ヒロインのキコさんは、母親の再婚相手の介護をさせられていた。母がお金を稼ぎ、キコさんが介護をする。そういうシステムでまわっていた。 友人たちは、それをおかしいと言い、キコさんを強制的に家から出す。そして抜け出す手助けをしてくれ

    • 海が聞こえない人たち

      240316(土) 引越し準備を終わらせる。が、荷物がなかなか詰まらない。色々お土産もらったし、ラボの荷物も回収したから予想よりも増えちゃったみたい。 近似的な最密充填を経由してなんとか全部入れ込んだ。四次元ポケットがなくても三次元ポケットで事足りるんだ。頭が良いからさ。 後輩ふたりと駅の近くでモーニングを食べる。綺麗な器と尋常じゃない量のサラダ。ミスマッチにビビるけれど寝起きの口がむしゃむしゃと頬張る。「風立ちぬ」のクレソンおじさんも似た気持ちだったのかなと少し思う。

      • こうして街は廻ってる

        240301(金) 花粉。 240302(土) 13時から先輩4人と名駅でビールをあおる。クラフトビールの味がどれだけ言語化されていても、美味しいかどうかは結局飲んでみるまでよく分からない。メニューに並んだ上から順に飲んでいくことに決める。 2時間かけて4杯ほど飲んだあたりでグロッキーになる。 まだ明るいからと次の店に向かう。 2軒目はだいたい眠っていたので何も覚えていないまま3軒目になる。 酔いに酔った人たちが集まると、普段は絶対に口にしないような言葉が飛び出てくる。

        • 想像の中の未来の景観

          240222(木) 糸を抜く。 朝の8:45に予約していたけれど、一応午前休をとっておいた。「片方の糸抜けちゃって〜」ってヘラヘラしながら伝えて口の中を少し見せる。「いいよいいよ〜」と先生もヘラヘラ笑いながらもう片方の残った糸を抜いてもらう。 そのお互いの間に挟まっている空気がとても穏やかで心地よい。人間はそれぞれが纏うオーラみたいなものがあると思う。そのオーラは広がりと温度を持っていて、適切な距離で温度差がちいさいひとほど仲良くなれる、そんな気がする。 この先生にとっては

        茶摘みの記憶は美容院から

          人体のバグと戦う

          240215(Thu.) 朝、起き抜けに1本火をつける。気分が上がらない日はこうして一日を始めるけれど、それで別に気分が上がるわけでもない。ただ、ルーティンの中に自分を閉じ込めることで時間を費やすことに意味があるという気がするから。家で煙草を吸う行為、途方もなく独りだ。 明日、親知らずを抜くから一応これで最後にしてタバコをやめることにする。一旦ね。 240216(Fri.) 10時に病院へ着いていなければならない。間に合うように身体が起きてそのまま回転寿司みたいに目的地

          人体のバグと戦う

          人いっぱいのコンサート/貸切のミュージカル

          240208 (Thu.) 昨日の夜、タバコを吸いすぎたから身体が重たいし気持ちの問題かもしれないが髪が少し煙っていた。一日中、そうだった。 240209 (Fri.) 研究所でコンサートが開催されるというから聴きに行く。お世話になった他ラボの先輩が尺八を披露していた。尺八って一尺八寸が由来なんだ。SI単位系ではないものを命名に使うなというミクロな気持ちと、その方がある程度のゆらぎが許容されるからんだろうなという納得感。同じ指使いで甲音と乙音を吹き分けられるのにも驚いた

          人いっぱいのコンサート/貸切のミュージカル

          運命か、嗅覚か、偶然か。

          240201 (Thu.) 解放。やらなければならないことが、今何もない。こんな状況は何年ぶりだろうか。嬉しい嬉しいと、口に出してみる。想像していたほどは嬉しくないなと独りごつ。 ラボでダラダラとメールを更新しコアタイムを消化する。ダメ大学院生の鑑である。そのまま大学院生らしくUbuntuを立ち上げる。二ヶ月ぶりとかに電源を入れたからか、wifiが繋がらない。セーフブートをかけるも、解消する気配がない。多分、色んなパッケージをアップロードしたりすればいいんだろうけど、今日や

          運命か、嗅覚か、偶然か。

          オッペンハイマーに見る護国の精神と心理補色

          表現筋の筋トレのため、好きな映画についてはたまに言語化しておきたい。というわけで、「オッペンハイマー」を観たのでその感想をつらつらと綴っていく。なお、日本公開日はまだ未定。私は、気を利かせた後輩がタイで円盤を買ってきてくれた。存分に羨ましがって欲しい。 タイトルが示す通り、これはオッペンハイマーの半生をそのまま描いた映画である。 WW2の戦禍において、原爆開発は時間の問題であった。明らかな火種としては、1939年にAcceptされたナチスドイツからの核分裂に関する論文(O

          オッペンハイマーに見る護国の精神と心理補色

          また、焚き火に戻る / 一週間日記#6

          23/12/03. Sun. 朝、8時くらいに目を覚ました?かな。前日から進めていた佐藤究の「テスカトリポカ」を続きから読む。Kindleのスケールバーを見るともう92%まで進んでいた。昨日の夜。だらだら進めていつの間にか眠ってしまっていたらしい。とりあえず、ラストまで進める。目論見通り30分とかからずに読破。なんだか、鬱々とした気持ちになる。コーヒーを淹れるためにポッドに水を入れる。豆を挽く。何かをするための準備として何かをする。その何かのためにまた何かをする。そういう連

          また、焚き火に戻る / 一週間日記#6

          邂逅 - 人間に化けた狸

          11/26 Sun. 友達がこの日記を読んでくれているらしい。いいねを押すほどでもない程度のおかしみだと言ってくれた。ポジティブに捉える。 11/27 Mon. さっっっっっっっっっっ無。 11/28 Tue. 寝坊した。起きたら9時52分で、これは、寝坊したのか寝ぼけているだけなのかとダラダラ考えていたら10時になった。ボスに、寝坊したので遅刻しますと電話を入れて、ゆっくりと着替える。今は特に自分のために生活しているから、私のリズムが壊れても迷惑をかける人が少ない

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          レンズキャップを外して歩く

          11/19 Sun. 家の最寄りの美容院で髪を少し梳く。 # 日記のいいところは、音では使うけど漢字が分からない単語への造形が細やかになること(コメントアウト) 足元に黒い塊が落ちていく。髪も爪も、人間の身体から離れた途端に気味が悪くなる。あれだけ整えて慈しんでいたものなのに、なぜだろう。美容師さんとのお喋りがあまり円滑に出来ないタイプの人間だから、こういう目に入った不思議は有難い。ずっとぐるぐる脳みその上で転がってくれる。転がった疑問は解決することもなく、シャンプ

          レンズキャップを外して歩く

          空になすりつければ

          11/12 Sun.  朝9時半から、後輩2人と野菜を推してるカフェでモーニングを食べる。深夜3時まで一緒に酒を煽っていたから、前日から引きずっていた不健康を転換しようという試みだ。サラダのプレートにはお米のなり損ないみたいなものが入っていた。私の人生に初登場の野菜。調べたところ『もち麦』というらしい(多分)。違ったらどうしよう。裏で「この時期にもちむぎがあるわけないでしょww」って店員さんに笑われてるかもな。笑われていた方が面白いから、違っていて欲しい気持ちも少しある。最

          空になすりつければ

          ペンギンの甲羅

          11/5 日曜  イオンシネマでゴジラ-1.0を観る。スクリーンを2つ使って上映してて、見終わってからパンフ買ってたら次の上映アナウンスが聞こえた。在来線かよ。映画中は全体的にどんよりとした空気だった。戦時の緊張感と戦後のどうしようもない感覚が見えた気がする。自分の力ではどうにもならないことに巻き込まれた時、それでも生きるために抗えるだろうか。諦めの価値が理性には組み込まれているから、本能で生きていなければ無理だよなあ。 帰ってからグダグダしてしまって、気持ち(気分

          ペンギンの甲羅

          スマートウォッチが活躍できない程度のソーシャリティ

          10/28 土曜 居酒屋で知り合ってから転勤しても仲良くしてくれてるお兄さんに久しぶりに会った。5人で飲んだから、私はあんまり会話に参加しなくてもいいかと思って二次会で抜ける。まだ21時。最近、お酒を飲む欲求が無くなってきた。むしろ飲まない方に欲が向かってる。身体を健やかに保つことの方が幸福だ。そんなことを言いながら、帰宅途中のコンビニでカップ麺を買って、お湯を注ぐ。ラーメンはノンアルだから、体に優しい。 10/29 日曜 ダウ90000が名市大の学祭に来ていた。浜松のエア

          スマートウォッチが活躍できない程度のソーシャリティ

          秋への扉

          小説を読み、登場人物に自分が重なる、というのは良くあることだと思う。なんなら、登場する彼ら彼女らに対して能動的に自分をフィットさせにいくことすらある。大学生の時は、理工系の学生が活躍する森博嗣の小説にありたい姿を模索したし、朝井リョウの小説を読んではどうしようも無い自意識に意識が他界した。年齢的な近さを感じるもの対しては容易く同調出来ることが、この種の物語を選んできた要因にあると思う。 一方で最近、はやみねかおるの中学生が活躍する小説を読んで全く違う感慨があった。それは、昔の

          秋への扉

          逆光

          夏が終わる。きっと明日から短い秋がきて、ボヤボヤしてるうちに冬になる。毎年同じように、期待してた居心地のよい季節はすぐに過ぎ去ってきた。どうせ今年もそうなんだろうと思いながら、私は駅前の喫茶店で朝食を摂る。木のお皿に乗ってやってきたホットサンドと珈琲からはなんだかハイカラな香りがした。 あなたに会ったのは、3回前の冬の事。 その日は爽やかメガネの友達と、年末大決算の飲み会で15時に集まりフラフラも川沿いを散歩してどこで飲むかを思案していた。名古屋で酒を煽るとなると、名駅、栄