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超短編SF小説 「夢初夜」

これは昨夜見た夢の話である。

私は意味もなく、ある山を登っていた。
富士山の頂上付近のようなはげ山である。

なぜか隣には女の子がいた。

普通の山なら良かったが、
なぜか岩が上から降ってくるのだった。

岩は
一箇所から一定のスピードで降り注いでいた。
なぜこんな山を登っているのかとんと検討はつかない。

途中女の子が歩けなくなり、背負って登る。
岩石が脇をかすめる。

絶対危険だと分かっているのに、山に登る。
自分の意思とは関係無しに。
使命感?だろうか?
突き動かすものの正体は分からない。

得体の知れない想いが体に充満し、気味が悪かった。

山頂へ着くと
そこにあったの
はほんの少しだけ綺麗な風景だった。
木と木の間に田んぼと家々が点在するだけのなんの変哲も無い少しだけ綺麗な風景だ。

「私はこんなもののために、時間と労力とリスクを負っていたのか」

虚しくなった。


近くに居た
おじさんの車に乗せてもらい、女の子と下山した。

だが、そのおじさんが奇妙だった。

おじさんが
何も言わず、私たちの方を
振り返ってずっと笑っているのである。

「運転に集中してください!」
私は思わず叫んだ。

おじさんは
こっちを見ながら笑っている。

警戒音の鳴らない踏切を過ぎると、電車が背後を通り過ぎた。

おじさんは
こっちを見ながら笑っている。

赤信号の交差点に突入すると、前後を車がかすめた。

だが、車は止まらない。

私は恐怖した。


程なくすると、車は草原の中にある家にたどり着いた。

私は降りなければならないような気がして、女の子と一緒に車を降りた。

中へ入ると、ある有名な元社長がいた。
今ではロケットを作ったり、オンラインサロンを作ったりしているらしい。

私は人生に迷っていた。

「大学に戻るべきか」
「このまま働くべきか」
「専門性を身につける為の学校に行くべきか」
・・・・

そこで彼に聞いてみた。
「私はどうすればいいのでしょうか?
これだけ、スマートフォンが世の中に広まり、誰でも映画や動画をいつでもどこでも撮れるようになった中で、ノウハウがYouTubeに公開されている中で、学校で学ぶ意味はあるのでしょうか?」と。

彼は曖昧な笑みを浮かべるのみで、明確な解はもっていなかった。

私は気づいた。
「そうだ。これは夢なのだ。
夢だから、私の頭で考えていること以上のことは出てこないんだ。」と。

夢をメタ認知した瞬間に

目が覚めた。




読解

最初の山は現在の仕事の暗喩だろうか?
岩と言う名の日々のストレスをやり過ごし

目的もなく、登っても得られるものは
結局少しだけ綺麗な風景で、
虚しさを感じる。

だが、
登れば登るほどに下山するのはリスクになる。

下山して、行き先を人に尋ねても結局決めるのは自分なのだろう。

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