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【シチュエーションスリラー】knock〜ノック〜#4




このままでは私は殺されてしまう…。


でもなぜ殺されないのだろうか。



M田「なぜ、私を殺さないんだ?」


相手「………」


M田「もて遊んでいるのか?」

「それとも、助かる道があるのか?」

コンっ(はい)



M田は少し表情が和らいだ。


M田「それはどうすればいいんだ?」


「ん、答えるわけないか、こっちで生き残る方法を考えるしかないってことか?」



相手「……」


コンっ!(はい)



なんて事だ、私は人質兼、交渉人って訳だ。



こんな、バカな事があってたまるか!前代未聞な事件になりそうだ。



さて、どう交渉するか、私は営業の仕事をやってるから、その交渉術を駆使してやるか、しかし果たしてこの相手に通用するかだ。



何かを吹っかけるには、こっちも何かを差し出す必要があるかな…。



よしまずは接待を試みるか



M田はスーツケースから、持ってきたカップラーメンと缶ビールを取り出した。


幸い、部屋には電子ポットが備わっていた。
お湯は保温だったが、カップ麺を作る時はたいてい電子ポットの保温湯は少しぬるいから、再沸騰のボタンを押した


そこまで考え、今この状況でやれる事を徹底してやるM田であった。


M田「あの〜、腹減ってませんか?」
「私、お昼から何も食べてないので、お腹ペコペコで…、手持ちのカップ麺とビールで一杯やるので、どうですか?あなたもどうですか?」



コン!(はい)



かかった!しめしめ、上手くいった。


M田は、カップ麺2つを取り出しお湯を注いだ。


殺人犯相手にも最善を尽くす、という行為は生きるために致し方ない事だった


サンゴー缶のビールも


割り箸、カップ麺、ビールにさきイカも添えて。



M田「ドア少し開けますよ」

「大丈夫です、カップ麺に毒なんて入れてませんから」
「そもそも、毒なんて持ってないですし…」



ドアを少し開け…、M田は顔が見えるかなと、思ったが見えなかった。男か女かも分からなかった


またドアを閉めた



M田「それではお疲れ様です、乾杯!」



コン!(はい)



ふん、乾杯してやがる!



ふざけてやがるが、命がかかっているからな。私という人質を救うには私の交渉力が不可欠だ、ってなんか訳わからない状態だ。


M田は缶ビールをゴクゴクと呑む


M田「いや〜旨いですね!」


M田「いつも出張の時はね、ビールとカップ麺とか、つまみなんかを持ってくるんですよ」

「サラリーマンの楽しみというか、私は晩酌するんで、これがないとどうにもならない、というか」

「あなたはどうです?お酒は好きですか?晩酌とかなさいます?」



相手「………」


M田「おつまみなんかも、前は缶詰とか持って来たんですが、最近は物価高で缶詰も高くなりましたから」

カップラーメンのフタを開けて、すするM田
それをつまみにビールを呑む


M田は財布から家族の写真を取り出し、ベッドサイドテーブルのライトスタンドに立てかけた。妻と娘が写っている写真だ。

それを見て、M田は思った。

家族のためならば、私は私を必ず救い、ここから生きて出なければならない、と心に誓うのであった。




       つづく

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