見出し画像

【うたをうたうとき】ジワジワ感じる。今、ここ、生きていることの素晴らしさ

一緒にいるときは ひとりぼっちなのだ
やかましいから 静かなのだ
黙っている方が しゃべっているのだ
笑っているだけ 泣いているのだ
ほめていたら けなしているのだ
うそつきは まあ正直者だ
おくびょう者ほど 勇ましいのだ
利口にかぎって バカなのだ
生まれてくることは 死んでいくことだ
なんでもないことが 大変なことなのだ

まど みちおさんの詩 「もう すんだとすれば」より一部抜粋。
この詩の最初は、「もうすんだとすれば これからなのだ」で始まります。
1つの物事が静止した、終わったと思っていたら、
実は、それはまた新たな1つの物事の始まりでもある。
そんな指摘だと思えてきます。

日常生活を振り返ると、あれこれ考えたり、行動したり、頭や身体を「動かす」「動く」ことばかりしている気もしてきます。
しかし、この詩の後半、「生まれてくることは 死んでいくことだ」
「なんでもないことが 大変なことなのだ」を読むと、
今、ここに在ること。ただ、存在することに、とても大きな価値があるように感じられます。
1つの生命を、今日も生きている。
それは「なんでもないこと」のようで、「大変なこと」だと言われている気がするのです。

「うたをうたうとき」(詩:まどみちお、絵:渡邉良重)は、山口大学医学部附属病院の「ホスピタルアート」の取り組みを、書籍にしたもの。
「ホスピタルアート」とは、病院の建物にアートを取り入れることで、患者さんやご家族の気持ちを和らげたり、空間の雰囲気をあたたかいものにする取り組みだそうです。

まどみちおさんの詩は、動物や植物、太陽、子どもたちの様子などを通して、生命について考えさせられるものが多いように思います。
コロナ禍が続く中、3月11日を迎えて、お勧めしたい1冊です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?