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自分なりの心と体の向き合い方を見つけだす、セルフケアのすすめ|Beauty Deep Dive 〜第三章 セルフケア〜

モデル・俳優として活動する傍、REINGコミュニティと共にジェンダーやセクシュアリティのテーマについて発信をしてくれている甲斐まりか。この連載エッセイでは「美という価値観」について語ります。まりかと読者の皆さんとのジャーニーの始まりです。


〜第三章 セルフケア〜

「セルフケア」と聞いて、あなたがパッとイメージすることは何?癒し系ミュージックを流した部屋でキャンドルを灯すこと?ホットティー片手に丁寧にスキンケアしたり読書すること?それらも決して間違ったセルフケアではないし、自分にご褒美タイムが必要なときもある。けど、それだけじゃ満たされないときもあるだろう。私が今回皆さんにシェアしたいのは、短期的に効果が出るセルフケアよりも、もっと自分自身の心と体に耳を傾け、自分のメンタルの不調に気づけるようになったり、心と体のバランスにフォーカスした長期的な効果が出るセルフケアについてだ。

セルフラブと同様、セルフケアもまた人それぞれであり、心と体のバランスは様々なファクターによってとても影響されやすいもの。例えば、環境の変化や仕事のストレス、ホルモンバランス、その日の天気にだって左右されたことはみんなにもあるはず。自分にあったセルフケア方法を知るには、第一にメンタルとの向き合い方を知ることから始まる。実は半年ほど前、人生でいちばん体調を崩した時期があった。ちゃんと食べていたし、仕事も前ほど多忙ではなかったから、元気にしていたつもりだったのに。一つの病気が治りかけた頃にまた違う病気になり、そしてまた前のがぶり返してしまい、1ヶ月もの間ずっと体も心もボロボロだった。なんで自分の体の不調に気づけなかったのか。思い返せばコロナが流行する前は、いつも3、4ヶ月がむしゃらに働いたらしっかり2週間のお休みをもらい、海外旅行へ行ってデトックスするというルーティンがあった。東京という日常から離れ、行ったことのない非日常が溢れる場所へ定期的に行くことで、心と体がリフレッシュされていたのだ。旅先では新しい景色や体験を通して自分の五感を刺激し、日常のストレスや悩みから解放される感覚が最高に気持ちいい。

けれど、コロナ以降は制限された環境で緊張感を持ちながら仕事をする日々のなか、うまく自分なりの息抜きを見つけ出せず、そのストレスが少しずつ蓄積されて気付かぬうちに心と体のバランスが崩れていた。まさに病は気からな状態だった。私にとってこの経験はとても辛いものだったけど、これをきっかけに以前よりちゃんとメンタルヘルスに向き合うようになったり、心と体の不調に先に気づいて、何が原因なのか何を求めているのかを少しずつだけど分かってあげられるようになった。自分の心と体のメンテナンスの仕方をさらに理解することで、表面的な心の満たし方ではない心と体の健康にアウェアでいられる、本当の意味でのセルフケアにつながり始めた。

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最近はウェルビーイング(wellbeing)、ウェルネス(wellness)、マインドフルネス(mindfullness)といった言葉を日本でもよく聞くようになった。それは美意識や美容法が多様化し、内面のケアもちゃんと意識され始めたからだろうか。この3つの言葉に共通するのは、やはり「心の健康」だ。心を健康に保つこと、それは自分の感情に素直になることであり、喜怒哀楽をしっかり受け止めることだとも思う。先日、REINGのメンバーたちと今話題のアプリClubhouseで、それぞれのセルフケア法について話し合った。その時も自分の感情を人に話したり、悲しみをシェアすることがどれだけ大事かで盛り上がった。私はあえて悲しい映画を一人で観て爆泣きすることで心を浄化したり、一人では抱えきれない悲しみを理解してくれる友達に話したりすることで、いっぱいいっぱいになった溢れ出しそうな心を優しく解きほぐす。霧がかっていた心が嘘のように晴れ始め、心が軽くなる感覚が心地よい。シラーの名言「友情は幸せを二倍にし、悲しみを半分にする」は、本当だ。他人に自分の弱みを見せることがまだしづらいと思う人もいるだろうけど、不完全な自分や傷ついた心をシェアすることほど美しいものはないと思っている。そんな素を見せ合える関係を友達や恋人と祝福し、お互いが支えあっていくことで優しさも幸せも連鎖すると信じている。

第二章では、セルフラブとは生きやすいように自分らしさを解放し、自分に優しくなる行為だと書いた。ならば、セルフケアは自分が心地よく感じられるメンタルでいる為に、自分なりの心と体の向き合い方を見つけだす行為だ。私にとって旅行という行為は単なる趣味ではなく、無意識に自分に合ったセルフケアになっていた。さらにそれを紐解くと、旅行という手段で心に余白を持つことこそが本質だった。非日常な環境に自分を置くことで、視野が広がり、いつも自分がいる環境では気づけないことや客観的に物事を見られるようになる。そのマインドだと悩み事を別の視点から解決できたり、なんなら悩んでいた時間が馬鹿馬鹿しくすら思えて、手放すことだってできるようになる。さらに、新しくクリエイティブなアウトプットするには、誰しも心と体にインプットするための余白が必要だろう。コロナのせいで行動は制限されるが、旅行の代わりになるような、日常のストレスから心と体をスイッチオフできる私なりのセルフケア方法を探し出すしかない。

みなさんにも完璧な自分になるためのセルフケアではなく、自分のメンタルヘルスやバランスの取り方をセルフケアを通して完璧に知れるようになることを目指して欲しい。


Text:甲斐まりか / Marika Kai
タイと日本のルーツを持つファッションモデル。タイ、ドイツ、イギリスと、人生の大半を海外で過ごしたのち、2017年から日本でモデル活動をスタート。Voceなどの雑誌、dejavuや資生堂などのイメージモデルを務める。さまざまなカルチャーに触れながら育った生い立ちから、オープンマインドな心と独特の視点を持つ。旅行と芸術への関心が強い。
Instagram: @mari_ka95
Twitter: @mari_ka95

Edit:Yuri Abo | Illustration:Ada

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