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次の野望はなんですか? と聞かれて答えられなかった

昨今の台湾ブームも相まって「今度こういう仕事をやることになった」「また面白い台湾案件の相談があった」とわくわくしながら旦那に報告することが増えた。

我が家の旦那といえば、常に仕事のことやキャリアのことで相談に乗ってくれる非常に重要な存在なのだけど、そうした報告をしたときに「ええやん、30代はそういう仕事でやっていけそうやな」と言われた。そしてぽろりと言われた悪気ない一言に、はっとした。果たして40代はどんな場面で求められる人間になるのだろうか。なっていたいのだろうか?

実際そうだった。台湾のトレンドや旬な情報を発信しているけれど、その感度は十年後も変わらないだろうか、とか、大勢の人前に呼んで華になる存在でいられるだろうか、とか。もっと若くて発信上手な台湾ツウはこれからもたくさん現れるだろうし、かといって深い知識と歴史を携えた台湾博士のような重厚な存在に、自分がなっているイメージもあまりない。若くて元気をモットーにやってきた(?)自身にとって、年齢を重ねれば重ねるほど価値になるものが一体なんなのか見えていないのだ。

…という話を、最愛の友人しおたん @ciotan にしたら「私はゆくゆくは寮母になりたい。若い子たちを応援するおばちゃん力を磨いて、発揮して。そのために30代は自分自身があらゆることを経験する期間にする」とはっきりと話していて、あ、なんかいいなそういうの、と思った。十年後の武器は何かをしっかり捉えて、”今はこのための時期” と、人生を明確に描けていることが羨ましいなと思った。彼女にとって年齢を重ねるほど価値になるものが何か?をしっかり掴んでいることも(詳しくはしおたん note 参照)。

さて。一方の私はといえば、昔からノートに目標を書くのが好きだ。誕生日や年越しのタイミング、ふとした節目にはいつも誰にも見せないノートを開き、理想の5年後を箇条書きしたり、数ヶ月前に掲げた目標のうち達成したものをザッとボールペンで勢いよく消したりしていた。今向かう先はコレ、と夢を掲げることでブレずにいられたし、正直 ”悩みながら走る” のはとても苦手だ。

そんな人生だったからこそ、一年ほど前に SHElikes で講演をさせてもらったときに参加者の方から『これまでそうやって夢を叶えてきた田中さんですが、次の野望はなんですか?』と笑顔で聞かれたときに、(な・・なんだろう・・・)って。答えに詰まったことを一年近く引きずっている。本を出す、とかそうした短期的な目標はあったけれど、いざ叶えてしまったら迷子になってしまったのだ。

・・・

だけど、思い当たる節があった。 ”常に長期的な目標を掲げる人生” だった頃から明らかに変わったこと。なんとなく言い訳にしたくないと思っていたけれど、結婚したり子供ができたりしたことだ。自分の都合だけでコントロールできないことがずいぶんと増えたし、例えば「5年後は海外に一年ぐらい住みたいな〜」みたいな野望は、数年前までの「私さえ決断すればできる」という状況からはずいぶん遠ざかる。引っ越しにしたって子供の保育園や校区の問題がつきまとうし、家族でお出かけしたいからと平日に一日休みを取ることだって、旦那と旦那の会社のメンバーの顔が浮かぶ。子供が突然入院したりつきっきりのケアが必要になるという ”もしもの対応” も常に隣り合わせだ。自分の夢や野望だけではコントロールできないことが本当に本当に増えたのだ。

そんな最近のモヤモヤの答えがなかなか出なくて。思わず誰かに相談したくなり、同世代の子供を持ちながらバリバリと仕事をしているママ仲間に胸の内をぶつけた。ら、思いがけない答えが返ってきた。

『明確な目標?長期的なプラン?無理無理!そんなの! その時やりたいと思える目の前のことを、ガンガンやるのみだよ』

『今やっていることをどう発展させるか、にこだわる必要ある? 自分がどんなことが得意で、どんなことしているときにワクワクするかは分かっているんだから、その時々の環境にあわせてスキルを活かしていける分野を見極めていけばいいんじゃないの』

と。これからどうなるか分からない子供や家族を抱えて、キャリアもへったくれもない!と清々しく断言する眩しいママたちに、え?そうなの?それでいいの? と、ちょっと拍子抜けした。人とキャリア観の関係はどんな環境においても変わらないと思っていたけれど、そんなことはないんだ。それでいいんだ。

そんな目から鱗のアドバイスをもらって、一年前に答えられなかった「田中さんの次の野望はなんですか?」の答えがようやく見えた。まずそもそも「自分と野望との付き合い方が変わったことを認める」ということ。その上で「しっかりと得意領域を見極めて、自身の人生や市場のニーズにあわせた提案をし続けられる自分でいる」ということ。これは完全にママ仲間の受け売りなんだけど、それ自体が私の、次の野望だ。

学生時代からやってきた、頂点を目指してチェックポイントを通過していく山登りのような人生の歩み方から、山の登り方を模索して色々な山の登り方があることを自分なりに発見していく、というキャリアの築き方に変わったのかも。

一年越しにようやく見つけた答えらしきものに、なんとなく心をスッキリとさせながら、今朝も家族の朝ごはんの支度をする。

「今日はお腹すいてないから朝ごはんは作らなくていいや」って私一人でコントロールできないことにすっかり慣れたこと。それは悪いことでもなんでもないのだ。


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