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妹を誘うということ

今日になるまで、妹との距離の変化に気づかなかった。

家族でホームセンターに立ち寄った。一時期よく行っていたが、おそらく最後に行ったのは10年ほど前だ。両親について行っても楽しくないので、妹と一緒に2時間かけて回ることにした。

結果的に、一番長居したのが表札コーナーだった。色々なデザインの表札を飾っているコーナーで、30歳近い姉妹でゲームをしてしまった。かるたのようなゲームである。例えば、妹が「髙橋!」というと、いくつもの苗字の表札がある中から髙橋さんの表札を見つけて、「はい!」と言いながら「髙橋」の表札に手をかざす。その後私が「渡辺!」というと、妹もその中から渡辺さんの表札を見つけて手をかざす、という具合。妙に盛り上がって、何回戦もしてから移動した後、別のところにも表札エリアを見つけてまた表札かるたをしてしまった。かるた中に両親に見つかって中断したけど。広いホームセンターだったので他にも色々なコーナーがあり、家の内装の展示コーナーで無駄にドアを開けてみたり、ペンタブコーナーで久しぶりにお絵かきしたり、飼っている猫に似たイラストのハンカチを見つけたり、ゲーセンの景品にあれこれ言ったり。10年前とあまり変わらない楽しみ方をしつつ、少しずつ目の付け所も変わったし、私たちは二人ともアラサーになって実家も出てしまったし。

私と妹の関係性は大体今のとおりである。楽しめるものや笑えるものをその場で見つけて暇をつぶすことには長けている。だけど、特段二人で進んで遊びに行くことはない。せいぜい家族で出かけるときに突発的に別行動するくらいである。通ったアニメやお笑いなどの娯楽が似ているので、笑いのセンスは誰よりも合う。身の回りのものから何か連想して私がにやついているときは大体妹も同じことを考えている。なんとなく交友関係や立ち位置は把握している。でも、互いに相談に乗り合うことはまずない。恋愛の話をしたのもせいぜい大学を卒業する少し前くらいからか。総合すればまあ仲はいいのだと思うが、別に一緒に遊ぶわけでもなく相談などもしないので、「妹と仲いいの?」と聞かれるとちょっと答えづらい。

そんな関係だから、会えば楽しく過ごすけど、自分たちを繋ぎとめるものはあまりない。今は実家に帰るタイミングを大体合わせているけど、お互い家庭を持てばそこまでうまくはいかないだろう。婚約した今、姉妹の関係というのはなんとももろいと思う。両親であれば、ある程度良好な関係が築けていれば結婚後も時機を見て会うことになろうが、姉妹の場合はよっぽど予定を合わせない限り、気づけば会わなくなってしまいそうだ。現に、今でさえ妹と自由に過ごす時間は減りつつある。それが、私が正式に結婚した後、そして妹も結婚したら、互いの入り込む隙間がさらになくなってしまいそうで。

妹と積極的に会わないのは、単に妹が友達でも親友でも恋人でもないからだ。予定を入れるとなると、どうしても婚約者や友人を連想してしまう。妹はわざわざ誘う対象ではないので、妹を誘う、という発想がない。でも、これからは積極的に誘わない限り、妹とは会えなくなるかもしれない。誘ったとしても、少なくとも、今日みたいに何となく寄ったホームセンターで突発的な遊びをすることや、身の回りの物から笑いを生みだすことはしにくくなる。生活の中から生まれる会話が一番楽しいのは妹なのに。

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