食いしばりはポジティブでもネガティブでも起こる

休職しただけでは食いしばりはよくならない


今日は歯の定期メンテナンスの日。
3ヶ月から4ヶ月に一度、顎関節の治療とクリーニングを行っている私は、
2023年の終わりに歯も綺麗にしようとクリニックを予約した。

ストレスによる食いしばりに悩まされていた私は、仕事がストレスの最大要因だと思っていた。

休職から1年弱経ち、私の精神状態もだいぶ安定していた。

「休職もして仕事によるストレスもなくなったし、もう大丈夫♪」

リラックスした心持ちで診察台に横たわる私に、歯科衛生士が放った一言は想定外だった。

「かなり歯を食いしばってますね。」

これを聞いた私は思わず耳を疑った。

「・・・え?なんで???休職して仕事のストレスから解放されたはずなのに、なぜまだ食いしばる自分がいるの?!」

内心、混乱する私をよそに淡々と歯科衛生士は続ける。

力のコントロールが必須

「歯茎が6ミリも下がってしまっています。
力のコントロールが必須です。
歯並びがいいから、余計に食いしばりやすくなってしまうんですね。」

歯科衛生士に食いしばらないための舌の位置など、指導を受けながら、私の頭の中はぐるぐる回った。

食生活は玄米菜食、間食も一切とらず、
歯磨きも食後30分置いてから丁寧にブラッシング、歯間ブラシ、フロスを通し、歯垢がつきやすい寝る前にもブラッシングとフロスをしてマウスピースを装着して寝て、
日常生活からストレス要因を極力排除するために休職までしたのに、
なぜまだ食いしばる自分がいるのだろう?

歯並びの良さが食いしばりを誘発してしまっているってどういう意味?
力のコントロールって何?どうやればいいの?
私のどこがいけないの?
これ以上、何を改めればいいの?

診察が終わって会計を済ませたものの、ショックと混乱のあまり、帰りのエレベーターに向かう気力も起こらず、クリニックの待合室のソファに座ったまま動くことができなかった。

藁にもすがる思いでつかんだチャンスは整体だった

すると、後ろのソファから男性の声がした。
その瞬間、このクリニックに整体の先生がいたことを思い出し、歯のことは忘れ、整体に意識が切り替わった。

すがるような思いで振り向きざまにその男性の先生に声をかけた。

「あの、整体の先生ですか?」

突然声をかけられて驚いた表情を見せながらも、その先生は優しく答えてくれた。

「僕ではありません。今日、仕事ではありませんが、整体の先生は来ていますよ。聞いてみましょうか?」

被せるように「ぜひお願いします!」と懇願する私に、先生は笑いながら「ちょっと待っていてくださいね。」と言って診察室に姿を消した。

しばらくして戻ってくると、今度は別の男性が現れた。

私の顔を見ると「どうしましたか?」と聞きながら、ソファに座る私と同じ目線にしゃがみ、つぶらな瞳で私の目を真っ直ぐに見た。

私は骨盤の歪みが原因で右肩の筋肉が引きつったように痛いため、骨盤の歪みを治したいことを訴えた。

「今日は仕事じゃないからこんな服なんだけど、すみません。そして、今日は5時までか。あと1時間、できるか聞いてみますね。ちょっと待ってて。」

と言いながら、また診察室の向こうに姿を消した。

その日は年末最後の営業日だったらしく、既に時計は4時半を回っており、クリニック全体がそこはかとなく浮き足立ったように雑然としていた。

私はソファに座り、手を組んで、大天使ミカエルに心の中で祈った。

「大天使ミカエル、お願いします。私に必要なら、どうか叶えてください。」

しばらくしてその先生が姿を現した。

「大丈夫だって。」と軽やかに笑いながら言うその姿にホッとしつつ、大天使ミカエルにお礼を伝え、感謝の気持ちとともに診察室に入った。

食いしばりはポジティブな精神状態でも起こる!

整体用の服に着替えた私に、整体の先生は私と同じ目線にしゃがんでこう言った。

「整体によって骨のズレをしっかり治してアライメントしても、食いしばりってあるわけよ。
どんなに噛み合わせをよくしても、どんなに顎関節の治療をしても、やっぱり食いしばっていくと言うのはある種、精神的な部分になるのよ。
期限までに仕上げなければならない資料があるとか、上司に何か言われてプレッシャーがかかっているとかいうストレス要因だけではなく、やる気があるっていうポジティブな要因にも食いしばりってあるのよ。ストレスだけじゃないのよね?

これを聞いた私は、全く想定外の方向からボールを投げられたような不可思議な感覚に陥った。

え??精神的にポジティブなものにも食いしばりってあるの???
ストレスだけじゃないの???

目を見開いて驚く私に続けて先生は言った。

噛み合わせがいいほど食いしばりやすい!

「じゃ、噛み合わせを治せばいいのか?
噛み合わせを究極に治しても、そういう色々な環境や仕事の前向きさやネガティブなストレスがあって、グーッ!て歯を食いしばったら、逆に歯って折れるの。
噛み合わせが良ければ良いほど。

だから、噛み合わせをよくしていくことは最低限やった方が良いに決まってはいるんですが、固まっている部分をほぐしていくのは対処療法でしかない。
これはアメリカでは一般常識。」

顎関節を緩める運動が鍵だった!

「なので、普段から顎関節が固まらないように、気がついた時に顎の体操をやって、緩めるようにして欲しいの。
で、顎関節に関して一番大切なのは斜め前の動きなんですよ。
右が詰まるなら左斜め前に出す動きが大事。
これが顎関節を固めない一番大事なこと。
固まった後に顎関節を緩めるのは対処療法でしかない。」

愕然としながらも顎関節症に有効な顎の体操、舌を正しい位置にキープするための舌の運動を教わり、施術台に横になった。

その先生の整体は、これまで受けた中でダントツに上手かった。

足のつま先から甲、スネ、腰、背中、首、頭と、順々にバキッバキッと明快な音を鳴らしながら、最後は足の裏から温かいエネルギーが体の中を通った時、遠隔で氣を送っているのがわかった。

施術が終わり、「どうですか?」と怪訝そうに私の顔を覗き込む先生に、「首の痛みがなくなってる!」と思わず声が出た。

骨盤の歪みが取れ、両足のズレが整い、首肩の痛みが取れた私は生まれ変わったように感じた。

歯科の診察後とは打って変わって羽が生えた天使のような軽やかな気持ちで精算し、エレベーターまで見送ってくれた先生に涙が出そうに嬉しい気持ちでクリニックを後にした。

行き詰まった時はルートを変えろ!

帰宅後、手を洗う洗面台の鏡に映る自分の顔が明るく、瞳が輝いているのが見えた。

顎関節とは無関係な整体だと思っていたが、そうではなかった。

まさに、マインドの想像を超えたところに一番欲しい答えが転がっていたのだ。

私は止まっていた人生の車輪がゆっくりと動き始めたように感じた。

そして、何かに行き詰まった時、同じ場所に留まってほじくり返しても、時間とお金とエネルギーを消費するだけで、何の変化も進展もない。

そんな時は、直感に従い、全く別のルートに切り替えて行動することがいかに大切であるかを学んだ。

その時に付随するお金やエネルギーを惜しまないこと。

切羽詰ったからこそ藁にもすがる思いでつかんだチャンスを大切に生かして、歪みとズレを修正し、バランスのとれた元気な体に戻るんだ。

決して安くない費用だが、2週間後の施術の予約が楽しみな私がいる。

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