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街の結び目となるか"太田市美術館・図書館"

太田は電車で行きづらい。
ただここにはどうしても行きたかった。
なので実家に帰省した際に車で連れて行ってもらった。

太田駅はそれなりに乗降客数が多いものの、とにかく駅前が閑散としている。さすがスバルのお膝元、だからか車社会で郊外の大型店舗が発展している。

2013年に太田駅北口の活性化を目指して文化交流施設とすることを市が定め、その翌年から市民ワークショップが始まった。
そして2017年、太田市美術館・図書館は平田晃久氏の設計により完成した。村野藤吾賞、日本建築学会賞を始めいくつもの賞を受賞している。
見た目も内部も何とも不思議な空間だが、市民の声が用途や建物内のゾーニングに多く反映されているという。
そして建築だけでなく、サインや家具も大きな見どころだ。サイン計画はグラフィックデザイナーの平野篤史氏、家具は太田市内の製造業者により結成されたエーアイラボオオタが手掛ける。

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この建物のおさえておきたいポイントは、

1.箱とスロープの絡み合い

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この建物は3階建、RC造5つの箱と鉄骨のスロープの絡み合いによって構成されている。箱部分にはギャラリーやカフェ、図書閲覧室などとして利用されているが、スロープを介して光や視線が通り、気持ちのよい空間になっている。同時にスロープ部分にいると、斜め方向に箱内部が認識できるのに、なかなかその場所までたどり着かない。スロープ部分の壁にも興味深い本や家具が配置されていて、結局途中で長居をしてしまって、上階まで行くことを断念してしまいそうになる。さらに図書館と美術館の明確なゾーン分けもなく、隙間からチラホラお互いの様子がわかるのも、ちょっとお得で楽しい。

2.屋上に出るとさらに丘が続く

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駅周辺は高い建物がないため、屋上に上がると金山やスバルの工場がよく見える。そしてこの建物のすごいところは、屋上に本格的に丘を作り、樹木を植えている。土厚を考えると相当な構造への負担が考えられるが、子どもが勢いよく駆け上がっていくのを見ると、理屈ではないのだ、と気づく。こんな立体感のある緑が、駅前で体感できるのは本当に贅沢。ただてっぺんから勢いよく駆け降りると、手すりを突き抜けて落っこちてしまうのではないか、若干不安だ。

3.お気に入りの読書スペースが見つかる

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スロープや吹き抜け、書棚に囲まれたちょっとしたスペースが「自分だけの場所」として楽しめる。二つと同じ空間はなく、柱のない大胆な開口部、ダイナミックなスロープの上げ裏が広がる中、いきなりキュッと空間が絞られ、子どもにとって丁度よい空間が生み出されてたりする。

そして、家具の脚部はジュラルミン製の14面体を中心とする丸棒のジョイントが美しい。これは、長くこの地で培われた自動車の工業技術の賜物であることは間違いない。

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