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プヲタが本を読んだなら~第5回・『強く、気高く、美しく』~


2023.11.21に発売される赤井沙希の自伝・『強く、気高く、美しく』を読了しました。


本書が刊行されるより前の2023.11.12に、DDTプロレスリング両国国技館大会で約10年のキャリアに幕を閉じたプロレスラー・赤井沙希。


著書自体は正式な発売前ではありますが、上記の両国国技館大会で先行販売されていたので、当日会場に来た観客で一足先に入手・読了していたという方もいらっしゃるのではないかと。


私も正式発売される前のタイミングで本書を入手したのですが、内容はサクサク読めてしまうくらい面白かったです。

まだ発売前ではありますが、今回は『強く、気高く、美しく』を読んでみた、個人的感想について書きたいと思います…。



【赤井英和の娘】ではなく【赤井沙希】として書かれた作品

個人的に本書で一番重要だと感じているのが、赤井沙希のことを【赤井英和の娘】ではなく【赤井沙希】という立場にしっかりフォーカスして書いている所です。


年表を除くと約200Pある自伝パートで、父親の存在に触れているのは幼少期のエピソードくらい。
それも"幼少期に触れる上で外せなかったから"という必要最低限な感じで、ページ数も限定的。プロレスデビュー以降のチャプターからは父に触れていない印象でした。

でも、それは赤井沙希という人が自分の足で歩いてきた道のりが濃く深かったからこそ。

本書が父の存在や秘話に頼らなくとも見応えある内容になっていたのは、この濃度があってこそだと私は感じた次第です。


暴露本テイストは皆無も、一貫していたハッキリ具合

今作は自伝とはいえ、前述したように父親の話もフォーカスしていないし、暴露本のようなテイストも皆無な作品でした。

ただ、著者が一つひとつのエピソードや自身の感想を忌憚なくハッキリと書いている故に面白味が増していた印象を受けました。
あまりのハッキリ具合に、読んでいて私自身思わず笑ってしまった事も多数…。

自身の師匠であり『酒呑童子』や『Eruption』でも接点の深い坂口征夫に関しても、プロレスデビュー前の印象を包み隠さず明かしていましたし、他団体の女子プロレスについてのイメージも語られていたのは意外でした。
ヤバいファンはヤバいし、選手当人も存在を把握してるんだなって(よせ)。


プロレスデビュー後のチャプターでは、中々試合が組まれなかった事に対して「もっと試合を組んでほしかった」と吐露する内容も…。

かつて、赤井沙希は2018年に1年間だけSEAdLINNNGへの準レギュラー参戦があったり、その時期と前後する形でOZアカデミーでは尾崎魔弓率いるヒールユニット『正危軍』に勧誘されたりしたことがありました。
ただ、タイミングの関係なのか、タイトル戦線に絡まなかったり他所のストーリーも中途半端にフェイドアウトしてしまったりしたのを見ているだけに、他所の主要団体でシングル王座を獲る世界線がやはり見たかったのが正直なところ。
そういう部分は、本人のコメントを見て改めて感じた部分ではありました。


ただ、女子選手で初めて全日本プロレスの6人タッグ王座を巻いたり、最後の方は東京女子プロレスのタッグ王座を獲得したりした事は、彼女にしか描けない歴史だった気がします。
男子団体所属で他の女子団体には無い環境だからこそ刻まれた、唯一無二にして個性的なキャリアの数々は流石…!


見られる視点に革命を起こした人

本書には、【他者から見られる事への意識】に関する言及が度々登場してきます。

本書を読んでいく中で、プロレス業界に浸透していなかった【プロレス業界以外にも見られる意識】に対して、DDT内で革命を起こしたのが赤井沙希だったんじゃないかと私は感じました。

会見中の決めポーズだとか、服装だとか…。

プロレスファンには受け入れられても、業界外の人には受け取られ方が変わってくるという視点は、芸能界出身の赤井沙希ならではの指摘だと感じましたし、その視点を団体に持ち込んだことでリング外でも貢献した人だったんだ、と。


以前DDTに参戦したことのある選手が「DDTは後楽園ホールにもヘアメイクが付いている」と明かしていた話を聞いたことがあるのですけれど、その辺りに赤井沙希が関わっていたのは初耳でした。

それでも、本人がカメラを意識できるようになったエピソードが比較的遅めだったという話は意外…。
(そういうのを、良い意味で感じなかったので。)


まとめ

今回の『強く、気高く、美しく』を読んでみて、赤井沙希という人が男性・女性問わず支持されてきた理由の一端が何となく掴めたような気がしました。


リアルで赤井沙希という人の試合を見ている方とかは共感していただけるかもしれませんが、プロレスの試合を見てきた人ほど【赤井英和の娘】視点で見ている人はいないと私は感じるのです。

実際、男子団体のDDTプロレスリング所属で、会場での歓声は女性ファンの方が多い印象も受けましたから。
それだけ、彼女の立ち振る舞いとかレスラーとしての姿、カッコ良さなどに魅了された人達が多かったことの証左ではないかと。


非常に読みやすい本だったので、色んな方に知られてほしい一冊。
引退は寂しいですが、プロレスラー・赤井沙希をリアルタイムで追えた環境に感謝感謝です…!

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