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これまで来た道、これから行く先

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旅がどこまでも続くように。1000字エッセイ。
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2020年2月の記事一覧

みちづれ

みちづれ

何度か私の投稿にも現れている「高校時代からの友人」は、すべて同じ人物である。小さな頃から友人は比較的多かったものの、お互いに心を許し、今でも交流が続いているのは彼だけであるといってよい。私が自分の恋愛について語ったことのある友人は、これまでの生活を通じて彼の他にはいないし、少なくとも私自身は彼を信頼している。日本語には「親友」というくすぐったい言葉があるが、私にとって彼がそれに当たるのではないかと

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Here We Are

Here We Are

父の友人の急逝といい、私がホームで突き飛ばされた件といい、今週は生命について考える機会が多すぎた。このままでは限りない深みへと落ち込んでいってしまいそうなので、ざわつく思いを書き留めて落ち着かせようと思う。

今回、改めてわが存在の儚さを知った気がした。もしも私がホームから転落して電車の下敷きになったとしても、そのことを知るのは私の周りのごく一部の人だけだろう。もちろん、その人たちには知ってもらわ

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一筋のレール

一筋のレール

電車を待つホームの上で、突然後ろから突き飛ばされた。

今日の昼間、客先へ行こうとしていたときのことである。思いもしない出来事で、かなり前へよろめいたが、どうにか踏みとどまって転落だけはまぬかれた。ラッシュアワーから外れて人もまばらなホームを振り返ると、こちらを見て笑いながら逃げていく高校生二人組の姿があった。

その直後に電車が入ってきた。もしも線路に落ちて足の骨でも折っていれば、避けることもま

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ひとのいのちはたえるもの

ひとのいのちはたえるもの

英語をある程度聞き取れるようになった後に自覚する壁が、子どもたちの言葉である。私もかなり苦労し、今も確実に聞き分けられる自信はない。

しかし、私が人生で初めて聞き取れたいわゆるネイティヴの英語は、5歳の男の子――以下、彼の頭文字を取ってA君としよう――の質問だった。

What fruit do you like?
(果物は何が好き?)

彼とは2歳離れているはずだから、当時の私は7歳だったのだ

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