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これまで来た道、これから行く先

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旅がどこまでも続くように。1000字エッセイ。
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2020年6月の記事一覧

ちゃりん

ちゃりん

お金をポケットに入れる大雑把な性質のせいもあって、私は普段あまり小銭を持ち歩かない。時折訪れる神社のお賽銭に使ったり、それでもかさばっているときには4歳下の妹にあげたりしている。先日コンビニエンスストアに行ったときも、そのようなわけで、細かいお金は十分に持ち合わせていなかった。

会計は300円強であったと記憶している。私はポケットから500円硬貨を一枚取り出し、レジ担当の店員に手渡した。その瞬間

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トンネルの先に

トンネルの先に

ようやく乗り切った今だからこそ言えることだが、去年の今頃は、精神を病みはじめた時期だった。その後、状態は少しずつ悪化して、秋口にはピークを迎えることになる。原因は自分でも分かっていた。職場のぎくしゃくした人間関係もさることながら、毎日残業で深夜になりがちだった帰宅、大学時代の友人との仲違い。あまりに多くのことが重なった。夜は眠れず、常に頭痛がしていた。医師や両親からも転職を提案され、紆余曲折あって

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あの日の声涙

あの日の声涙

これは小さな頃から変わらないことだが、私は声に大きなコンプレックスを感じている。気にしないように努めてはいるものの、とにかく自分の声が嫌いだ。

そういう思いもあり、中学時代の校内合唱コンクールでは、三年間クラスの指揮者を務めた。多少は音楽の知識もあったし、もともと目立つことは好きなタイプだったので、自然といえば自然な選択だったかもしれない。

校内合唱コンクールでは、学年ごとに最優秀賞、伴奏者賞

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