昨年のゴールデンウィークに神戸を旅行した際、食事に立ち寄った“Sakanaya Uohide”。

魚秀（うおひで）は本社神戸の店舗では魚卸し兼海鮮居酒屋の形態。都内10店舗、神奈川、埼玉、千葉、青森の店舗では焼き魚などの惣菜販売を手掛ける。今回は都内の店舗で黒むつ醤油麹焼きを購入。さすが高級魚とされるクロムツ、パックに入った一切れの焼き魚で538円。

先日はクロムツの煮切り醤油漬けと樽で発酵させた甲州ブドウの滋味の相性が素晴らしかった。ムツの甘い脂は醤油との相性が最高。

合わせたワインは白は山梨県の甲州品種(クロムツの煮切り醤油漬けとも相性良かったワイン)、イタリア サルディーニャ島のヴェルメンティーノ品種。赤ワインはシチリア島のネレッロマスカレーゼ品種、ギリシャのクシノマヴロ品種。白ワイン2つ、赤ワイン2つ。実食の結果、山梨の樽発酵の甲州ブドウの滋味が、醤油麹に引き立てられたクロムツの甘美な脂に極上の調和を見せた。

さて、料理とそれぞれのワインの相性について。

シャトー・ルミエール, 光, 甲州 山梨, 2020, 3,658円

1885年創業。山梨県笛吹市一宮町南野呂。自社農園で栽培した甲州種を樽発酵した後、20ヵ月の樽熟成で仕上げた。
力強く濃い色調。香りには枇杷、大ぶりの和梨、カボスに微かに柚子、果皮のフェノールの複雑な香り、カモミールティーのほんのりスパイス香。
味わいにはジューシーで滋味溢れる染み込む果実味。ほろ苦さはゆるゆる続き、甲州品種とは思えないほどの非常に長くまったりとした余韻。甲州の魅力を引き出し尽くした名品。
黒むつ醤油麹焼きにワインを合わせる。樽発酵で引き出された甲州ブドウの滋味、樽の香りに、醤油の麹の旨味が調和。麹にブドウの滋味が加わり、クロムツの上品な脂の甘みを際立たせる。相性: ★★★★★

パーラ, ソプラソーレ, ヴェルメンティーノ, イタリア, サルディーニャ, 2021, 13.5%, 2,376円
Pala, Soprasole, Vermentino di Sardegna DOC

1950年創業。1990年に全てのブドウ樹をサルデーニャの地ブドウ品種に植え替え。
このワインには標高150～180mに位置する畑から、樹齢平均35年のブドウを使用。ステンレスタンク発酵。
香りにはフレッシュな青リンゴ、グレープフルーツに微かにライチと白桃、セルフィーユのハーブ香やフラワー香。海岸の潮風や貝殻の香り。フレッシュで軽快ながら個性が凝縮。
味わいには瑞々しくもグリップのある果実味が伸びやか。こぎみよい酸味と塩味、中盤からほろ苦さ。余韻はフレッシュで爽やかながらヴェルメンティーノ品種の娯楽が凝縮。
黒むつ醤油麹焼きに。麹の旨味、クロムツの脂の甘みには爽快な飲み口のワインはケンカしないが、期待するほどの重なり合い、高め合いはないか。相性: ★★★☆☆

クズマーノ, アルタモーラ, エトナ ロッソ, シチリア, イタリア, 2019, 2,464円
Cusumano, Alta Mora, Etna Rosso DOC,

このワインはヨーロッパ最大の活火山であるエトナ山の北斜面の畑で栽培されたブドウから造られる。海と山のミネラルの恵みを感じたい。
香りにはよく熟したプラム、快活なベリー果実香、バラやラベンダーの微かにハーブや潮の香り。微かにスモーキーなニュアンスも。
味わいには完熟、充実の風味ながら抜け方は軽快で上品さすら感じる抑制された果実味。こぎみよいメリハリを与える酸味、ほのかに塩気。タンニンは穏やかで絶妙な抽出の塩梅。クリーンでフォーカスの合ったワイン。
黒むつ醤油麹焼きに。ワインの風味の中のどこか醤油に似た醸造香が麹の味付けに絶妙に調和。が、余韻にふっと魚の磯の香りとワインの果実味が反発してしまう、わずかだが。味付けとの調和が素晴らしいが、魚は別の種類の方がこのワインとは相性が良さそう。それでも十分素晴らしい相性。相性: ★★★★☆

キリ・ヤーニ, カリ・リーザ, P.D.O.アミンデオン, マケドニア, ギリシャ, 2017, 2,860円
Kir-Yianni, Kali Riza, Greece

今回のワインは自根で育つ樹齢60年を超えるクシノマヴロから造られる。
ちなみにクシノマヴロはギリシャ語で「酸と黒」の意味を持つ、ギリシャ固有の品種。
香りにはドライフルーツ、プルーン、ブルーベリージャムの濃縮果実香。ドライローズ。黒胡椒と微かにヴェジェタルなスパイス。よく馴染んだ樽香、鼻が微かに渇く海岸の潮香。
味わいにはカドの取れた滑らかな口当たりの果実味ながら、タンニンはまだまだ力強くじっとりと舌に残る。塩味が強く舌に残るのが印象的。果実味の熟成感、潮のニュアンスに富む魅力的な海の国の赤ワイン。
黒むつ醤油麹焼きに。ワインのやや猛々しい果実味、酸味、タンニンがクロムツの風味の中の繊細な長所をやや圧倒。ワインの力強さに合わせるなら、調理は煮付けの方が合いそうだ。相性: ★★★☆☆