見出し画像

広島かきカレー 垢抜けたトスカーナのヴェルメンティーノとサンジョヴェーゼ

広島産牡蠣がコロコロと入ったカレー。500円少々のこのレトルトカレーを海外滞在中にスーツケースから取り出した。

エビ、イカなどのシーフードはカレーにおなじみだが、磯の香りが強く独特の風味をもつ牡蠣がカレーに入るとどんな味わいになるのか楽しみだ。こちらは広島のレインボー食品の商品で、なんと1997年の発売から25周年ということだ。正直なところ、香辛料の強いカレーに地元の名物を紛れ込ませて名物として売り出すことを思いついたのだろうか、そうであればすぐに廃れるのではなかろうかと疑ってしまったが、しっかり25年間にわたって根強いファンを持つ魅力的な商品のようだ。
さて、牡蠣といえば広島だが、やはり生産量は全国一位で、二位の岡山の6倍でダントツだ。広島が牡蠣生産に向いているのがこの圧倒的な生産量の要因だが、地形、潮流、水温、塩分濃度、プランクトン量などがちょうどよいバランスということだ。
さて、最近の定番のラ・スピネッタの白ワイン(ヴェルメンティーノ品種)と赤ワイン(サンジョヴェーゼ品種)を合わせる。

ラ・スピネッタ, カサノーヴァ, ヴェルメンティーノ, トスカーナ, 2021, 13%, 2,879円
La Spinetta Casanova, Vermentino, Toscana, Italy
香りには軽やかにフレッシュなグレープフルーツの柑橘香、ナッティなニュアンス、潮風の香りもほんのりと。
香りの上品な様子とはまたうって変わって、ずしりとくる酸味、中盤以降ほろ苦さと塩味がしっかり。それでもサルディーニャ島の同じ品種のものより垢抜けた印象だ。

さてかきカレーをひと口、その余韻に白ワインを。カレーはソテーオニオンと牛乳、バター、ココナッツで仕上げたカレーソースで煮込まれていてスパイスの主張はそこそこに、柔らかい甘みやコクを豊かに感じるソースだ。スパイスが適度に抑制されているため牡蠣の主張をしっかりと感じる。牡蠣の強い磯の香りとほのかな苦みが適度なスパイスで立ち上がったところに、白ワインの柑橘香と塩味、酸味がさらに引き立てる。うん、悪くない組み合わせだ。このワインはトスカーナのヴェルメンティーノだが、少し癖の強めのサルディーニャ島のもの、そして樽熟成を効かせたものだとさらに牡蠣の風味とカレーのスパイスに合うだろう。
相性: ★★★☆☆

続いて赤ワイン。
ラ・スピネッタ, イル・ネーロ・ディ・カサノーヴァ, サンジョヴェーゼ, トスカーナ, 2018, 13.5%, 2,991円
La Spinetta, Il Nero Di Casanova, Sangiovese, Toscana, Italy
サンジョヴェーゼ品種で造られるワイン。香りにはラズベリー、よく熟したプラム、明るいチャーミングな果実香、よくなじんだ軽めの樽香、ほのかにカカオのニュアンスも。
風味にはチャーミングさも伴う明るくジューシーな果実味、こぎみよい酸味、舌が微かに乾くようなタンニン。
かきカレーを食べてワインをひと口。牡蠣に赤ワインはアウトだろうなと思いながら、失敗も経験のうちと試したが、意外にも反発しない。ワインの魅力の明るい果実味と舌に残るタンニンはカレーのスパイスやココナッツ、コクに寄り添う。カレーソースとワインの好相性を起点に磯の香りの強くほのかな苦みを感じる牡蠣までもしっかりと包容した。さすがティレニア海沿いのトスカーナ州産のワイン。赤ワインであってもシーフードと喧嘩しない。
相性: ★★★☆☆

牡蠣の風味を最大限活かすようにチューニングされたカレーソースのスパイスや甘み、コクの精度が素晴らしいかきカレーだ。柑橘と塩味・酸味の効いたヴェルメンティーノ品種にはそこそこ合うかと想像していたが期待通り。サンジョヴェーゼ品種に反発しなかったのは楽しい驚きだった。シーフードと肉料理をワイン一本で通すときにも心強いワインだ。

今回スーツケースに詰めてきた6種のカレーたちとのワイン物語も今回がフィナーレだ。様々な素晴らしいシーフードレトルトカレーとの出会い、そしてカレーとワインとの相性の発見があった。特にケララフィッシュカレーとヴェルメンティーノの相性は素晴らしかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?