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36.花散らしの涙

何をそんなに、
しとしとと泣き続けなくとも
あなたはこんなに沢山の人に愛されているのに

ひとり暮らしの私の家には
テレビがないけれど
どんな表情をしても、きっと毎朝
ニュースがあなたの様子を
この世界のみぃんなに伝えている

それくらい世界中があなたを
大切に恋しく思っているのよ、

私にも暮らしがあり、少し
上を向いて歩くことがむつかしい日もあり、
きのうあなたを見上げて歩く時間が
私には一瞬も持てなかったかというと
そうではないのですが、
もしもそれを悲しんでいるのなら
私は本当に悪いことをしてしまったね。
ごめんね

これだけはその大きな心に
そっと覚えていて欲しいのです。
あなたはずっとひとりで
そこに居て下さるのではなく
世界中の人々が愛して見上げながら
たよりに生きているということを。
ただ存在してくれているだけで
たくさんの人を生かしていることを。

あなたのもとまで届きそうなほど
強くやさしく香る秋の金木犀が、
この道を歩く私の足許を
オレンジに染めているのがほんの少し切なくて

でも私が金木犀の木へ傘をさしてやれば
あなたはまた小さくヤキモチをして
花散らしの涙を落とすのかしら


36.花散らしの涙

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