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30.我が子フレンチトースト

どうして男の人って
フレンチトーストに憧れるのか

朝食に食べたいものは何かと聞けば
「フレンチトースト」と答えない男はいない

昔好きだった人に、作って欲しいと言われ
何としてでも美味しいと言わせなければならない。
という、半ば女の矜持で作ったことがある

クックパッドで、
美しいイエローと
香ばしく香ってきそうな焦げ目、
甘いツヤのある。完璧な。
何とフォトジェニックに撮るのか…
というフレンチトーストの写真を添えているレシピを
開いて、形から入る鳥居れなは
ふっくら分厚くて美味しそうなダブルソフト
パッケージがかわいい、よつ葉バター
絶対的信頼のキッコーマン調製豆乳。
黄色によく似合う水色のまあるいお皿と
無印良品のステンレスの
ナイフとフォークを用意して作り出した。

お砂糖の量に悲鳴をあげながら、
彼の寿命を縮めるのではないかと思いつつも
分量通りに作ったそれは、
黄色と水色のコントラストで見た目もバッチリ
飛ぶほどに美味しかった。

何でも形から入ることに
恥ずかしさを感じていたのだが、
上手くいった時にそれが「そのもの」
として、ただそこに生まれることが
気持ちがいい。と気付いてしまった。

一つ間違えれば自己満足になるのだが、
でもそれでも、誰かが喜んでくれた時に
物事を生み出すことに順序を気にする必要など
無いのではと思ってしまった。

子どもがどうやって大人になるのかといえば
先を行く者の〝マネ〟をして育つのだ。

先生を自分の目や耳や手で見つけて
確かめて、そうして
良い!と思ったものを取りそろえて
新たに創造されたモノは素晴らしく輝いている!

どこか愛着だってある。
私はあの時、彼が口に運んでいく
甘いフレンチトーストにだって、
愛おしさを抱いていた。
だんだんと、水色のお皿から無くなっていく
フレンチトーストが切なかった。

あの瞬間だけは、好きな人よりも。
自分の手で作り出した、
我が子フレンチトーストの方が好きだったかも。

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