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『Westmead公立病院入院回顧録 ②』

術後3週目。

福岡県人会からお見舞いのお花をいただいた。

何にもない部屋がなんだか明るくなった。

部屋中に花の香りが満ちている。

お気遣いくださってありがとうございます。

さて、病院というある種特殊な空間にしばらく入院をしていると、普段の生活とのちょっとした違いに気が付く。とかいうと大袈裟すぎるけども。

その一つがやたらと、いやもうしつこいくらいに他人(とくに女の人)から便通のことをきかれることだ。女の人が多いというのは単にナースが女の人だからなのだが、日に何度も、挨拶みたいに便通のことを聞かれる。患者の腸の状態がそれだけ重要なのだろう。

中にはすごく申し訳なさそうに、デリカシーにかけることは分かってるんだけどこれも仕事だから質問させてもらいますね…的な人もいるし、中にはあっけらかんが過ぎ過ぎるほど、こんな話そんなボリュームの声でする?みたいな人もいる。

ぴーやらぷーやらという言葉のときもあるし、ナンバー1,ナンバー2という場合もあった。

ある日の担当の看護婦さんはやたらと若い白人女性で質問ボードにチェックしながら俺に色々訪ねてくるのだが、途中俺がわからない単語に出くわした。別の言葉で説明してくれるよう頼み、彼女もそれに答えようとしてくれるのだがどうにも埒が明かない。言い換えればいいかえるほど意味不明になっていく。仕方がないからスマホに単語を打ち込むように頼んで判明したその単語は「尿 / urine」だった。

彼女の口からぴーやらぷーやら、ナンバー1,ナンバー2という言葉は全く出てこなかった。もしかすると質問ボードに書いてある教科書通りの言葉しか浮かばなかったのかもしれず、彼女にしてみればまさかそんな言葉すら分からない人類が地球上に存在するとは夢にも思わなかったのかもしれない。また「尿」という記述的で無機質な表現以外を口にすることに恥じらいを感じたのかもしれない。それは俺にはわからない。

とにかく彼女ももちろん俺も、目の前の問題を解決しようととても一生懸命にその困難に立ち向かってはいたのである。ではあるがだ。ではあるのだが、見方によっては、若い女性に変な言葉を言わせようと意地悪している変態オヤジのようにも見えはしないか?

随分後になってそう思い、いやいやいやいや、ないないないない、と、誰に言い訳するわけでもなく、ここにちょっと書いておくことにした次第である。

ものを知らぬということは、変な誤解を生む場合があるので、みなさまどうぞお気を付けください。

『Westmead公立病院入院回顧録 ②』

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