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会社の値段

ろくすけさんのブログです。

この記事を見て、読んでみました。

ドラマ・映画「ハゲタカ」の監修をされ、名著『MBAバリュエーション』『バリュエーションの教科書』の著者としても知られるM&Aのプロ、森生さんの15年前の本です。

ろくすけさんの記事の最初にこう紹介されています。

MBAバリュエーション!

https://www.amazon.co.jp/dp/4822242463/

この本は読みました。「良い本!」(中身はもう思い出せない笑)という記憶は鮮明に残っていて、勤務先の後輩に貸した後、そのままになった一冊です。

#ハゲタカ  懐かしいですね。大森南朋さん、柴田恭兵さん、印象的でした。映画も観に行きました。そうそう、松田龍平さんの存在感が強烈でスゴかった。

で、この #会社の値段  は15年前に出版された本です。

本の「第六章 ニュースで読み解く投資家の視点」では、当時、大きな話題になったお話の数々が「会社の値段」を切り口にして解説されています。そんなこともあったね、と感じつつも、あれから15年経ったけどあんまり変わっていないな、とも。

「第五章 企業価値算定ーー実践編」では、日立、東芝、松下、ソニーの当時の財務、業績、株式市場のつけた「会社の値段」を基に、解説されています。この4社のチョイスが15年前ですね。「会社の値段」をどう測るか、分析するか、という枠組がこの章で学ぶことができます。

この本の魅力は、こうした実践的な内容はもちろんのことですが、著者の森生さんのメッセージにあります。

会社に値段をつけることは世の中に眠っている富、資金を活発に動き回らせて新たな事業、産業を生み出す原動力とするための基本コンセプトです。会社の株式を売り買いする制度を安心でフェアな形に設計することによって、多くの投資家と起業家が集まる活発な株式市場、証券市場が生まれます。

森生明. 会社の値段 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.321-324). Kindle 版.

より多くの国民が、より真剣に株式投資に取り組むことによって、市場は厚みが増します。そうなると、マネーゲーム的投機家がアブク銭を儲ける機会は減り、実態を伴わない数字づら合わせやウケ狙いをして株価を釣り上げようとする経営者を淘汰してゆくことも可能になってきます。

森生明. 会社の値段 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.934-936). Kindle 版.

株式会社という仕組み、公開株式市場という制度は、世の中に活力をもたらすための大切な枠組みだ

森生明. 会社の値段 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.354-355). Kindle 版.

株式会社、株式市場の重要性が何度となく強調されています。

経営者、そして、投資家についての考えも印象的でした。

企業価値創造の担い手は経営者であり、その経営者の評価は株主や投資家が行う。

森生明. 会社の値段 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.926). Kindle 版.

リスクを背負い、厳しい決断をひとつひとつ下して、結果責任を取る。この役割を担っている組織のトップが企業価値の創造者だ、という事実は厳粛に受け止める必要があります。

森生明. 会社の値段 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.902-903). Kindle 版.

ろくすけさんの以前のブログが思い起こされます。

経営者は「価値」をつくり、
投資家は「価格」をつける。

まさにこれですね。

独自技術や経営戦略、経営者のビジョンに共感し応援する気持ちで会社の株式を買い、そのとおり会社がブレイクし成長する姿を目にし、その会社の成功に自分も参画した気分になり実際に投資利益を得る、これに勝る快感はありません。そういう投資の積み重ねが日本の経営者を淘汰し、志と実行力のある経営者が日本の経済・社会をよりよい方向に変革してゆくのです。

森生明. 会社の値段 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1578-1581). Kindle 版.

価値を生み出した人が相応に金持ちになり、その人がそのカネを次にどう使ってより豊かな社会をつくるかを考える。これが資本主義を正しく機能させ、世の中をフェアで元気にするための大前提です。

森生明. 会社の値段 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1977-1979). Kindle 版.

賢く正しい判断のできる投資家がたくさんいて、その投資家が安心して参加できる透明でフェアな市場がある、そういう国づくりを日本は目指すべきではないかと思います。いい投資家層のいないところにいい経営者、いい会社は育ちません。

森生明. 会社の値段 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2631-2633). Kindle 版.


いい投資家層のいないところにいい経営者、いい会社は育ちません。


「会社の値段」というタイトルからすれば、いい投資家とは、会社の値段をしっかりと測って投資判断をする投資家ということになるんだと思います。

M&Aについて書かれていました。

いいM&Aを行うためには当初の企画、つまりなぜその会社を買収したいのかの理由がはっきり説明でき、それが自分の会社の株主にとって利益になることをできるだけ具体的に数字にして示せること、が肝心です。

森生明. 会社の値段 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2013-2015). Kindle 版.

これは、M&Aに限らず、株式投資にも当てはまると思います。なぜその会社に投資したいのかの理由がハッキリしていて、それが適切な価格、値段で買うことができる、これが肝心だ、ってことです。

非常に素晴らしい読書体験となりました。この本に導いてくださった ろくすけさんに深く感謝です。


ところで、です。15年前といえば、僕自身、既に投資信託へのコツコツ投資を始めていました。キャリアは2年超。当時、この本と出会えていたとしたら、上に書いたような感想を果たして持てたでしょうか。もう少し、いや、全く違った感想を持っていた。あるいは「腹落ち」度が全然弱かった。そんなことを思いました。投資を続けてきたキャリアが今の感想につながっているのだろう、って。

その一方で、15年前にこのレベルの「腹落ち」度が得られていたら、その後の投資への取り組み方が全く違ったのではないか、そんなことも思いました。

何が言いたいか、というと、ですね。

投資を始めて間もない時期って、具体的に何すりゃ良いの、そういう「答え」を求めがちですし、それはそれで仕方ないとも思うのです。ただ、その「答え」を選ぶ理由、拠って立つ前提への納得、理解が無いままに長く続けることは難しいのではないか、と思うんです。そこで大事なことは「自分で考える」ってことだと思います。

本の「おわりにーー投資家が形作る国と社会」に、森生さんはこう書かれています。

「自分の資産をどう運用するか、どう投資すべきかをもっと真面目に考えなければ、日本という国そのものがおかしくなる」という意識を持ち始めています。

森生明. 会社の値段 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2654-2655). Kindle 版.

15年経った今でも、これは変わっていないように思われます。

いい投資家層のいないところにいい経営者、いい会社は育ちません。

僕自身は、「会社の値段」をつけるという非常に大事なプロセスを、信頼しているファンドマネジャー、投資信託に委ねています。ですから、これからもしっかりとお金を託しているファンドマネジャー、投資信託のことを見つめていきたいし、それを通じて、いい会社、いい経営者と共に歩いていきたいと考えています。

ろくすけさんの3年前の記事にこう評されていました。

「泣けるファイナンス本」

確かに、そう感じました。

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