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『音楽』

川辺に楽隊のチューニングの音
銀のラッパに朱が射してゆく
音楽、その音楽 俺を繋いで
『音楽』作詞:渡會将士

 はい、こんにちは☀️
今日は音楽レビューです。タイトル通り、読んで字の如くですね。

 今回ご紹介する楽曲は、日本のロックバンド”FoZZtone”の2ndアルバム『The Sound of Music』より『音楽』です!!

 みなさん、”FoZZtone”はご存知ですか? 邦楽バンド界隈にハマったことのある方なら知ってるとは思いますが、多くの方は初めて聞いた名前でしょう。このバンドは典型的な、実力と知名度が釣り合っていないバンドだと思います。

 このバンドは、超多作なギターボーカル渡會将士とギターヒーロー竹尾典明、そしてクセの強い2人の潤滑材となる影の実力者、キャノンの愛称で知られるベーシスト菅野信昭からなる3人組です。

 文学的な歌詞だったりヒロイックなギターだったり彼らの魅力はたくさん挙げられますが、彼らの一番ヤバいところはリリースペースの異様な速さと濃さだと思います。2007年のメジャーデビューから2015年の活動休止までの間、彼らは生き急ぐかのようにクオリティの高い楽曲を出し続けます。具体的には、2011年にインディーズレーベルに移籍してからの作品の質と量がとんでもないのです。メジャーレーベルという枷が外れた彼らの3rdアルバム『NEW WORLD』以降はマジのガチで覚醒しています。

 また、フルアルバムをリリースする合間に、"配信ライブで披露した新曲10曲の中から、ファンそれぞれが8曲を選択して発注できるオーダーメイドアルバム"という企画もやっていました。彼ら、特にメインで作詞作曲を手掛けている渡會氏は"選曲"という行為へのこだわり、というかが強く、聴き手それぞれが曲順を選べること、そして2曲捨てなくてはいけないことがミソの企画だと語っていました。

 ところで先ほど、メジャーレーベルのことをと表現してしまいましたが、彼らの作品は決してマニアックすぎるものではなく、幅広い人々の心をつかむ作風です。この世にマルチバースが存在するのなら、彼らの音楽が日本のフェスやオリコンを沸かせている世界線もあるんじゃないか・・・・・・なんてムチャな妄想を広げたくなるくらい、万人の心に刺さり得る楽曲を生み出していました。


 さて、色々語ってみましたが今回紹介するのは2ndアルバム『The Sound of Music』のリードトラックです。今作は、彼らがメジャーレーベルでリリースした最後の作品となります。(厳密にはベスト盤があるんですが今回はノーカン) このアルバムはどストレートなタイトルからわかる通り完全な直球勝負です。手っ取り早く、公式の宣伝文句を引用してみましょう。

亀田誠治氏をプロデューサーとして迎え、良き時代のクラシック・ロック的なアプローチを行なったFoZZtoneの2作目。「音楽」「死んだというのは聞かないが」「ホールケーキ」など楽曲によってアコギとエレキを使い分け、熱さと心地良さが同居したアルバムに仕上がっている。
CDジャーナル データベースより

 というわけで、彼らのルーツとなった洋楽クラッシックロックを最大にリスペクトした作風となっています。当時の公式ブログで明言されているのは"The Beatles"や"NIRVANA"、"The Rolling Stones"ですね。ニルヴァーナに関しては、『NIRVANA UNIVERSE』なんて曲があるくらいです。時代は前後しますが、どれも英米の代表的なロックバンドです。そんな良き時代のサウンドに、渡會氏心情や情景が、まるで小説を読んでいるかのように浮かんでくる詞と歌声(冒頭で引用した歌詞とか美しくないですか?)、竹尾氏の”わかりやすく”華やかでかっこいいギターソロという日本的な要素が絡んで独特の味わいになっています。

 ただ、彼らがさらなる独自性、すなわち唯一無二の音楽を作り出すのは3rdアルバムからだと思っています。今回のアルバム『The Sound of Music』は、デビューしたての彼らが抱えてきた初期衝動が爆発したアルバム、いわば覚醒前夜といった立ち位置になるでしょう。今回紹介する楽曲の『音楽』もアルバム冒頭のインスト曲『pæˈndemɪk』からシームレスに繋がる疾走感の強い曲です。

 詞が素晴らしいですね。朝がシチュエーションの歌詞ですが"希望の朝だ!おはよう🤗"的な根明さはありません。望まなくても来てしまった朝に、憂鬱な気分で動き出した主人公に音楽が命を吹き込む短編小説のような物語です。MVがなんかちょっとアレなのは活動初期でまだ手探りだからなんですかね💧

あぁ 君に聴かせたいよ
俺の選曲を 素晴らしいから
心のない音 ひとつも無いから
『音楽』作詞:渡會将士

 ここもエモいです。作詞した渡會氏本人もブログ内でこの節について解説しています。

 余談ですが、この曲の歌詞にある「俺の選曲は素晴らしいから」という言葉に、あぁこの歌詞にして良かったなぁと日々感じています。

まだ自分が何者でもなかった頃、ギター等の楽器を弾いて歌う事はあまりにも遠い世界の様だったし、作詞や作曲に対してもフワフワとしたイメージしかなく、ましてやバンドを組むことすら考えていなかった時、

自分が作り出す事が出来る音楽は唯一、「選曲」しかなかった。
FoZZtone公式ブログ より 
https://fozztone.exblog.jp/11544608/

 たしかに、選曲は何者でもない、何も生み出さない立場であるリスナー(プレイヤーやクリエイターの人もたくさんいるけどね)にとっても主体的に音楽と触れ合える行為ですね。ハッとすると同時に、誰もが持ちうる、この淡い淡いある意味小さな喜びを歌という形に出力できるセンスに感動します。



 また、こちらの曲もぜひ聴いてみてください、『音楽』の次曲である、匿名をテーマにしたロックバラード『NAME』は白眉の出来です。ダウナーな冒頭からゾクゾクと心に刻まれるギター、そして壮大で感動的なサビへの展開は涙なしには聴けません。絶対に聴いてください。聴いた後で歌詞もチェックしてみてください。

 そもそも最初はこっちを紹介しようと思ってましたが、私のチンケなnote初聴の感動を奪ってしまうのもアレなのでやめました。それゆえに、ネタバレで魅力が薄れづらくFoZZtoneらしさの強い『音楽』を紹介することにしたのです。

 こっちのMVはドラマチックでなかなか良いですね。この頃の渡會さんはめちゃくちゃ美男子で惚れ惚れします。

 というわけで"FoZZtone"の『音楽』でした。興が乗って『NAME』も紹介しちゃいましたね。どちらも多彩な魅力を持つバンドの初期衝動を詰め込んだ作品でした。以降の楽曲たちは、さらに進化しておりこれまた素晴らしいのでこれからも絶対にご紹介すると思います。また機会があればよろしくお願いします。


おしまい

サブスクに多分あるけどCDだとボーナストラック『のぞみ』が聴けるよー 繊細なバラードでこれまた良いんだ

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