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予算不足で増税なら誰でもできる。

代表なくして課税なし。

 昨今の少子化対策の財源がないことを理由に、子供を持つかを判断する現役世代のみ負担する、社会保険料の引き上げが裏庭の焚き火レベルで燃えたのは記憶に新しいが、そこから消費税14%やら何やらと二転三転して、あらゆる増税を示唆するようになった。

 そもそも東京五輪は財源ありきだっただろうか?防衛費に関しても、増えるからどこで帳尻を合わせるかと、今回の少子化対策のように財源がないことを理由に、増額を渋ったり増税する類の話ではなかったように思う。

 役人に何が何でもやり通す覚悟さえあれば、財源がなくてもどうにでもなるが、その気がないから財源を引き合いに出して、増税するなら別にやらなくても〜的な世論誘導をしたいだけのように映ってしまう。

 日本は高福祉国家の欧州と比べて、そこまで税率が高くないのだから、高福祉国家を望むなら国民の負担が必要。一見すると尤もな意見に聞こえなくもないが、「社会保険料」という名の、強制的に天引きされる事実上の税金だが、世界の税率を比較する際に、これは含まれない。

 しかも、天引きされる額と同額を雇用主が負担している。例えば月給が20万円の人なら、4万円程度が税金と社会保険料で天引きされ、手取り額は16万円前後となる。

 この天引きされる4万円のうち、1万円が社会保険料だと仮定すると、天引きの枠組みとは別で、雇用主が1万円を負担しているため、本来、この社会保険料がなければ、同じ人件費でも月給が21万円になる筈なのである。

 企業の会計上、人件費として処理されている、雇用主負担分の社会保険料は「本来給与となる筈のお金」として捉えると、2022年度の国民負担率が47.5%だと財務省が発表している。

 計算方法を見る限りでは、実態よりも数字を大きく見せるような処理がされており、平均年収で雇用主負担分を含めない試算でのせいぜい2割から大きく乖離しているため、「給与の半分が税金と社会保険料」の言い回しには否定的である。

 とはいえ、現役世代の負担が過大な割に、それに見合う社会保障になっていない指摘は概ね正しい。多数決で国会の代表者を決めた結果が、昨今のシルバーデモクラシーであり衆愚政治でもある。

 「代表なくして課税なし」はアメリカ独立戦争のスローガンだが、若者に冷酷な日本社会において、衆議院は満25歳、参議院に至っては満30歳と、結婚、育児に最も関心を持つ時期を過ぎなければ、代表者を国会に送り込めない年齢制限を設ける以上、少なくとも被選挙権が得られるまで課税すべきではないと思うのは私だけだろうか。

民にあって官にないコスト意識。

 年代別の金融資産保有額を調べると、定年を迎えて退職金でウハウハな60代が最もお金を持っていて、その次が70代となる。流石に最後が近づく80代になるとピーク時の60代から半減するものの、それでも40代より多いのは、どの資料を見ても傾向としてある。

 条件が重なると50代でも該当するが、2023年時点の40代のマジョリティは、言わずもがな就職氷河期世代である。つまり、現役を引退した高齢者の方が、ロスジェネ以降の現役世代よりも、平均的には金持ちで、若者〜中年は相対的に貧乏である傾向は間違いない。

 貧乏な若者から税金を搾り取り、お金持ちな高齢者に給付する。これが日本社会の実態である。

 その背景に、日本経済の長期停滞から、就職難となり、学歴至上主義が蔓延った結果、本来大学に行く必要のない人たちが、学位欲しさに教育ローンを組んででも進学する事態となり、2人に1人は大学に進学する時代。

 そして進学した2人に1人が、平均288万円の借金を背負って社会に出て、1〜3割程度は返済が滞っているなんて統計もある。大卒で社会に出たところで、労働集約型だと初任給が安く、税金や社会保険料の負担は重いため、大卒だから食える時代ではない。

 大卒で食えないなら、進学しなかった非大卒はもっと食えない。結果として1/2を占める非大卒と、大卒の1/2、全体でみれば若者の3/4は、生きるだけで手一杯な生活がしばらく続く。

 家計を切り詰めて精一杯やりくりしているにも関わらず、声だけやたらにデカくて、バブルの幻想から未だに目が覚めていないおっさんや、若者の実態から目を背け続けて、問題を先送りして逃げ切ることしか考えていない政治家が、若いのに稼げないのは自己責任論を振りかざす体たらく。

 低賃金と重税により、生活保護受給者と大差ない手取りから、貸与型奨学金を返済し、雀の涙ほどの可処分所得で、切り詰めて生活せざるを得ず、金融資産保有額の中央値が8万円。

 これは大して働きもせず、堕ちるべくして堕ちて、貯蓄できていない人の異常値ではなく、2人に1人が10万円も貯蓄できていない、20代の現実である。

 運悪く大きな病気でもすれば、高額療養費制度があるとはいえ、退院費用の支払いに窮するだけでなく、働けない間の減給により、瞬く間に家計は破綻。

キャッシングやリボルビングに頼らざるを得ず、複利を敵に回してゲームオーバーな状態に、誰もが陥る可能性がある構造上、政治によって若者が貧しくなったのは紛れもない事実である。

 ノブレス・オブリージュを忘れ、利権や私利私欲に塗れた結果、公費が無駄に膨らんだ高コスト体質を是正すれば、兵庫県明石市で泉房穂さんが舵を切ったように、市民から追加の負担を強いることなく、子育て支援の予算を倍増できている。

 民間企業や一般消費者が当たり前に行っている、家計のやりくり程度の知恵が絞れれば、これ以上の負担を強いることなく、少子化対策の予算を増やせる筈である。予算が足りないからと、安直に増税しようとする役人は、血税を預かる資格があるだろうか?


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