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個別株を運用する意義。

アクティブ運用はコスパ悪し。

 2019年から2021年は、疫病による一時的な暴落こそ発生したものの、米国株式は好調で、特にノーロードかつ運用手数料が0.1%前後の優良なインデックスファンドに投資していた方は、年率20%に肉薄する、バフェット並のパフォーマンスを誰もが叩き出せるようなボーナスタイムであった。

 そんなここ数年の状況から、インデックッスファンドが持て囃されるようになって久しい。確かに、アクティブ運用とインデックス運用で、15年超の長期リターンを比較すると、9割のアクティブファンドは、インデックスファンドにパフォーマンスで劣るという不都合な現実が存在する。

 市場平均を上回ることを目的として、アクティブに運用しているのに、市場平均と同じ動きとすることを目的とするインデックス運用に勝てないのは、何とも本末転倒な感じがする。

 これは、アクティブファンドの運用手数料の高さにある。市場平均の構成銘柄をまるっと買うインデックス運用の場合は、構成銘柄のレシピが出来上がっている訳で、指標の銘柄が組み替えられる都度、同じように組み替えていけば良いことから、コンピューター任せに買付できるため、アクティブ比でコストは殆ど掛からない。

 反対にアクティブ運用では、市場平均を上回るために、経済や金融に強い高学歴人材を高い賃金で雇い、独自に銘柄分析を行ったり、企業訪問を行うことで3800社超の数ある銘柄の中から、将来有望そうなものを人力でピックアップして、世界情勢に応じてレシピを都度作り変えているイメージである。

 既にレシピが決まっていて、それを機械的に買い付けるだけのインデックス運用より、手間もコストも掛かるのは容易に想像がつくだろう。実際にアクティブファンドの運用手数料は安くても1%程度が相場と、インデックスファンドとは10倍以上の差が開いている。

 仮にインデックス運用とアクティブ運用で、運用手数料が1%違う場合、アクティブ運用はインデックスよりも1%以上高いリターンを叩き出せなければ、インデックス運用に負けることになる。

 それに運用利回りを1%上げることの大変さは、個別株投資を行っている方には痛いほど分かるだろう。パフォーマンスは不確定だが、コストは確実に徴収される。ある種、マイナス1%の複利というハンデを負って長期に渡って高いパフォーマンスを叩き出さなければ、市場平均以上の成果が出せないコスパの悪さがアクティブ運用の宿命なのだ。

 偶然にも1年間だけヤマが当たって高いパフォーマンスを叩き出せても、それを毎年当て続けることができるのはウォーレン・バフェット位なものである。だから、猫も杓子もインデックス運用なのが現状である。

インデックス投資でセンスは磨けない。

 しかし、インデックス運用にも欠点はある。それは指標となる構成銘柄が変更される度、運用会社は銘柄の組み換えに付き合わされる点だ。それぞれの運用会社が一斉に指標から外される銘柄を売り、組み込まれる銘柄を買うのだから、売却、取得価格共に相場よりも不利な価格となる。

 実際に、構成銘柄変更時に、運用会社と逆の動きをして利益を得ている個人や機関投資家が存在していて、株式市場と言えど短期ではゼロサムゲームである以上、インデックスファンドの運用会社が損をしているのは明白である。

 その時の損失は、運用手数料としてファンド購入者が間接的に負担しているのである。それでもガチャガチャ動かすアクティブ運用よりは低コストであるが、もし仮に、昨今の疫病や戦争のような、今までの価値観の根底が覆されるような事態が高頻度で発生した場合、企業の寿命はどんどん短くなると予想され、そうなれば、今まで以上に構成銘柄の組み替えに付き合わされる羽目になり、運用手数料は増大する可能性も考えられる。

 運用会社が勝手に組み替えてくれるから保有したら何もする必要がない手軽さが、インデックス運用の魅力でもあるが、それ故に知らないところで隠れたコストを負担させられている可能性は知っておいたほうが良い。

 極論を言うならば、もし世界情勢が今後更に不安定化する未来を信じるのであれば、ネット証券を駆使して自分で運用した方が安上がりな時代が到来するかも知れない。インデックスファンドを保有しているだけの場合、この手の知識は、相当勉強熱心な方でもない限り身に着けるきっかけがなく、投資するセンスが磨かれないのが隠れた欠点だと私は考えている。

 指標に連動するインデックスファンドの場合、例えばTOPIXなら225社、S&P 500なら500社前後の時価総額をミックスしているため、仮にそのうちの1社が暴騰し、反対に1社が暴落したところでパフォーマンスは平準化されてしまう。

 しかし、個別で運用していれば、指標と同じ様な動きをする銘柄、指標よりパフォーマンスの高い銘柄、低い銘柄とそれぞれが可視化されるため、なぜ市場平均は上がっているのに、この会社の株価は下がっているのか?なぜ市場平均は冷え込んでいるのに、この会社の株価は上がっているのか?などの興味を抱き、個人の性格にもよるが納得がいくまで調べて、分からない経済用語が出てくれば、自分の頭で理解できるように噛み砕くなど、自然と学びが発生するのである。

 これは個別で運用しなければ発生しない取っ掛かりで、インデックス運用で気絶しているだけでは興味を持つのが難しい。確かに個別株で運用するとパフォーマンスはインデックスに劣るかも知れない。

 しかし、投資のセンスや価値観、自分軸(運用方針)の確立、学び続ける姿勢など、インデックス運用だけで得るのが難しく、なおかつ一朝一夕では築けない、知識や経験と言う誰にも奪われない財産を築くことができるのが、個別で運用する醍醐味ではないだろうか。

 バビロンの大富豪の第四話では、大富豪であるアルカドが、息子ノマシアに一袋の金貨と、黄金法則が刻まれた粘土板を持たせて、10年間の旅に出させ、財産を相続する資格があるかを試した物語でも、知識の重要さが記されている。

 インデックス運用は、運用会社が適切に運用してくれるため、誰でも長期、分散、積立投資を守ることで、プロが運用するよりも高い実利が得られるのは事実である。

 しかし、増やしたお金を上手に扱うセンスは、自分の手でトライアンドエラーを繰り返して、経験や知識を身に付けなければ、磨くのが難しい。お金に困らない人生を送ることが目的であれば、知識と資産を両輪で成長させるポテンシャルを秘めている個別株で運用するのもひとつの選択肢ではないだろうか。


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