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少し先の未来を想像して生きる。

想定出来ていた、学び直しの動き。

 政府がここ最近になって、リカレント教育やリスキリングを推進して、ICT化で余剰になる人材を、成長産業に移転させようと画策している最中である。疫病禍で私は自発的に学び直しており、結果として3年近く先取りしていたことになるが、これは偶然ではない。

 2020年2月に疫病騒ぎとなった際、メディアでは季節性のもので夏には終息する論も出ていた。しかし、温暖な気候の地域でも騒ぎとなっており、ワクチンなどの即効性の高い有効手段が発見される兆しも感じられなかったことから、根拠のない楽観だと思い鵜呑みにはしなかった。

 そうして、ネットで類似の事例を検索して、どうやらスペイン風邪よりも香港風邪に酷似してそうだと判断し、最低2年間は他人との接触を避ける社会が続くと結論づけ、向こう数年の生活環境は外出自粛の方向で、趣味の旅行は憚られるだろうと、将来を悲観的に見積もった。

 その際、在宅で出来るものの中で、成し遂げるのに数年掛かるが、やり切ったら今後の人生においてプラスに作用するものは何かと考えた際、最終学歴を非大卒から大卒に塗り換える術が思い浮かんだ。

 2020年当時は、疫病がどうとか、五輪がどうなるとか、そんなものばかりで、学び直しを勧めるマスメディアなど皆無であったと記憶しているが、他人との接触を避ける社会になれば、これまで培ってきたデジタル技術を実用化する格好の機会である。

 工業化社会への転換期に、既存の産業は代替されて割を食い、時間と共に淘汰されて来たのは歴史が証明している。そうなると、衰退産業に勤める当事者としては、成長産業に鞍替えした方が、経済的には期待値が高いと考えるのは必然である。

 ICT化やグローバル化、長寿化などの様々な要因が重なる現代において、雇用もメンバーシップ型からジョブ型に移行しそうな雰囲気からも、社会の構造として、雇用の流動性が高まる方向に進む大枠は変わらないだろう。地震と同じでいつ到来するのか、はっきりとした時期は分からないが、いつかは来るだろうと想定しているものの、思いのほか早期に到来しそうである。

知らないものを人は想像できない。

 そして、これまで衰退産業に従事していた者が、何の教育もなしに畑違いの成長産業で、第一線で活躍するのは非現実的だから、遅かれ早かれ学び直しや再教育が必要になってくる未来が容易に想像できた。

 どうせやるなら人生で一番若い今、吸収力がまだ衰えていないうちにやってしまおうと、大学を決める前から迷いなく、母校に卒業証明書の発行を依頼し、数日後には受け取りに行って、大学に願書を提出するに至った。

 何が正解かなんて、後で振り返ってみないと分からないが、大学での学び直しに関しては、我ながら上出来だと思っている。というのも、周囲が旅行支援政策に翻弄される中、淡々と単位を修得して、既に短期大学士を取得。現在も学士取得に励んでいるが、その間にも私が属する鉄道業界は衰退の一途を辿っている。

 有名企業がインフレ手当で月に数万円支給などの話題が出る中、ボーナスはカット。相変わらず人員は不足している。ホームドア導入でワンマン化して、駅員や車掌を削減することを織り込んで不足させている事業者もあれば、残業代を減らす目的で中間管理職まで、現場で平社員と同じ業務にあたるパワープレイを行う事業者も少なくない。

 後者の場合、削減出来たであろう固定費の額面以上に、管理業務が滞っている感は否めず、効率化するために分業制を採用している筈なのに、経費削減の一環で管理職を兼業させては本末転倒で、余計に衰退産業の末路感が漂っている。

 とはいえ、乗船しているのが沈没船だと分かり、危機感を感じた時に、初めて救命ボートを準備する様では遅い。みんなパニック状態となっているため、思うように行動できず、結果としてほぼ全員が沈んでしまうだろう。

 特に私のように高卒で社会に出て、これまで単純作業にしか従事していない周辺的正社員では、年齢だけ重ねて何のスキルも持ち合わせていない上に、学歴が非大卒のため、準備に時間が掛かる。万全の体制を整えようと思うと、数年単位の時間は必要かも知れないからこそ、現在進行形で行動に移すしかないため、必要時間の感覚はまだ掴みきれていない。

 掴みきれていないからこそ、凶兆を感じた時点で即座に準備して、危機感を感じた時には救命ボートに乗って脱出する用意がなければならないが、救命ボートも荒波だとのまれる可能性があるため、できることなら別の船に乗り移りたい。その別の船を見つけるために、幅広い知識や経験が必要なのである。人は知らないものを具体的に想像することはできない。

株価は近い将来を織り込んで動く。

 これは株式投資にも通じる部分がある。最近の話題に事欠かない消費者物価指数も、先行指数のひとつに東証株価指数がある。これは株価が受給バランスによって形成され、この受給は市場参加者の期待を織り込む形で変動することから、株価は半年から1年程度先の経済状況を表す指標として採用されている。

 今公表されている業績は悪くなくても、将来悪化することが目に見えていれば、誰もその銘柄を欲しがらないため、売り圧力が強く、割安なまま放置されがちになる。所謂バリュートラップで、投資初心者が高配当だからと飛びついて火傷をするのは、みんな通る道だろう。

 グロース株は反対で、今公表されている業績は冴えなくても、将来成長することが期待できれば、みんながその銘柄を欲しがるため、買いが集まり、割高でも株価が上昇基調になるが、行き過ぎるとババ抜き同然のバブル状態となり、どこかで幻想が弾けて急落する。渦中に居るといつかは終わる狂乱が、いつまでも続くと錯覚してしまうのだから不思議である。

 経済指標は定量データであり、数字以上でも以下でもないが、その数字の裏側に潜む、定性的な情報を、おぼろげにでも汲み取れる様になると、少し先の未来が、ざっくりどんな方向に進むのかが、少しずつ分かるようになれるのだろう。

 恐らくその成れの果てが、堺屋太一さんの様な、恐ろしいまでに未来の日本社会を的中させた近未来小説の様な、解像度の高い未来予測が出来る領域なのだろう。私はそれに近づきたいから、複雑怪奇で分からない経済社会を、分からないなりに理解しようと、株式投資をしているのかも知れない。


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